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課税をどれだけ強化しても、日本の税収が増えない理由 狙うなら、富裕層ではなくキャバクラ?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50235
2016.11.24 加谷 珪一 現代ビジネス
政府はこのところ富裕層に対する課税強化に乗り出している。特に重視しているのは海外に資産を持つ富裕層である。パナマ文書が話題になるなど、海外への資産移転は耳目を集めやすいテーマかもしれないが、現実には海外資産の課税を強化すれば税収が大きく増えるというわけではない。
税務調査の結果を見ると、現金のやり取りが多い業種や、近年市場が急拡大している業種の申告漏れが多いという傾向が見られる。マイナンバーの導入で所得の把握が容易になっているという現実を踏まえた場合、臨機応変な調査を行った方が、より確実に申告漏れを防ぐことができるだろう。
■奇妙なニュース
先日、会計検査院の調査で、海外の不動産を使って節税する富裕層の増加が明らかになったという、少々奇妙なニュースがNHKで報じられた。
海外の不動産の中には償却期間が日本よりも短いものがあり、地域や物件をうまく選べば中古物件でもほとんど値下がりしないものも多い。所得の多い富裕層が、こうした海外不動産に積極的に投資すれば、減価償却の分だけ課税所得を減らすことができるというのは事実である。
日本でも減価償却を所得から控除することは認められているが、築年が古いと日本では問答無用で価格が下落し、価値の下落による損失が節税効果を上回ってしまう。
一方、米国や英国の不動産市場は非常に健全で、ニーズさえあれば物件の価格はしっかりと維持される。日米の不動産市場の質的な違いを活用した節税テクニックといえるだろう。
これが国税庁の調査ということなら特に驚くような話ではないのだが、調査を行ったのは国税庁ではなく会計検査院だという。会計検査院は通常、政府関係機関が適切に税金を使っているのかを検査する組織であり、国民に対して税務調査を行うところではない。
ニュースでは詳しい説明は一切ないのだが、会計検査院は今月7日に内閣に提出した2015年度決算検査報告において、国内外の減価償却期間の違いがもたらす税収の変化について指摘を行っている。おそらくNHKで報道された内容は、この検査過程で出てきたものと思われる。
会計検査院の検査としてはそれほど重大ではない事案について、わざわざニュースで報道させたという状況を考えると、海外資産への課税を強化するという政府のアナウンスと解釈した富裕層は多い。
このところ国税庁など税務当局は、富裕層の海外資産に対する課税強化に乗り出している。10月には、国際課税に関する今後の方針を示した「国際戦略トータルプラン」も公表した。
すでに東京、大阪、名古屋といった主要国税局には国際課税に精通した富裕層調査の専門チームを設置しており、これを他の国税局や国税事務所にも拡大する方針だという。
政府は2014年に国外財産調書の制度を導入している。これによって海外に合計で5000万円超の財産を保有している富裕層は、海外資産の内容を記載した調書の提出が義務付けられた。2015年度については8893件の提出があったという。
これに加えて政府は、海外資産に対する相続税の課税基準についても見直す方針を打ち出している。これまで相続人と被相続人が海外に5年以上住んでいれば相続税はかからないルールだったが、これを10年に伸ばすことを検討しているという。
もしこれが実現した場合、相続税を回避する目的で海外移住する場合には10年以上滞在しなければならない。
■富裕層を狙ってもタカが知れている
政府は慢性的な財源不足に悩まされており、税務当局は税収の確保に躍起になっている。富裕層への課税強化は庶民からの受けもよく、強化の対象にしやすいものと考えられる。
ただ、一連の富裕層に対する課税強化が税収の大幅な増加につながるのかというと話はまた別である。
税務当局が2015年度に行った税務調査のうち、富裕層に関する調査は4377件(着眼調査を除く)となっており、申告漏れ所得の金額は合計で516億円だった。1件あたりの申告漏れは1179万円、追徴税額は273万円となっている。この中で海外投資に関するものは565件で申告漏れの金額は168億円だった。
一方、申告漏れ全体を見てみると、調査件数は4万8043件で、申告漏れ所得の合計金額は4522億円となっている。1件あたりの申告漏れ所得の金額は941万円、追徴税額は155万円となっている。確かに富裕層の方が金額は多いが、富裕層の個人に対する課税を強化すれば税収全体が劇的に増えるというほどの状況ではない。
富裕層の課税強化によってそれほど大きな効果が得られないのは、富裕層の置かれた環境と深く関係している。巨額の資産を保有している富裕層の個人が、税務当局に知られることなく投資などの経済活動を行うことはほぼ不可能である。
資産のほとんどは、銀行預金、有価証券、不動産の形になっているはずであり、現金をタンス預金しているわけではない。
明確な意図を持って犯罪やそれに類する行為を行っていない限り、当局はほぼ動きを把握できるはずだ。したがって、大口の個人所得を捕捉できないというケースはほとんどないと考えてよいだろう。
唯一の例外が海外資産ということになるが、これも日本特有の事情が大きく関係しており所得の捕捉はそれほど難しいことではない。日本にはグローバルに活躍する個人がほとんどおらず、海外が所得の源泉というケースは非常に稀である。
海外に資産を持つ富裕層のほとんどは、日本国内でお金を稼ぎ、所得税を払った後のお金を送金する形で海外資産を保有している。あるいは、日本国内で株式を上場し、子供への将来的な相続を考えて海外に資産を移すというケースもあるだろう。
いずれにせよ、日本国内の銀行から海外に送金する必要があり、一定額以上の送金は確実に捕捉される。小口の送金は対象外の可能性があるが、こうした小口海外資産を捕捉することで得られる税収はあまり多くないだろう。
実際、提出された国外財産調書に記載された資産のうち、約半分が有価証券であった。具体的な所有者はもちろん公表されていないが、おそらく株式を上場した企業オーナーの親族がかなりの割合を占めていると考えられる。こうした大口の資産移動が捕捉されないということはあまり考えられない。
■税金「申告漏れ」上位の業種
適切に税金を支払わないというケースとしてもっとも多いのは、むしろ国内の事業者(事業所得を有する個人)である。特に現金のやり取りが多い業種は正確な所得を把握するのが難しいといわれる。
2015年度における税務調査において、1件あたりの申告漏れ所得金額がもっとも高額だったのはキャバレーで1件あたりの申告漏れ金額は2628万円であった。2位は風俗業で2326万円、3位は畜産農業(肉牛)で1471万円、4位はダンプ運送で1144万円となっている。
最近の傾向として顕著なのは、解体工事(1006万円)、型枠工事(983万円)、鉄筋鉄骨工事(970万円)など建設関連である。これらの業種は前年のランキングでは15位から19位と低かったが、2015年になって申告漏れの上位に急浮上した。
このところ銀行の金余りから、不動産に対する融資が活発になっており、ビルの建て替えラッシュが発生している。
これは量的緩和策の一種の弊害ということなのかもしれないが、その是非はともかくとして、今、お金が回りやすい業界は申告漏れも多いということが分かる。
このデータは全国のものだが、東京国税局分の調査結果は少し様子が異なっている。
申告漏れが1位となったのは、全国と同じキャバレーだが、2位はなんと情報サービス、3位は司法書士・行政書士であった。東京にはIT関係の会社が集中しているので情報サービスが多いというのは分かりやすいが、司法書士・行政書士が堂々の3位というのは少々驚きである。
司法書士・行政書士は政府から資格を付与されている、いわゆる「士業」と呼ばれる人々だ。一般の民間人に比べて高いモラルが求められるはずだが、結果は正反対のようである。このほかプログラマー、学習塾経営などが上位に入っているのはいかにも東京らしい。
マイナンバーの導入によって、税務当局の所得の捕捉は格段に容易になっているはずである。市場が急拡大している業種は申告漏れが多いということを考えると、経済動向に合わせて臨機応変な調査を行うことがもっとも効率がよさそうである。
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