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JR北海道の車両「スーパー北斗」(「Wikipedia」より/DAJF)
赤字深刻なJR北海道、「在来線切り捨て」で公共交通の座捨てるのか、自業自得の不祥事続出
http://biz-journal.jp/2016/12/post_17363.html
2016.12.05 文=編集部 Business Journal
JR北海道は11月18日、在来線の総延長の約5割が「維持困難な路線だ」と公表した。経営安定基金の運用低迷に加え、安全投資負担が重くのしかかっているという。国鉄民営化で発足したJRのうちでも3島会社(北海道、四国、九州)の先行きは厳しいと当初から指摘されてきた。JR九州は不動産を中心としたビジネスに転換して株式上場を果たしたが、JR北海道はどこへ行こうとしているのか。
JR北海道の島田修社長は11月18日、札幌市で記者会見し、「民間企業として維持できるレベルを超える路線は赤字削減や路線のあり方を相談させてほしい」と地元自治体に協力を求めた。国から6822億円の経営安定化資金が供与されているが、高い利率での運用ができなくなり、赤字補填ができなくなったからである。
しかし、JR北海道が安全投資に資金を投入しなければならなくなったのは自業自得である。2013年の函館線で貨物列車の脱線事故が起こり、その後、レール検査データの改竄が発覚し、利用者の信頼を失った。
安全化投資に毎年350億円必要で、これに道内を今夏に襲った台風被害が追い打ちをかけた。
今後、JR北海道は沿線自治体と路線維持の費用負担などを協議する。自治体が鉄道施設を保有する「上下分離」方式を検討する。だが、JR北海道は公共交通という視点が欠落していないだろうか。採算性だけで、列車を走らせるのを中止することは正しい判断といえるのか。
路線区間ごとに自治体と協議するというのは、一見、客観性がありそうに見えるが、北海道全体の問題として議論していかないとおかしくなる。国の責任で、北海道と地元自治体を交えて将来を見据えた鉄道振興策のグランドデザインをつくることが必要不可欠だ。
■JR北海道は会社更生法を申請するべき
荒療治だが、JR北海道は会社更生法を申請し、民間会社であることを返上してはどうかとの意見もある。JR四国、JR貨物も近い将来、法的措置が必要になるとの厳しい見方をする財界人もいる。
JR北海道が会社更生法を申請した後には、JR東日本に経営を任せるという手もある。そして、JR四国はJR西日本とJR東海が分担して面倒を見る。JR貨物は国が前面に出るしかないとの意見が多い。
JR東海のリニア中央新幹線に安倍政権は3兆円の財政投融資を付けた。固定金利0.6%という超低利で11月29日に5000億円を融資した。2017年1月、3月にも5000億円ずつ融資し、17年度も複数回に分けて合計1.5兆円を貸し出す。
融資総額3兆円は、2055年までにJR東海は全額返済するとしているが、民間融資より低利になるため、JR東海の負担は5000億円ほど減る効果があると国土交通省は試算している。
しかも驚くべきことに安倍政権は無担保で融資を行う。石井啓一国交相は「焦げつくような事態は想定していない」としているが、今は好業績のJR東海も、リニア開業後はドル箱の東海道新幹線の乗客がリニアに流れて減る公算が大きい。その上、リニアは高コストであり、利益は減るとみられている。
今国会でも「公的資金による特定企業(JR東海)への優遇策だ」との批判が出た。
JR北海道の鉄路を維持するほうがJR東海のリニア新幹線より国民経済的には重要なのではないか。地域の公共交通をどう整備し誰が費用を負担していくのか。JR四国も、JR九州も、赤字路線がほとんどだ。JR北海道の苦境は3島会社に重い課題を突きつけている。
JR北海道が「在来線の切り捨て計画」を公表することに国土交通省はどういう態度で臨んだのか。勝手に発表させて、放置しておいていいわけがない。公表に待ったをかける勇気が国土交通省にはなかったのか。
石井啓一国土交通相は11月25日の閣議後の記者会見で、今夏の台風で被災したJR北海道に対し、復旧費として今年度予算の予備費から8億円超を出すと発表した。
安全性向上のため16〜18年度に支出する1200億円も、今回の復旧に使うことを認める。JR北海道が台風の被害の復旧に必要としている40億円のメドはこれで立ったが、この金額では本腰を入れた国の支援、税金の投入には程遠い。安倍政権はJR北海道を、本気で救う気があるのだろうか。
(文=編集部)
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