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海産物の5分の1が“食品偽装”だった!
鯛だと思ったらナマズだった!?世界中にはびこる海産物偽装の実態
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161204-00010005-dime-bus_all
@DIME 12/4(日) 14:10配信
「フイッシュ&チップス」というとイギリスのファストフードというイメージがあるが、オーストラリアではむしろソウルフードとして日常のメニューになっている。南半球だけに海産物の事情が異なるオーストラリアのフイッシュ&チップスはその食材も少し違うようである。ではいったいどんな魚がフィッシュ&チップスの食材に使われているのだろうか。
■フイッシュ&チップスの食材がアジア産ナマズ肉
南半球のオーストラリアでは、白身魚といえば近海で獲れたマトウダイ(John Dory)がまず挙げられるという。したがって、美味しいフイッシュ&チップスの食材の筆頭にマトウダイがくるのは自然なことだ。ここ数年でメルボルンで7店舗を構えるまでに経営を拡大した人気のフィッシュ&チップス料理店「Hunky Dory」も、その店名に鯛(dory)の文字があしらわれている。この店名を掲げたレストランでフィッシュ&チップスを注文すれば、当然そのフライの白身魚は鯛であると考えるだろう。しかし同店の厨房の冷蔵庫に、マトウダイのストックはほんのわずかしかなかったというから驚きだ。
匿名の情報提供者がこの「Hunky Dory」ポート・メルボルン店でナマズのフライをマトウダイと偽って提供しているとメディアへ密告している。しかもそのナマズは東南アジアのメコン川流域で捕獲されたものであるというのだ。もし本当だとすれば“食品偽装”ということになる。
これを知ったポートメルボルン市当局は今年4月に同店に立ち入り検査に入った。すると店の食材のほとんどが冷凍されたナマズなどの安価な輸入魚であることが明らかになったのだ。海に囲まれ海産物に恵まれているはずのオーストラリアで、人気レストランのメニューが輸入魚まみれになっていたのである。
「Hunky Dory」のある店舗では、定期的に業者から60キロから80キロという大量の冷凍ナマズ肉が搬入されており、そのほかにも25キロのサメ肉、さらにバラマンディ、ホキ、コチ、サーモンがそれぞれ4キロずつ納入された記録が残っていた。店名にある“鯛”の文字は納入記録のどこにもなかったのだ。この納入記録から、来店客のほとんどが注文する看板メニューであるフィッシュ&チップスの食材が明らかに冷凍ナマズ肉であることがわかるのである。ちなみに、ナマズ肉の小売市場価格が1キロ約420円(5豪ドル)であるのに対し、マトウダイはその10倍の1キロ4200円(50豪ドル)だ。
これら輸入冷凍魚の発泡スチロール箱に記載されている会社名「I&J Premium」はベトナムの水産業者であるという。同社はメコン川流域で養殖されたナマズなど11種類の淡水魚を格安で全世界に販売している。
メディアと市当局から質問を受けた同店オーナーはあくまでも“食品偽装”を否定している。同店のフイッシュ&チップスは「本日の魚料理」というおまかせの日替わりのメニューであり、魚の種類は明らかにせずに提供しているのである。つまり決して顧客を欺いているわけではないと主張しているのだ。
とはいっても、“鯛”の名前を冠したレストランの白身魚のフライがベトナム産のナマズだとは、客の大半は想像すらしていなかったではないだろうか。しかも同店では、厨房の中でこのナマズ肉を「H-Dory」と呼び合っており、新人スタッフはしばらくの間、切り身になったこの冷凍ナマズ肉が鯛であると思い込んでいるケースもあるという。したがって事情を知らない新人スタッフは、客から何の魚だと尋ねられれば“鯛”であると答えるのだ。
日本でも時折、寿司ネタの呼び名が適切であるのかどうかが話題になるが、今日のグローバル化された食品流通では個人の想像力を超えた食材が食卓に乗っているということでもある。健康被害がない限りはあまりセンシティブになっても仕方のないことだが、時には目の前の料理の食材がどこから来たものなのか、興味本位でそのルーツを探ってみればいろいろな気づきがもたらされるかもしれない。
■海産物の5分の1が“食品偽装”
実際のところ、海産物の“食品偽装”は今や世界的現象となっていて、海産物の食品・料理の5分の1が誤った表記で提供されているというショッキングなデータが今年公表されている。
海洋保護NPOの「Oceana」が世界中の海産物商品を調査したところ2万5000件以上の誤表記を確認した。調査サンプルの5つに1つは食品偽装だったのだ。
前出のアジア産ナマズが世界で最も偽装されて流通しており、鯛などの白身魚としてアメリカ、カナダ、ヨーロッパ、ブラジル、インドで広く販売されているという。調査では141件が確認され、事例によって18種類の魚種の名前に変えられて流通しているということだ。
フィッシュ&チップスの本家イギリスでは、安価なコダラやホワイティング(ヨーロッパ産の小型のタラ)がより高級なタラとして販売されている例が消費者団体の調査で暴かれている。
こうした海産物の食品偽装で健康へのリスクをもたらすケースもある。南アフリカ沿岸のサワラ(king mackerel)は水銀汚染が酷く市場では敬遠されているのだが、バラクーダやカマスと名前を変えて普通に流通しているという。また、やはり水銀汚染が深刻で食用魚のリストから外されているblueline tilefish(アマダイの一種)がニューヨークのスーパーでマダイやオヒョウとして売られていたという。
さらに乱獲や種の絶滅に関わる偽装も問題になっており、ブラジルでは絶滅が危惧されているノコギリエイ(largetooth sawfish)がサメとして売られていることが確認された。南カリフォルニア・サンタモニカの寿司レストランではクジラをマグロの大トロと偽って提供していたことが発覚して料理人が逮捕されている。
世界中にはびこっている海産物の食品偽装だが、その主要な動機はやはり業者による利益の追求だ。もちろん最大の被害者は消費者だが、各地域の健全な地元漁業にも大きなダメージを与えている。刺身やフライ用などとして切り身になってしまえば消費者にはもはや判別できないだけに、各国政府や国境を越えたNPOなどが協力してガイドラインを設け、チェックを怠らないことが求められるのだろう。
■産地特定のカギを握るクラゲ
産地と流通の追跡可能性(トレーサビリティ)が求められているグローバルな海産物市場だが、偽装を意図的かつ巧妙に行なおうする勢力に対しては調査の力もなかなか及ばないだろう。
海産物をDNA鑑定することでこれまでいくつもの偽装が暴かれてきたのだが、DNA鑑定をもってしても産地の特定は難しく、科学的手法による追跡可能性の確保は難しいと言われきた。しかしそこへ一筋の光明が見えてきたという。そのカギを握るのはクラゲだ。
イギリス・サウサンプトン大学の研究チームは、北海のクラゲを調べることで“化学物質マップ”を作り、北海で水揚げされた海産物の漁獲地が特定できることを指摘している。
現代の海洋には残念なことではあるが各種の化学物質が流れ込んでいる。そして海水に含まれる化学物資のパターンは各エリアで異なる。つまり“土地柄”(海ではあるが)があるのだ。この土地柄を良く反映しているのが、あまり移動せずに浮いているクラゲなのである。
北海の各エリアで採取したクラゲの体内を調べることで、そのエリアの化学物質のパターンを把握できる。これをマップにすることで各エリアの“土地柄”が浮き彫りになるのだ。
研究では、北海で獲れたホタテガイとニシンの体内の化学物質を調べ、その情報だけで漁獲地を特定することができた。今後はテストする魚種を増やしてさらに検証を行い、将来的には世界中の海洋でクラゲによる“化学物質マップ”の作成を目指すことになる。まったくお手上げだった漁獲地の追跡に大きな希望が見えてきたのは消費者にとって喜ばしい限りだ。年末年始には海産物を口にする機会も増えることと思うが、今後も安心して海の幸を賞味したいものである。
文/仲田しんじ
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