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シカゴ・ブルズ時代のマイケル・ジョーダン(ロイター/アフロ)
TPP崩壊と、自由貿易の謎と、マイケル・ジョーダンが芝刈りをしないほうがよい理由
http://biz-journal.jp/2016/12/post_17328.html
2016.12.01 文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表 Business Journal
米国の次期大統領、トランプ氏が就任と同時に脱退すると表明したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)。今国会でも議論の焦点になっています。これが良いか悪いかの議論は別として、TPPが目指す「自由貿易」に代表される「取引」や「交換」の概念と原理を理解しておくことで、私たちが日常での買い物や商取引において、損をせずに合理的な判断をすることができます。それについて考えてみましょう。
■経済のブロック化が戦争を引き起こした?
1930年代に起きたアメリカの不況は、あっという間に世界中に広がりました。当然どこの国も深刻な不況に見舞われたことで、それまで自由に貿易が行われていた国が互いに関税をかけて自国の産業を保護しようという方向に動いたのです。そのため当時の世界貿易は縮小し、不況がさらに深刻化し長引いてしまいました。
特にヨーロッパのように多くの植民地を持つ国は、自国と自国の植民地を、1つのブロックとして世界経済から隔離して、独自の経済圏としたのです。つまり他国からの輸入品には高い関税をかけて輸入を阻止し、自国の製品を植民地間で輸出入し、自分の勢力範囲だけで賄おうとしたということです。
植民地を持っていたり、アメリカのように広大な国土と資源を豊富に持っていたりする国はまだしも、日本やドイツのように植民地をあまり持たない国にとっては経済がブロック化されることは大きな痛手です。当然自分たちも植民地を持とうとします。日本の場合も、満州を自国の権益が確保できる経済圏にしようと動いたことで欧米と対立し、戦争に進んでいったのです。
この反省から、第二次世界大戦後には保護貿易が進まないよう、さまざまな自由貿易に対する取り決めが行われてきました。こうした政治的な取り決めによって自由貿易体制が確保されることは良いことですが、ここでシンプルな疑問が出てきます。
それは、例えばアメリカのように国内になんでもある国と生活必需品すら困窮している発展途上国との間では、果たして貿易が成立するのだろうか? という疑問です。なんでも持っているアメリカのような国は発展途上国からは何も買うものがないのだから、貿易というのは成立しないのではないかということです。
■マイケル・ジョーダンは芝刈りをしないほうがいい
ここで面白い考え方が出てきます。18世紀後半〜19世紀前半に活躍した英国の経済学者デビッド・リカードという人が唱えた「比較優位説」という考え方です。この考え方を説明するために面白い話があります。バスケットボールのスーパースター、マイケル・ジョーダンとハウスキーパーの話です。
・マイケル・ジョーダンは、2時間で芝を刈り取ることができる。
・ハウスキーパーに頼めば、4時間で芝を刈り取ることができる。
・ハウスキーパーは芝刈り4時間で50ドルの給料をもらえるが、マイケル・ジョーダンはその倍のスピードでできるので、同じく4時間働けば2倍の100ドルの給料がもらえる。
・ところがマイケル・ジョーダンは、同じ4時間でテレビCMの撮影をすれば10万ドルのギャラがもらえる。
この場合、当然ハウスキーパーはテレビCMなど出られませんから、どちらの仕事においてもマイケル・ジョーダンのほうがずっと稼げるということになります。これを経済学では「絶対優位の状態」と言います。
マイケル・ジョーダンは同じ時間をCMの撮影に使えば10万ドルのギャラをもらえるのですから、芝刈りで100ドルの給料をもらうよりよほどいいでしょう。だとすればハウスキーパーを雇って50ドルの給料を払い、その時間をテレビCMの撮影に使ったほうがマイケル・ジョーダンにとっては有利です。
この場合、彼がCMに出演し、ハウスキーパーが芝刈りをすることで双方にとって利益になると考えられます。これが「比較優位」という考え方です。
■“限られた資源”が問題を解決する
比較優位という考え方が成り立つための前提となる原則は「世の中にあるものはすべて有限である」ということです。例えば、時間や人数というのは極めて限られた資源です。前述の例でいえば、マイケル・ジョーダンにとってどちらの仕事もハウスキーパーよりも優位であり、より稼げる能力を持っていたとしても、4時間という限られた時間を有効に使うためには、芝刈りの仕事をハウスキーパーに任せて自分はテレビCMに出たほうが良いということです。
同様に国同士の関係においても生産に携わる人間の数には限りがありますから、より生産性の高い仕事に労働力を投入したほうが効率的ですし、逆に絶対的な比較では劣っている国にしても、“まだましなほう”に労働力を投入するほうがより良い結果が得られるでしょう。
自由貿易を支える理論として古典的な考え方である比較優位説について、必ずしもこの考え方が有効であるとは限らないという意見も多いのですが、知っておいても良いと思います。これはいわば“選択するための原理”ですから、これを知っておけば、日常生活のなかで何かをする時にこの原理を思い出してみると、意外と正しい選択ができるようになるかもしれません。
ただ、一家のご主人が“比較優位”の原則を持ちだして「俺は外で稼げるのだから家で皿洗いはしない」というのは、経済学的には正しくても家庭内では揉める原因になりかねませんので、注意が必要です。
(文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表)
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