http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/438.html
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WEDGE REPORT
液体ミルク解禁へ、そもそも今までどうして導入されなかった?
2016/12/06
小川たまか (ライター・プレスラボ取締役)
今年になってついに検討が始まった乳児用「液体ミルク」の導入。海外では一般に普及しており、日本でも震災時や外出時などの必要性から、導入を求める声が広がっていた。そもそも、これまでなぜ日本では液体ミルクが使われてこなかったのだろうか。2014年に導入を求めるインターネット署名を立ち上げ、活動を続けてきた「乳児用液体ミルクプロジェクト」代表・末永恵理さんに液体ミルクのこれまでとこれからを聞いた。
※ちなみに筆者は子育て経験がない。同席した編集担当のKさんは、1児の母。
――10月に、液体ミルクの国内販売を認める方向で検討に入るという会見があり、これが「液体ミルクの解禁へ」と報じられています。とはいえ、実際に導入されるまでにはまだ時間がかかりそうですね。
末永:そうですね。今は専門調査会が立ち上がることが決まったという段階です。これから製造のための規格基準を決めていくことになります。メーカーや厚生労働省が規格基準を作り、それを法整備に落とし込んで、法律が決まったらその法律にのっとってメーカーが液体ミルクを製造してみて、それを消費期限の最後まで保管して安全を確認して。それでようやく販売となるので、早くても3〜4年はかかるのではないでしょうか。
――結構かかりますね。海外で使われている液体ミルクの輸入を先に始めることは難しいのでしょうか?
末永:私もその案を押していきたいなと思っています。ただ、消費者庁が管轄している乳児用食品の表示基準の項目には現状で粉ミルクしかないんです。つまり、液体ミルクを輸入しても「乳飲料」という括りになってしまって、赤ちゃんに飲ませていいという表示ができない。だから、その表示の改定が必要なのですが、消費者庁も厚生労働省で規格基準が決められてから表示の改定を行いたい……という意図もあると思うので、消費者庁が先か、厚生労働省が先か、どちらかなというところですね。
(写真:Alamy/アフロ)
「災害時のために液体ミルクを備蓄しておきたい」声も
――育児経験がないとミルクのことってなかなか知る機会がありません。ウェッジの読者にも、よく知らない人は多いかもしれませんので、基本的なことから伺っても良いでしょうか。
末永:まず飲む時期についてですが、赤ちゃんが母乳かミルクだけで育つのは生後半年頃まで。6カ月を過ぎた頃から、合わせて離乳食も食べ始めます。そこからは個人差があって、1歳頃にミルクも母乳もやめる子もいるし、2歳頃まで続ける子もいます。1歳頃からは、フォローアップミルクという、栄養成分の違うミルクを離乳食の足しにすることも多いです。このフォローアップミルクについても、海外では液体ミルクが販売されています。
――粉ミルクを作るのがなかなか手間なんですよね。話を聞くと驚きます。
末永:私も子どもが生まれるのが遅かったので、友達が遊びに来て「ミルク作るからお湯貸して」って言われたりすると「お湯?」って思ってましたね(笑)。
手順としては、粉をお湯で溶いて、それを赤ちゃんが飲んでもやけどしない人肌の温度まで冷まして飲ませます。3〜10分ほどかかる。作り置きはできないので、生まれたばかりの頃は2時間置きで作ったり。赤ちゃんがお腹を空かせて泣き始めると、粉ミルクを作るためにそばを離れなければいけないですが、離れるとさらに激しく泣いて、ミルクができた頃にはもう泣き止み方がわからなくて、ミルクが飲めない、みたいな悪循環になることも。泣かせっぱなしなので「ごめん、ごめん」って焦るんですよね。
編集担当K:焦りますよね。焦りすぎて哺乳瓶の口の部分を落としちゃって、「あ、もう1回消毒しなきゃ」みたいな。充分に冷ましたつもりでも、「ダメだ、もう1回」みたいなこともありますし。
――大変ですね。
末永:大変なんです。お出かけする場合は、魔法瓶にいっぱいお湯を入れます。量が少ないと冷めてしまうので。でもお湯だけで作ると冷めるのに時間がかかるので、水も一緒に持って行くことも。
――その分、母乳なら楽とも言われたりしますが、母乳をあげているお母さんでも、急に出なくなる、ということもあるんですよね。
末永:疲れると出が悪くなるんですよね。水分や栄養が足りないと、途端に出が悪くなります。
――熊本地震の際は、フィンランドから液体ミルクが被災地へ送られました。震災のような緊急時の場合にも、本当に役立つと思います。
末永:液体ミルクに関するアンケートを取ってみたら、「今は母乳育児しているけれど、災害時のために液体ミルクを備蓄しておきたい」という方も多かったです。母乳にしろミルクにしろ、赤ちゃんはそれがなければ生きていけないので、保護者は切実な気持ちで考えていると思います。
――液体ミルクの導入がこれまであまり話題にならなかったのは、少し待機児童の問題に似ているなと思いました。不便さや悩みを抱えているのが一時期で、その時期が過ぎると保護者はまた別の育児に関する問題に行き当たるので、訴えている暇がない。
末永:そうですね。次のミッションが始まっちゃう。ミルク終わったら保育園に入れなきゃ、保育園に入れたら仕事復帰。過ぎ去ると次のものが迫ってきちゃうんですよね。
「ニーズが伝わってないなら伝えよう」と署名
――末永さんは2014年にお子さんを出産されて、その後でChange.orgで署名活動をスタートされたんですよね。これまでに4万人以上が署名しています。
末永:そうですね。4月に出産して、半年ほどミルクと母乳の混合で育児をして、10月頃から調べ始めて11月に署名を開始しました。始めて1カ月くらいで、1万件ぐらいパッと署名が集まったんですね。いったん広まった後はあまり動きがなかったのですが、今年4月に熊本地震があって、そのときにもう一度署名が広がりました。危機感が強くなったからだと思います。そうこうしているうちに、液体ミルクを知っている人の母数が増えた気がします。
――署名を始めたきっかけを教えてください。
末永:私の場合、生後半年を過ぎたらミルクを飲んでくれなくなって母乳ばかりになったんですね。ミルクを作る手間はそこでかからないようになったんですけど、それをきっかけに「そういえば液体ミルクってあったな」って思い出して調べてみました。調べてみたら、厚生労働省が認可していないからという情報を見つけたので、本当かな? って思って厚労省に電話してみたんですよ。「なぜ認可しないんですか?」って。
そうしたら、申請が来ていないからやっていない、止めてるわけではないよという回答で。そうなんだと思って、今度はミルクメーカーさんに電話したんです。メーカーさんは「そんなに要望がたくさんあるわけではないので、作る話になっていません」と。
――それなら、要望があることを署名で示そう、と。
末永:(厚労省もメーカーも)皆さん、とりあえず悪気があるわけではなさそうだぞって思いました。ニーズがあることが伝わっていないから、どれだけニーズがあるかを集めてみます、という気持ちでしたね。文句ばかり言うとメーカーさんとかも困っちゃうのかなと思って、それは言わないように気を付けました。
――なるほど。
末永:私も厚労省に電話した時点では、「なんで許可してくれないんだろう? 大変なのに」と思っていました。厚労省がまず法律を作って、作るメーカーを募集するというわけにはいかないのかと聞いたら、「厚労省はミルクの専門家ではないから、(専門家である)メーカーさんからやりたいものが出た段階で、そこをたたき台として一緒に考えていく」と言われて、確かにそうだなと思いました。みんな悪意がないんですよね、思ったほど(笑)。
――国内のミルクメーカーが、今後は一緒に検討を始めるのですね。
末永:今は日本の粉ミルクメーカーは6社だけです。メーカーさんも大変で、赤ちゃんが減っていく中で、粉ミルクメーカーは生き残らなければいけないし、安全なものを作らなければいけない責任感がすごくあるから、簡単に「液体ミルク作る」と言えない状況はあると思います。
だからそこをたとえば、他業種の飲料水メーカーや海外メーカーを提携してリスクを分散できるといいですね。リスクが高すぎるからできませんという議論にならないように、いろいろな業界を巻き込んでいけたらいいと思っています。今も、他業種メーカーの担当者さんを呼んで勉強会をしていますが、今後はもう少し積極的にやっていこうかなと思っています。
編集担当K:たぶん売れますよね。
末永:ただ、継続的に買う人がいないと運営が成り立たない、ラインが回らない。粉ミルクメーカーさんは、そのあたりを心配されているのかなと思います。
――ジュースとかお茶は毎年新発売が出るのに、ミルクとなると難しいんですね。
末永:そうなんです。飲料水メーカーって、1000品番作って翌年に残るのが3品番と聞きました。どんどん開発する。でもミルクの場合は赤ちゃんの主食なので、1億個に1個でも何か問題があったら命に関わること。粉ミルクメーカーの方に聞くと、飲料は基本的に水の部分が多いから、菌の発生の仕方も違うと。
――少子化で赤ちゃんも少ないし。
末永:そうなんです。赤ちゃん増えている国が世界中でたくさんある中で、海外のミルクメーカーさんもあえて日本で商売しようとはなかなか思わないかもしれない。
10代の男の子から署名も
――検索欄に「液体ミルク」と打つと、関連検索に「デメリット」と出るんですね。まだ国内にないものなので、不安を感じたり、「今まで導入されていないのはデメリットがあるからでは?」と考えている人もいるのだと思います。液体ミルクのデメリットはあるでしょうか?
末永:デメリットの一つは、価格が粉よりも高いことですね。アメリカの場合、7割ぐらいの人が粉ミルクを使っていて、残りが液体ミルクや薄めて使う液体ミルク。ヨーロッパの場合、もう少し液体ミルクを使っている割合が高くて、それはアメリカの場合、ヨーロッパよりも(液体ミルクと粉ミルクの)価格差が大きいからだと思います。200ミリの液体ミルクが、イギリスだと1本150円ぐらい、アメリカだと200円以上するんですよ。
――確かに1本200円以上だとちょっと高い気が。
末永:そうですね。1日に何回も飲むものなので。あとデメリットは、温度の問題があるかもしれません。粉ミルクを湯で溶いて人肌に冷ましたものに慣れていると、基本的に常温で使う液体ミルクをあげようとしても、飲みなれなくて飲んでくれないかもしれない。
編集担当K:そうすると結局温めないといけない。
末永:そうですね。
――あと、衛生上の問題があるのでは? と気にしている人もいるかもしれません。
末永:それはないんですよ。むしろ、WHOが感染リスクの高い赤ちゃんには粉ミルクよりも液体ミルクの方が感染リスクが低いと提唱しているほど。封を開ける前は無菌状態なので、粉ミルクよりもさらに衛生状態は良いんです。
液体で保管しておくことに不安を感じる人もいるかもしれませんが、技術的にはクリアしています。ただ、ロングライフミルクってわかりますか? 紙パックで常温でも3カ月以上保存できる牛乳のことです。日本でこれを発売したしたときに、「牛乳=生鮮食品」のイメージが強くて全然売れなかったらしいんです。
――食品のイメージを変えるのはなかなか難しいんですね……。
末永:そうですね。消費者のマインドが保守的というか。だから、粉ミルクメーカーさんが「液体ミルクを作っても売れないのでは?」と心配するのはわかりますよね。
――とはいえ、必要としている親子はたくさんいるので、なんとか早く販売が始まってほしいですね。活動に対して、男性から意見が来ることはありますか?
末永:はい。たとえば双子のパパから、切実にミルクが必要という声があります。母乳が出ていたとしても、双子の場合は一人にあげているときに、もう一人いるので。
編集担当K:署名を見ていたら10代の男の子から「僕はまだ何も子育てのことがわからないけれど、たぶん重要だと思うので署名に賛同します」というようなコメントがあって、こんな子もいるんだって涙が出そうになりました。
末永:ボランティアしたいって連絡をくれた女子高生の子もいます。彼女は英語も得意なので、調べものの手伝いとかしたいと言ってくれて。受けている教育が私たちの頃とは違うのかな(笑)。希望を感じますよね。先日、一緒に小池百合子都知事に会いに行きました。
――どんどん大きな動きになっていきますね。
末永:そうですね。ここで立ち止まるとなかなか難しいと思うので、ぜひ、早めに解禁してほしいです。今後の取り組みもFacebookページで報告していくつもりですので、ぜひ応援していただけるとうれしいです。「乳児用液体ミルクプロジェクト」の署名も引き続きよろしくお願いします。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8390
Nature Japan Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 12 News サルの「石器」が投げかける疑問
NEWS
サルの「石器」が投げかける疑問
Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2016.161204
原文:Nature (2016-10-19) | doi: 10.1038/nature.2016.20816 | Monkey ‘tools’ raise questions over human archaeological record
Ewen Callaway
ブラジルに生息するオマキザルの一種には石を打ち割る習性があり、その結果生じる石の破片は、旧石器時代の人類が作った剥片石器によく似ていることが報告された。これは、考古学における石器の解釈にまさに一石を投じる発見かもしれない。
石を打ち割って得られた剥片を、さらに別の石に打ちつけて石英の粉末を得るヒゲオマキザル。 | 拡大する
M.Haslam
2016年1月、オックスフォード大学(英国)の考古学者Tomos Proffittは、同僚のMichael Haslamが持ち帰った珪岩(主に石英からなる岩石)の加工片を調べていた。そのいくつかは、アフリカ東部で発見された、300万〜200万年前に人類が作製したとされる縁の鋭い石器「剥片石器」によく似ていた。
ところがHaslamによると、それらの加工片はこの2年ほどの間にブラジルのヒゲオマキザル(別名クロスジオマキザル;Sapajus libidinosus)によって作られたものだという。「あまりの衝撃に言葉を失いました」とProffitt。「私はヒト族の石器の研究で博士号を取得しました。石器の作り方もよく知っています。そんな私が見ても、この石片はヒトが作った石器にしか見えなかったのです」。
サルも「石器」を作る?
カピバラ山地国立公園(ブラジル)のヒゲオマキザルが石を打ち割っている様子。
ProffittとHaslamが率いる研究チームは、この大発見とそれに続く詳細な調査結果をNature 2016年11月3日号85ページに報告した1。
研究チームによれば、ヒゲオマキザルはこの「石器」を、道具として使おうとして作っているわけではないという。故意に石を打ち割ってはいるが、その結果生じた石片は意図したものではないらしいのだ。今回の発見で、これまで人類が作ったとされてきた石器の中にサルが作ったものが含まれている可能性が出てきたと、一部の科学者は指摘する。そうなれば、最近ケニアで出土した、現時点で最古となる330万年前の剥片石器も、疑惑の対象となるだろう。
オックスフォード大学の霊長類考古学者Susana Carvalhoは、今回の論文を画期的なものと評価する。「このオマキザルは、意図せずして、石器と呼ばれるべきものを作り出しているのです」。
サルと道具の関係
霊長類の中には、ごく簡単な道具を使うものもいる。霊長類学者のJane Goodallが、チンパンジーが棒を使って「シロアリ釣り」をすることを報告したときに、著名な古人類学者Louis Leakeyが「これはもう『道具』を定義し直すか、『ヒト』を定義し直すか、あるいはチンパンジーはヒトだと認めるしかないだろう」と返信したことは有名だ2。
オマキザルは最も日常的に道具を用いる動物の一群で、中でもブラジルのカピバラ山地国立公園に生息する野生のヒゲオマキザルは、石を複数の目的で利用する、今のところ唯一の非ヒト霊長類である。このサルは石を使って木の実を割るだけでなく、木の幹や岩に穴を開けたり地面に穴を掘るなどして餌を得たり、小石を砕いたり、また性的ディスプレイの一環として雌が雄に石を投げつけることが確認されている。
カピバラ山地国立公園のヒゲオマキザルが変わった石の使い方をしているのが初めて観察されたのは、2005年のことだった。サルたちが、侵食によって崩れかけている珪岩の崖の横で石を拾い、別の石に何度も叩きつけて、こぼれ落ちた粉を舐めている様子が確認されたのである。Proffittは、石の粉を舐めるという行動の理由について、ミネラルを補うためや、腸の状態を改善するため、あるいは単に舌ざわりを楽しんでいるだけかもしれないと推測する。「でも本当の理由は分かりません」。
ヒゲオマキザルのこの特異な行動についての以前の研究でも、使われた石のサイズや形は調べられていた3。だが、それは割れたかけらの大きい方のみが対象で、Proffittによると、小さい方のかけらには誰も目を留めておらず、最初にこれらに注目して集めだしたのはHaslamだったという。
Proffittの目には、Haslamが集めてきた破片の多くが、打製石器の1つである剥片石器に似ているように見えた。剥片石器は、Leakeyとその妻Maryによって、1930年代にオルドバイ峡谷(タンザニア)で初めて発見された。これらの石器は年代が約250万〜170万年前で、手に持った叩き石(ハンマー)を台石に角度を付けて打ちつけ、薄く尖った石片を剥ぎ取ることにより作られた、と考えられてきた。付近からは、刃物の痕跡が残った動物の骨も発見されたことから、この時代のヒト族が動物を解体するのに剥片石器を使っていたことが示唆される。
誰が作ったのか?
Proffittによると、ヒゲオマキザルが作った剥片の約半数に、オルドバイ遺跡で発見された「チョッパー(礫の片面の一部を打ち欠いて刃とした石器)」と同じ特徴が見られたという。中には、同じ叩き石から連続して打ち剥がされたように見える、一連の剥片群もあった。「このような特徴は、これまでヒトとしか関連付けられたことがありません」とProffittは言う。それでも彼は、サルたちによる剥片の作製は意図的なものではない、と強調する。「サルが得られた剥片を使うことはありませんでした。彼らはあくまでも石を割りたいだけなのです」。
Proffittはまた、オルドワン石器(オルドバイ型石器)が人類によって作られたとするのは間違いではないと考えている。なぜならこれらは、ヒト族の遺骸や、ヒトとの関連を裏付けるその他の証拠と一緒に発見されているからだ。けれども彼は、アフリカでより古い石器を探している際に剥片だけが見つかって、他の証拠が存在しない場合には、安易にそれを人工物だと結論付けてはならないと警鐘を鳴らす。ヒゲオマキザルと似た行動をする古代の類人猿やサルが作った可能性があるからだ。
ケニアのロメクウィ遺跡で最近発見された330万年前の剥片を含む石器群4は、世界最古の石器作製の証拠と考えられている。Proffittは、これも人類によるものだろうと考えているが、Carvalhoはやや懐疑的だ。「これらの石器群がヒト以外の動物によって作られた可能性はないでしょうか? 今回のヒゲオマキザルの例があるのですから、可能性はあるはずです」と彼女は言う。
ロメクウィ遺跡で石器を発見した研究チームのメンバーである、パリ西ナンテール・ラ・デファンス大学(フランス)の考古学者Hélène Rocheは、ロメクウィの石器の中には重さ15kgに達するものもあり、ヒゲオマキザルが作った小さな剥片と間違える余地はないと言う。彼女はProffittらの研究について「非常に素晴らしく、重要なものだと思いますが、それはあくまでもヒゲオマキザルを理解する上でであって、初期人類の理解にはあまり関係がないと思います」と言う。
ジョージ・ワシントン大学(米国ワシントンD.C.)の古人類学者Bernard Woodは、今回のヒゲオマキザルの道具がヒト族の石器によく似ていることは認めているものの、今回の知見が古人類学に関係してくるとまでは確信が持てないという。「これは一体何を意味するんだ? というのが今の率直な感想です」。
(翻訳:三枝小枝子)
参考文献
Proffitt, T. et al. Nature (2016).
Goodall, J. Science 282, 2184–2185 (1998).
Falótico, T. & Ottoni, E. B. Behaviour 153, 421–442 (2016).
Harmand, S. et al. Nature 521, 310–315 (2015).
http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v13/n12/
データ共有と再利用促進のための新方針
Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2016.161239
原文:Nature (2016-09-08) | doi: 10.1038/537138a | Where are the data?
Natureおよび関連12誌では、論文作成に利用されたデータセットの利用可能性と利用方法の明記を義務化しました。
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wowomnom/ iStock / Getty Images Plus /Getty
データ共有の考え方が研究コミュニティーにおいて採用されるようになりました。そこでNatureとNature関連誌12誌では2016年9月から、掲載受理された論文の基礎データについて、著者以外の者による利用可能性と(可能な場合の)利用方法を明示した「データ利用可能性ステートメント」(data availability statement)を論文中に記載することを義務化しました(go.nature.com/2bf4vqn参照)。論文著者は、報告する知見の解釈、再現と発展に必要な「最低限のデータセット」の利用可能性(availability)を申告する必要があります。なお、研究に使用したデータセットが公共的なアーカイブに保存されている場合も記載の対象です。利用が制限されている場合(例えば、プライバシーによる制限がある場合やデータが第三者によって管理されている場合)には、その点を明確にすることも論文著者に求められます。
我々は長年にわたって、データの利用可能性を論文の掲載条件とすることを支持してきました。今回の新方針ではそれを発展させ、さらにデータの引用を支持する姿勢を明確に示しています。論文著者は、デジタルオブジェクト識別子(DOI)が付与されたデータセットを引用することが推奨されます。
新方針導入に先駆け、2016年3月からNature関連5誌(Nature Cell Biology、Nature Communications、Nature Geoscience、Nature Neuroscience、Nature Physics)で試験的な実施を始めました。その結果、研究分野によってデータの共有とアクセスの文化に違いがあり、広く認知された公共的なリポジトリがないことが、公共的なリポジトリーへのデータ寄託にとって重大な障害となり得ることが確認されました。一方、データの寄託により既発表論文の認知度が高まるとともに再利用が促進され、データが引用されることでデータを生成して共有できるようにした者の認知度が高まる、という認識は、データの公開と共有が採用されていない研究分野でも深まってきています。
この新方針は、2017年初めまでに多種多様なNature関連誌で実施されます。新方針実施により、データ共有に研究分野間格差が存在する原因の解明および課題の洗い出しが進み、データ共有の実施拡大が促進されることを期待しています。
こうした動きは論文誌だけではありません。例えば、研究助成機関でもデータ利用可能性ステートメントが導入されています。英国の7つの研究審議会は、助成金受領者にこのステートメントを義務付けており、米国立衛生研究所は、研究者に対し自らの研究データの管理計画を提出することを求めています。
我々は、NatureおよびNature関連誌に掲載される論文にデータの利用可能性に関する情報を一貫して記載することで、将来的に研究者のデータ再利用が促進されることを期待しています。そして、論文誌が公共的なリポジトリーでのデータのアーカイブ化を義務付けている場合において、既発表論文にデータの利用可能性に関するステートメントとデータへの永続的なリンクを記載することが、公共的なリポジトリーでのデータの利用可能性と方針の遵守を確実なものとするための有効な方法であることが示されています(T. H. Vines et al. FASEB J. 27, 1304-1308; 2013)。
この新方針は、Natureの出版元であるSpringer Natureが、発行する全論文誌に研究データに関する共通の方針を導入し、標準化するという野心的なプロジェクトを2016年7月に始動したことに引き続いて実施されました(go.nature.com/2by6l6x参照)。このプロジェクトでは、明確な共通の枠組みを定めることで、各論文誌が各専門家のコミュニティーの状況を反映したやり方でデータ共有を奨励できるようにします。Natureのデータに関する方針もこの共通の枠組みに合わせて策定されます。
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