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日銀短観(12月調査)〜製造業を中心に景況感は改善したが、先行きに対しては慎重姿勢が目立つ(写真=PIXTA)
日銀短観(12月調査)〜製造業を中心に景況感は改善したが、先行きに対しては慎重姿勢が目立つ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161214-00000022-zuuonline-bus_all
ZUU online 12/14(水) 17:50配信
■要旨
1.日銀短観12月調査では、注目度の高い大企業製造業の業況判断D.I.が10と前回9月調査比で4ポイント上昇し、6四半期ぶりに景況感の改善が示された。一方、大企業非製造業の業況判断D.I.は前回から横ばいに留まった。大企業製造業では生産の回復や円安進行、国際商品市況の上昇を受けて景況感が改善した。非製造業は円安や国際商品市況上昇がコスト増加要因としてマインドの抑制に働きやすいうえ、インバウンド消費鈍化の影響などを受けて景況感が伸び悩んだ。中小企業も大企業同様、製造業の改善が顕著になる一方で、非製造業はほぼ横ばいに留まった。
2.先行きについては、企業規模や製造・非製造業を問わず幅広く悪化が示された。トランプ新大統領の政策運営や相次ぐ欧州の国政選挙など、海外情勢は極めて流動的である。足元の円安地合いもこれらの展開次第で反転しかねないだけに、企業は慎重姿勢を崩していない。
3.16年度収益計画は下方修正され、引き続き減収減益計画となっている。最近の円安進行は織り込まれていない。
4.16年度の設備投資計画は、前年度比1.8%増と前回調査時点の1.7%増からわずかに上方修正された。例年、12 月調査にかけては、中小企業で計画が固まってくることに伴って上方修正されるクセが強く、今回も上方修正された。ただし、年前半の円高によって企業収益が圧迫されたほか、海外経済が不透明感を増していることから、一部で様子見や先送り姿勢が広がりつつあると考えられ、例年と比べて上方修正の度合いがかなり抑制的になっている。中小企業では、秋からの最低賃金引き上げによる収益圧迫の影響が出ている可能性もある。
■全体評価:全体的に予想の範囲内だが、設備投資計画は弱い
日銀短観12月調査では、注目度の高い大企業製造業の業況判断D.I.が10と前回9月調査比で4ポイント上昇し、6四半期ぶりとなる景況感の改善が示された。一方、大企業非製造業の業況判断D.I.は18と前回から横ばいに留まった。
前回9月調査では、長引く影響で大企業製造業の業況判断D.I.が横ばいに、インバウンド消費の減速や天候不順から非製造業では小幅の悪化となっていた。
前回調査以降の10月の経済指標は総じて持ち直し傾向にある。個人消費は生鮮食品の価格高騰もあって力強さには欠けるものの、良好な雇用環境や天候不順の解消などから底堅く推移している。さらに11月以降は株高や気温の低下が消費の追い風になっていると見られる。生産についても、需要の持ち直しや在庫調整の進展を受けて回復が見られる。また何より、米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて為替が急速に円安に向かったため、輸出採算が大きく改善している。
今回、大企業製造業では生産の回復や円安進行、国際商品市況の上昇を受けて景況感が改善した。非製造業は円安や国際商品市況上昇がコスト増加要因としてマインドの抑制に働きやすいうえ、インバウンド消費鈍化の影響などを受けて、景況感が伸び悩んだ。
中小企業の業況判断D.I.は、製造業が前回比4ポイント上昇の1、非製造業が1ポイント上昇の2となった。大企業同様、中小企業でも製造業の改善が顕著になる一方で、非製造業はほぼ横ばいに留まった。
先行きの景況感については、企業規模や製造・非製造業を問わず悪化が示された。海外経済の先行き不透明感増大が意識されたようだ。米国でトランプ氏が新大統領に選出され、政策が不透明感になっているほか、欧州では英国のEU離脱や主要国での大統領・議会選などが控え、反EU勢力の躍進が警戒されている。情勢は極めて流動的であり、足元の円安地合いもこれらの展開次第で反転しかねないだけに、企業は慎重姿勢を崩していない。
なお、事前の市場予想との対比では、注目度の高い大企業製造業については、足元(QUICK集計10、当社予想は11)は予想通り、先行き(QUICK集計9、当社予想は8)は市場予想をやや下回った。大企業非製造業は、足元(QUICK集計19、当社予想は20)、先行き(QUICK集計18、当社予想は19)ともに、予想をやや下回った。
16年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比1.8%増と前回調査時点の1.7%増からわずかに上方修正された。例年、9月調査から12 月調査にかけては、中小企業で計画が固まってくることに伴って上方修正されるクセが強く、今回も中小企業を中心に上方修正された。ただし、年初から半ばにかけての円高によって企業収益が圧迫されたほか、海外経済が不透明感を増していることから、一部で様子見や先送り姿勢が広がりつつあると考えられ、例年と比べて上方修正の度合いがかなり抑制的になっている。中小企業では、秋からの最低賃金引き上げによる収益圧迫が抑制要因になっている可能性もある。
今回の短観の結果は、「足元に明るさは見られるが、先行きには警戒感が台頭する」という内容であったが、この結果が日銀の金融政策に与える影響は限定的になりそうだ。「景気認識引き上げの材料になるかどうか」という程度だろう。もともと、2%の物価目標のハードルは極めて高く、達成が見通せない一方、追加緩和の選択肢も実質的に限られているため、政策変更の余地は少ない。
11月1日の総裁会見でも、黒田総裁が、「(イールドカーブ・コントロールによって)適切なイールドカーブが実現しており、これが日本経済にプラスに働き、物価目標に向けて効果を発揮していく」と現状の政策維持を肯定的に評価する発言をしており、日銀が積極的に動く気配は見えない。従来と比べて、日本の景気と金融政策の関係性は希薄化している。
■業況判断D.I.:事業環境改善を受けて、製造業では幅広く改善
全規模全産業の業況判断D.I.は7(前回比2ポイント上昇)、先行きは2(現状比5ポイント低下)となった。規模別、製造・非製造業別の状況は以下のとおり。
◆大企業
大企業製造業の業況判断D.I.は10と前回調査から4ポイント改善した。業種別では、全16業種中、改善が9業種と悪化の4業種を大きく上回った(横ばいが2業種)。
国際商品市況改善が収益改善に働く石油・石炭製品(17ポイント改善)、非鉄金属(12ポイント改善)のほか、円安が輸出採算改善に繋がる電気機械(9ポイント改善)、はん用機械(8ポイント改善)、自動車(2ポイント改善)などが牽引役となった。一方で、国際的な船余りに苦しむ造船・重機等(7ポイント悪化)や石炭・鉄鉱石価格上昇の圧迫を受ける鉄鋼(7ポイント悪化)が全体の伸びを抑制した。
先行きについては、悪化が7業種と改善の6業種をやや上回り、全体の景況感も現状比2ポイント悪化した。原料輸入が多く、円安が逆風になりやすい木材・木製品(12ポイント悪化)、紙・パルプ(7ポイント悪化)のほか、足元で牽引役となった石油・石炭製品、非鉄金属の悪化が顕著になっている。
大企業非製造業のD.I.は18で前回と変わらず。業種別では、全12業種中、悪化が6業種と改善の5業種をやや上回った。電気・ガス(5ポイント改善)、対事業所サービス(4ポイント改善)などで持ち直しがみられる一方、インバウンド消費鈍化の影響を受ける小売(4ポイント悪化)と宿泊・飲食サービス(4ポイント悪化)、対個人サービス(3ポイント悪化)などで悪化が目立った。
先行きについては、悪化が9業種と改善の2業種を大きく上回り、全体では2ポイントの悪化となった。小売や宿泊・飲食サービスでは持ち直しが見込まれているものの、これまで底堅く推移してきた建設(11ポイント悪化)、不動産(6ポイント悪化)、対事業所サービス(6ポイント悪化)などで大幅な悪化が見込まれている。
◆中小企業
中小企業製造業の業況判断D.I.は1で前回から4ポイント改善した。業種別では全16業種中、改善が11業種と、悪化の5業種を上回った。業種別では、大企業同様、市況改善を受けた石油・石炭製品(12ポイント改善)、非鉄金属(10ポイント改善)、円安のメリットを受けやすい電気機械(9ポイント改善)、自動車(11ポイント改善)などで改善が目立った。
先行きについては、横ばいの紙・パを除く15悪化が悪化を見込み、全体では5ポイントの悪化となった。総崩れの様相だが、とりわけ木材・木製品(13ポイント悪化)、石油・石炭製品(11ポイント悪化)で大幅な悪化が見込まれている。
中小企業非製造業のD.I.は2と前回比1ポイント改善した。業種別では全12業種中、改善が7業種と悪化の2業種を上回った(横ばいが2業種)。不動産(5ポイント改善)や通信(5ポイント改善)などが改善する一方、電気・ガス(2ポイント悪化)、対事業所サービス(1ポイント悪化)が悪化した。
先行きは、悪化が9業種と改善の3業種を大きく上回り、全体では4ポイントの悪化となった。建設(7ポイント悪化)、不動産(6ポイント悪化)、宿泊・飲食サービス(6ポイント悪化)などで大幅な悪化が見込まれている。
■需給・価格判断:内外需給はやや改善、マージンは悪化
◆需給判断:内外需給はやや改善
大企業製造業の国内製商品・サービス需給判断D.I.(需要超過−供給超過)は前回比2ポイント上昇、非製造業も1ポイント上昇した。製造業の海外需給も1ポイント上昇している。内外需給ともに小幅ながら改善(引き締まり)がみられる。
先行きについては、国内需給は製造業でこそ横ばいが見込まれているが、非製造業では2ポイント低下。製造業の海外需給も1ポイント低下しており、需給の改善は全く見込まれていない。
中小企業については、国内需給は製造業が前回から3ポイント上昇、非製造業も2ポイント上昇したが、製造業の海外需給は横ばいとなった。先行きについては、国内・海外需給ともにほぼ横ばいに留まっている。
◆価格判断:仕入れ価格の上昇大きく、マージンは悪化
大企業製造業の販売価格判断D.I. (上昇−下落)は前回から3ポイント上昇、非製造業でも2ポイント上昇した。一方、仕入価格判断D.I. (上昇−下落)は製造業で7ポイント、非製造業でも5ポイント上昇。資源価格の上昇や最近の円安によって仕入れ価格が大きく上昇しているようだ。
製造業、非製造業ともに、仕入価格D.I.の上昇が販売価格D.I.の上昇を宇和周り、両者差し引き(販売価格−仕入れ価格)であるマージン(利鞘)は前回から縮小している。
販売価格判断D.I.の3ヵ月後の先行きについては、製造業では1ポイント上昇、非製造業では1ポイント低下と小動きが見込まれている。一方で、仕入価格判断D.I.は製造業で6ポイント上昇、非製造業でも2ポイントの上昇が見込まれているため、マージンはさらに縮小に向かうことが想定されている。
中小企業の販売価格判断D.I.は製造業で前回比4ポイント上昇、非製造業も1ポイント上昇した。一方で、仕入価格判断D.I.は製造業で7ポイント、非製造業でも4ポイントと大きく上昇したため、差し引きであるマージンは、それぞれ縮小している。
先行きについても、販売価格D.I.が製造業で横ばい、非製造業では1ポイント上昇と小動きが見込まれている一方で、仕入価格判断D.I.は製造業で11ポイント上昇、非製造業で6ポイント上昇と、それぞれ大きく上昇しており、大企業以上に、マージンのさらなる縮小が見込まれている。
■売上・収益計画:売上・利益ともに下方修正、最近の円安進行は織り込まれず
16年度収益計画(全規模全産業)は、売上高が前年度比1.6%減(前回は0.9%減)、経常利益は8.2%減(前回は8.1%減)とそれぞれ小幅に下方修正された。引き続き減収減益計画となっている。売上の内訳では輸出の下方修正が目立つ。
なお、16年度想定為替レート(大規模製造業)は104.90円(上期106.52円、下期103.36円)と前回(107.92円)からさらに円高方向に修正されており、米大統領選以降急速に進んだ円安が全く織り込まれていないことも下方修正の一因となった。短観における想定為替レートは実勢の織り込みが遅れるうえ、円安の持続性に疑念があることも影響していると考えられる。
足下の実勢は115円台と、想定に比べて大幅な円安水準にあるため、今後大幅な円高が進まない限り、次回以降の短観において収益計画が上方修正される可能性が高い。
■設備投資・雇用:16年度設備投資計画は上方修正だがかなり慎重
生産・営業用設備判断D.I.(「過剰」−「不足」)は全規模全産業で0と、前回比で横ばいとなった。一方、雇用人員判断D.I.(「過剰」−「不足」)は全規模・全産業で▲21と前回から2ポイント低下(不足感が上昇)している。景気が緩やかに回復しているうえ、構造的な高齢化の影響もあって、中小企業を中心に人手不足感がさらに強まっている。
上記の結果、需給ギャップの代理変数とされる「短観加重平均D.I.」(設備・雇用の各D.I. を加重平均して算出)は前回から低下している(▲12.0ポイント→▲13.2ポイント)。
D.I.の水準としても引き続き人員の不足感が極めて強い状況が続いている。内訳を見ると、これまで同様、製造業(全規模で▲12)よりも、労働集約型産業が多い非製造業(全規模で▲29)で人手不足感がより強い。
また、企業規模別で見ると、人材調達力や収益力の違いが反映されているとみられるが、中小企業が▲24と大企業の▲13を下回る状況が続いている。この結果、中小企業非製造業では▲31と、全区分中で最大のマイナス幅となっている。
人手不足は製造業・非製造業や企業規模を問わず幅広く共有されているが、特に中小非製造業においては深刻な経営課題になっている。
先行きの見通し(全規模全産業)は、設備判断D.I.が現状比2ポイント低下の▲2、雇用判断D.I.も2ポイント低下の▲23と、それぞれ不足感が強まることが見込まれている。
両者を反映した「短観加重平均D.I.」も今回に続いて低下に向かう見込み(▲13.2ポイント→▲15.2ポイント)である。先行きにかけても、雇用判断D.I.の低下は中小企業で生じており、中小企業における人手不足に対する警戒感が現れている。
16年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比1.8%増と前回調査時点の1.7%増からわずかに上方修正された。例年、9月調査から12 月調査にかけては、中小企業で計画が固まってくることに伴って上方修正されるクセが強く、今回も中小企業を中心に上方修正された。
ただし、年初から半ばにかけての円高によって企業収益が圧迫されたほか、海外経済が不透明感を増していることから、一部で様子見や先送り姿勢が広がりつつあると考えられ、上方修正の幅は例年と比べてかなり抑制的になっている(12〜15年度の1%台前半に対し、今回は0.2%に留まる)。特に中小非製造業の抑制スタンスが目立っており、秋からの最低賃金引き上げによる収益圧迫が抑制要因になっている可能性もある。
なお、16年度計画(全規模全産業1.8%増)は事前の市場予想(QUICK 集計2.9%増、当社予想は2.5%増)をかなり下回る結果であった。
上野剛志(うえの つよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト
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