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明暗くっきり。失速ユニクロと好調しまむらに見る業界のジレンマ
http://www.mag2.com/p/news/231133
2016.12.13 まぐまぐニュース
業績が伸び悩む「ユニクロ」に対して絶好調の「しまむら」。その勢いの差は決算書を見ても一目瞭然です。しかし、無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは、しまむらも今後ユニクロと同じ轍を踏む可能性があると指摘、そこには「アパレル産業の課題」が横たわっているとしています。
■ユニクロの失速としまむらの快進撃から見えること
こんにちは、佐藤昌司です。ファーストリテイリングの2016年8月期決算は衝撃的なものとなりました。売上高は前年同期比6.2%増の1兆7,864億円と増収になったものの、当期利益は56.3%減の480億円と大幅な減益となりました。国内ユニクロ事業が足を引っ張った形で、売上高は2.5%増の7,998億円でしたが、本業のもうけを示す営業利益は12.6%減となる1,024億円と減益になったことが大きく影響しました。
国内ユニクロ事業の不振は、14年の秋冬商品を平均5%値上げし、15年の秋冬商品も平均10%値上げしたことで客足が遠のいたことが主な原因です。価格が割高となったことに消費者が拒否反応を示しました。
ユニクロの価値は「高品質で低価格」にあります。「高品質」と「低価格」の2つの価値のうちの1つである「低価格」の価値がなくなってしまえば、ユニクロの価値の半分がなくなってしまうも同然です。消費者が拒否反応を示すのも無理はありません。
値上げにより「低価格」に疑問符がついた形です。消費者の離反を招きました。加えて、「高品質」の点においても万全ではない状況です。かつては、94年発売の「フリース」、03年発売の「ヒートテック」、09年発売の「ウルトラライトダウン」といった商品が高機能を武器に大ヒットしました。しかし、それら以降はヒット商品に恵まれていない状況が続いています。
これは、アパレル製品における「高品質」の限界を露呈しているように思えます。アパレル製品における品質を構成する要素は限られています。「温かい」「涼しい」「軽い」「小さい」「薄い」「丈夫」といったところでしょうか。例えば、精密機器製品などの分野であれば、テクノロジーの進化により全く新しい機能を生み出すことで高品質を実現することができます。しかし、アパレル製品ではそれが難しいと言えるでしょう。
アパレル製品において、「高品質」で差別化を図ることが難しくなっています。しかし、アパレル製品における差別化のポイントは「高品質」だけではありません。言うまでもなく「ファッション性」にあります。
そのことを示しているのが、ファストリが展開する「GU(ジーユー)」の快進撃です。国内のGUの業績は好調で、16年8月期決算の売上高は32.7%増の1,878億円、営業利益は34.8%増の222億円と大幅な増収増益です。06年10月に1号店が誕生し、10年が経過しました。年間40〜50店舗の出店を継続するとし、16年9月末時点で341店舗を出店しています。今後の成長目標として「売上1兆円企業になる」と宣言しています。
GUはトレンドファッションを志向しています。ブランドメッセージとして「ファッションを、もっと自由に。」を掲げていることからも、ファッション性を重視しているのがわかります。当初は「ユニクロの廉価版」と揶揄されていましたが、11年にファッション性重視に舵を切ったことが功を奏し、売り上げは上昇していきました。
とはいえ、GUのファッション性はまだまだ不十分です。ユニクロとの違いを明確に理解できている消費者は多いとはいえません。「ユニクロの廉価版」というイメージを払拭できているとは言い難く、改善の余地は大きいといえます。しかし、ファッション性を追求する方向性は間違ってはいないでしょう。さらなるファッション性の向上が実現できれば、1兆円ブランドは夢ではないといえます。ユニクロの「高品質で低価格」と同じように、「高いファッション性で低価格」を確立できるかが問われます。
ファストリの失速とは反対に、「しまむら」の業績は好調です。16年2月期決算は、売上高は6.7%増の5,460億円、営業利益は8.4%増の399億円で増収増益です。続く16年3〜8月期決算は、売上高は5.8%増の2,810億円、営業利益は40.6%増の251億円で増収増益です。17年2月期決算では過去最高益を見込んでいます。
しまむらの業績好調の要因としてヒット商品に恵まれたことが挙げられます。まずは「裏地あったかパンツ」です。裏地に起毛素材を使用し、一枚でも温かさを保つことができることが売りとなっています。定価が3,900円でしまむらでは比較的高額ですが、100万本以上売れました。「裏地あったかパンツ」のヒットを受けて今年の春からテレビCMなどで話題となっていた、涼しさが売りの「素肌涼やかデニム&パンツ」も好調に推移しています。
「裏地あったかパンツ」と「素肌涼やかデニム&パンツ」の機能性商品が業績を牽引しましたが、しまむらの快進撃の理由はこれだけではありません。機能性商品に加え、ファッション性商品が好調だったことも理由として挙げられます。
ファッション性が高い「コラボ商品」が業績を牽引しました。16年3〜8月期では、「ハリスツイード×ディズニー」「ガールズ&パンツァー」「PHANTASY STAR ONLINE 2」「おそ松さん」「LOGOS DAYS×スヌーピー」「秘密結社 鷹の爪」「モンスターハンター×ぐでたま」「セガ」などとのコラボ商品を販売しています。コラボ商品は一例で、他にもファッション性のある商品を販売し、業績に大きく貢献しました。
GUとしまむらは「ファッション性」の追求が功を奏しています。一方、機能性を代表とする「品質」では、ユニクロとしまむらで明暗が別れました。しまむらは今まで、ユニクロほど品質にこだわりがあったわけではありません。そうした中で高機能商品を投入し、結果として大ヒットすることになりました。とはいえ、高機能商品で大ヒットしたのは「裏地あったかパンツ」と「素肌涼やかデニム&パンツ」くらいです。しまむらでは高機能商品の開発の余地はまだまだありそうです。
それに対し、ユニクロは素材メーカーの東レと戦略的パートナーシップを締結し高品質商品を開発していますが、出尽くした感が否めません。
GUではファッション性を高めていく方針です。そうした中で、ユニクロの方向性が見えていないのが現状です。ユニクロでもファッション性を高めていくのであれば、GUとの明確な違いを打ち出す必要があります。GUとの明確な違いを打ち出せなければ、現状でも起きているユニクロとGUでの顧客の奪い合いがさらに深刻化することになります。
ファストリの失速としまむらの好調な業績から、今の時代のアパレル産業の課題が見えてきました。しまむらの業績は今は好調ですが、今後においてファストリと同様の問題に直面することは十分考えられます。楽観視できない状況です。アパレル不況が続いていると言われる今、業界を代表するファストリとしまむらの動向に注目が集まりそうです。
image by: Cineberg / Shutterstock.com , Flickr
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