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【寄稿】FRBの「ドット・チャート」、7つの改善案
FRBの「ドット・チャート」改善に向けて、識者が7つの提案を行った
2016 年 12 月 14 日 16:46 JST
――筆者のピーター・オルセン氏は、ブルッキングス研究所ハッチンス財政金融政策センターのリサーチアナリスト。筆者のデービッド・ウェッセル氏は同センターの所長で、元ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)経済担当編集者。
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米連邦準備制度理事会(FRB)は14日、理事5人と地区連銀総裁12人の経済・金利見通し「経済予想サマリー(SEP)」の最新版を発表する。国内総生産(GDP)成長率、インフレ率、失業率の予想値のほか、各メンバーの翌日物フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の予想水準を点で示す「ドット・チャート」を公表する。このチャートについては批判も多い。ハッチンス財政金融政策センターが先日実施したFRBウォッチャー調査では、ドット・チャートが役に立っているとの回答は33%にとどまった。同チャートを巡っては、透明性を高めるどころか混乱を招いており、公約ではないのに市場から公約と受け止められることがよくある、との批判がある。これに対して支持派は、ドット・チャートを正しく読み取れば、連邦公開市場委員会(FOMC)の「反応関数(経済の変動に応じてどのように政策対応するか)」を大まかに理解することができると主張する。
FRBの経済予想サマリーについて学界や民間のFRBウォッチャー、元FRB幹部から寄せられた提案の一部を以下に挙げてみたい。
1.ドット・チャートをコンセンサス予想に置き換え
欧州中央銀行(ECB)や英中銀イングランド銀行など他の主要中銀の多くは、失業率・インフレ率・GDPに関してスタッフ予想かコンセンサス予想を発表している。FRBはなぜそうしていないのだろうか。
その答えの一端はFRB特有の構造にある。FRB理事5人と連銀総裁12人はそれぞれ独自の調査スタッフを抱える。これらスタッフが採用する予測モデルも、そこから導き出される予想もさまざまだ。ベン・バーナンキ前FRB議長によると、FOMCは2012年にコンセンサス予想を発表しようとしたが、「FOMCの規模の大きさや各意見の本質的な違いによって、そうした予想を適切なタイミングで立てるための手続きで合意できなかった」と述べた。
2.ドット・チャートの中央値を強調しない
FRBは2015年9月の経済予想サマリーから、金利予想の中央値の発表を始めた。この中央値を統計的な概要として利用するよう奨励するのは賢明ではないとの意見がある。見通しを巡る不確実性を軽視することになりかねず、中央値が文脈を離れて解釈される恐れがあるとの理由からだ。
現在はブルッキングス研究所に勤めるドナルド・コーン元FRB副議長は、中央値の発表をやめるべきとの考えだ。コーン氏は「FOMCは規模が小さいため、その重心がどこにあるかを(中央値が)うまく表しているとは必ずしも言えない。また、金利の狭い軌道に極端に注目が集まってしまう」と述べている。
3.各ドットの予想者を特定
経済予想サマリーではFOMCメンバーが匿名で予想を示すが、これを匿名から実名にすべきとの意見もある。そうすれば説明責任の向上につながる上、時間とともに各メンバーの意見がどう変わったかも明らかになる。ただ同時に、FOMC内の議論に問題が生じるかもしれない。実名の場合はFRB議長の見通しばかりが注目され、他のメンバーの予想は無視されるようになり、実際に決まった政策は議長案の可否を示す「信任投票」の様相を呈する恐れがある。
4.各メンバーのドットと経済見通しを結び付ける
経済予想サマリーでは、各ドットに該当するメンバーがどのような経済見通しを示したかは分からない。コーン氏によると、これらを匿名のまま結び付ければ、FRBウォッチャーは各メンバーの反応関数を推測しやすくなる。なぜなら、数ある予想値の中央値だけを見るよりも、経済主体がFOMCの反応関数をより正確に予想できるはずだからだ。この提案を支持する声は非常に多いようだ。
これにより、ジョン・ホプキンス大学のジョン・ファウスト教授(元FRB顧問)が経済予想サマリーの重大な問題と指摘する「混乱の源」を解決できるかもしれない。金利予想は経済予想と分離しているため、1年以内に利上げすべきと考えているメンバーがなぜそう思うかは分からない。両者を結び付ければ、各メンバーが実体経済に何が起きると予想し、それにFRBはどう対応すべきと考えているかが明らかになるだろう。
5.不確実範囲を示す
ECBやイングランド銀行など多くの中銀は、GDPやインフレの予想に関して「不確実範囲」を明示している。FOMCの金利予想もこれに倣うべきとの意見がある。そうすれば、ドット・チャートの中央値を政策公約と受け止める動きは減るとの見立てだ。
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-RE667_Yellen_GR_20161212181103.jpg
(青線)16年6月時点のFOMCメンバーのFF金利誘導目標の予想中央値、(黄色部分)70%の確率で実現すると予想される金利水準の範囲 PHOTO: JUNE 2016 SUMMARY OF ECONOMIC PROJECTIONS AND FEDERAL RESERVE BOARD STAFF
FRBのジャネット・イエレン議長は今夏のジャクソンホール会合で、その具体例を示して見せた。FOMCメンバーのFF金利誘導目標の予想中央値に加え、70%の確率で実現するとみられる金利水準の範囲を記したチャートを発表したのだ。
ファウスト教授は、中央値に注目が集まりすぎた場合、(それ以外の数値との)境界線をさらに曖昧にするという方法も悪くはないが、予想の中心は中央値であって平均値ではないため、そのうまいやり方は分からないと述べた。
6.別の経済シナリオの下での結果を示す
四半期ごとに異なるさまざまな経済シナリオ(原油安を引き起こす供給ショックなど)に基づいてドットを示すという案なら、FOMCメンバーは賛成できるだろう。これが実現すれば一般の人々は、そうしたショックにFOMCがどう対応するかについて理解が深まり、それらのリスクをFOMCがどう受け止めているかヒントを得られるだろう。2012年のFOMC議事録には「一部の参加者は、別のシナリオを用いる試みは(中略)有効である可能性があり(中略)さらに検討していくべきだと言及した」とあり、当時も同様のことが検討されていたことがうかがえる。
7.ドット・チャートの発表自体をやめる
ハッチンス財政金融政策センターが最近開催したFRBの意思疎通に関する会合では、グレアム・キャピタル・マネジメントのチーフエコノミストを務めるジュリア・コロナド氏がドット・チャートの廃止を求めた。同チャートは「明確なフォワードガイダンス(金融政策の先行きの手掛かり)ではなく、一種の方向性や移動速度を推測したり、確実性の程度を示したりする」ためのものだからだと説明した。実際の状況がドットの想定していたものと異なれば、FRBは信頼性を失う。
ただ、こうした意見は少数派だ。ドイツ銀行のチーフエコノミスト、ピーター・フーパー氏は、ドット・チャート廃止に断固反対だと言う。「一定の目的を果たしていると思う」とし、すでに公表しているものをいまさら取りやめるのは極めて難しいと語った。コーン氏は「ドット・チャートは浸透している。廃止すれば透明性が後退したと受け止められよう。発表の仕方が適切なら理解の支えになり得る」と述べた。
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By
NATHANIEL TAPLIN
2016 年 12 月 14 日 15:00 JST
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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中国は最高の賛辞と単純化がよく似合う。次の世界の超大国、世界最大の経済成長の歴史、はじけそうなバブル−−。エコノミストは景気循環の局面が変わるたびに、新たな成長の概念だと解釈しようとする。
だが現実ははるかに単純なこともある。景気の風は通常、構造的ではなく周期的に、しかも遅れて吹く。上海市場での12日の鉄鋼価格は2年ぶりの高水準となった。こうした急騰に胸を躍らせている投資家は一歩下がってみるべきだ。中国の建設投資と材料生産のピークは、信用の伸びがピークを示した4月から6〜8カ月後と、予定通りの時期に現れた。鉄鋼とセメントの生産の伸びは約2年ぶりの高水準だが、大幅な生産能力削減が価格を押し上げている。
だが、信用の伸びがさらに加速するか、インフラ業界を後押しするための多額の財政支出がなければ、足元で前年比6.2%増と3カ月ぶりの高い伸びとなった工業生産と材料価格への押し上げ圧力は2017年半ばに息切れしそうだ。
住宅価格はすでに下落し始めている。住宅投資の伸びは、10月には13.4%と2年ぶりの高水準だったが、11月は5.7%に減速した。
変動しやすい不動産投資は、3カ月移動平均をみると引き続き高水準にある。11月は今年最高となる前年同月比9.1%の伸びを示した。つまり鉄鋼需要の力強い伸びは向こう数カ月にわたって続くかもしれず、今年実施した生産能力の大幅な削減を踏まえると価格はさらに上昇する可能性がある。
黒:インフラ投資 緑:不動産投資 (いずれも3カ月移動平均、前年比)
Ramp Up Chinese investment, change from a year earlier. THE WALL STREET JOURNAL.
Source: CEIC*
3 month moving average. Infrastructure calculated as sum of utilities, transport and environment protection.
今、注目すべき重要な数字は信用の伸びとインフラ投資だ。今年これまでのところ、信用の伸びは4-6月期のピークから減速しているものの、その変化はわずかだ。中国国内の金利上昇は、融資の供給が細ってきていることを示している。インフラ投資は堅調で、前年に比べ20%近く増加している。
ただ、インフレと資産バブルを懸念している中国政府がリスクを完全に管理する姿勢をとれば、住宅建設以外の需要が必要になる。中国のインフラ向け財政支出が需要の不足分をいくらか補う可能性があるが、限りがある。
中国に関しては、投資家は時間差に注意する必要がある。
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