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貸家を建てたり、不動産投資をしても儲かるのは最初だけかもしれない(写真:june/PIXTA)
「サラリーマン大家」の時代は間もなく終わる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161119-00145726-toyo-bus_all
東洋経済オンライン 11/19(土) 9:00配信
■いまから貸家をどんどん建設して大丈夫なのか
読者の皆さんの中には、「サラリーマン大家」を目指している方がいらっしゃると思います。「マンション1室か2室」というケースもあるでしょうし、自宅の土地などを生かして「アパートやマンション1棟経営する」という大きな目標を立てている方も、中にはいらっしゃるかもしれません。
2016年に入ってからのGDP(国内総生産)の内訳を見ると、唯一好調さを保っているのは住宅投資の分野です。これは、貸家となるアパート、マンションなどの集合住宅の建設が大幅に伸びているためです。国土交通省によれば、2015年の貸家の着工戸数は前年比で4.3%増えましたが、2016年の9月までの累計では前年同期比で9.7%増となり、その勢いを加速させているのです。
このような貸家の建設は、2015年1月に相続税の増税がなされたことでブームに火が付き始めました。もともと多くの資産家が貸家を建てて相続税の評価額を引き下げるという節税法を使ってきましたが、相続税の基礎控除額の縮小によって、相続税を納める必要がある被相続人の数が倍増するだろうといわれています。つまり、この節税法を使う人々の資産額のハードルが大幅に下がったというわけです。
2015年よりも2016年に貸家の建設が大きく伸びているのは、日本銀行のマイナス金利政策によって、借金が以前よりも容易にできるようになったためです。「トランプ大統領誕生」という新たな要素が加わったものの、長期金利のマイナスが常態化するなかで、銀行は今や普通の住宅ローンに比べ貸出金利が高めに設定しやすいアパート・マンション向けの融資を積極化しています。その結果として、景気が停滞しているにもかかわらず、アパートやマンションの建設に行き過ぎ感が表れ始めているのです。
最も注意を払うべきは、貸家の需要が高まっていないのに対して、供給が増え続けているというところでしょう。人口減少社会に突入した日本では、すでに全国で820万戸の空き家があり、その半数超は貸家となっているのです。これから本格的な人口減少社会が到来し、空き家が増え続けていくのは間違いないというのに、供給過多にある貸家の供給がさらに増え続けるという状況は、遅くとも10年後には、全国的に貸家の賃料が大きく値下がりすることを決定づけてしまっているといえるでしょう。
大手建設会社の「一括借り上げ」の落とし穴
もちろん、首都圏を中心に全国的に空室率の上昇が止まらない状況下でも、需給を無視した貸家建設が増えている背景には、建設業者が提案する「サブリース方式」が魅力的であるということもあります。
■なぜ「サブリース方式」にはリスクがあるのか
サブリース方式とは、建設業者が貸家を10年あるいは20年など、長期間にわたって一括で借り上げ、大家の家賃収入を保証してくれるというものです。大概の地主は建設業者からこのような提案をされると、アパート・マンション経営には「リスクがない」と勘違いしてしまうものなのです。
しかし、このサブリース方式には大きな落とし穴があります。一般的には、アパート・マンションは新築のきれいな時には満室になりやすいのですが、時の経過とともに古くなってくると空室が増える傾向が強いからです。そうなると建設業者は、地主に約束した家賃収入を大幅に減額したり、サブリース契約を一方的に解除したりするので、地主と争いごとになる事例が増えてきているのです。訴訟になっている事例は、枚挙にいとまがありません。
日銀の黒田総裁はマイナス金利の効果として、貸し家建設の増加を代表的な事例として挙げていますが、そのような見解は、現在の効果を強調し過ぎであると同時に、将来の大きな副作用を無視してしまっています。たしかに、目先の景気にはプラスになるでしょうが、今後も首都圏を中心に空室が増え続ける現状を考えると、「経済的には今が良ければ、後はどうでもいい」といっているようなものなのです。すなわち、マイナス金利の副作用を効果と偽っているわけです。
将来の需要と供給のバランスを考えると、アパートやマンションの建設ペースはバブルの状況にあるといえます。今のようなペースで貸家の供給が進むことになれば、空室率が上昇の一途を辿ることになり、家賃が大幅に下がることは避けられない事態になるからです。たとえ相続税の評価額引き下げと歴史的な低金利の双方が魅力的であったとしても、アパート・マンション経営には将来多大なリスクが想定されることを、余った土地を持っている人々は、しっかりと自覚する必要があるでしょう。
家賃が下落すれば、物価全体も押し下げてしまう
黒田総裁はことあるごとに、物価上昇が重要であると力説しています。しかしながら、貸家建設の増加をマイナス金利の効果と主張するのは、将来の物価目標とも明らかに矛盾しています。なぜなら、将来の需給悪化により家賃が大幅に下落すれば、物価全体を押し下げることになるからです。モノやサービスの物価動向を示す消費者物価指数では、家賃下落の影響は決して小さくはありません。持ち家でも家賃に相当する額を毎月支払っているとみなしている帰属家賃も含めると、消費者物価指数全体の2割程度を占めているのです。
■貸家建設は将来の不良債権増加をもたらす懸念
先進国では全般的に、家計支出に占める家賃の割合が高いので、帰属家賃という考え方が採用されています。当然のことながら、帰属家賃は実際の貸家の家賃から推計されているので、過剰な貸家建設の影響が将来の需給関係を著しく悪化させれば、物価全体への下落圧力は今まで以上に大きくなっていくでしょう。マイナス金利政策が後押ししている貸家建設バブルが、黒田総裁の言う効果とは真逆の結果をもたらすという皮肉な運命が待ち受けているというわけです。
そうはいっても、日本では物価上昇率の算定に占める帰属家賃の割合は、先進国のなかでは必ずしも高いほうではありません。米国では帰属家賃の割合が3割程度を占めているのと比べると、日本では先に述べたように2割程度に過ぎないのです。
おまけに、米国では人口増加により帰属家賃が2%を上回る上昇を持続しているため、物価全体を引き上げる浮揚装置のような役割を果たしています。人口が減少する日本では帰属家賃がまったく上昇していない状況と比較すると、日本が米国並みに2%の物価上昇を目指すのが、いかに現実離れしているのか理解することができるはずなのです。
マイナス金利導入に伴う超低金利の温存は、欧州での先例を見ても明らかなように、投資マネーを必要以上に金融商品や不動産などに向かわせ、それらの需給関係を大きくゆがめる結果にもつながっています。実体経済の状況と将来の需給関係を無視して、金融商品や不動産などへのマネー流入が行き過ぎることは、短期的に見れば資産価値の向上やGDPの増額に寄与することができたとしても、長期的に見れば価格の長期低迷や不良債権の増加をもたらす可能性が高いと危惧するほうが正しいといえるでしょう。
中原 圭介
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