http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/801.html
Tweet |
通信〜しぼむ寡占の宴
(上) 携帯大手3社 稼ぐ力に黄信号 IoT・格安スマホが侵食
故スティーブ・ジョブズ氏がiPhoneを発表し、スマートフォン(スマホ)時代の幕を開けて約10年。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が占有してきた携帯電話市場が転換期を迎えた。格安スマホの台頭やあらゆるモノがネットにつながるIoT向けサービスの登場で寡占市場の「宴(うたげ)」の時は過ぎようとしている。
「今はまだ点にすぎないが、第4の勢力になる可能性もある」
京セラが仏通信ベンチャーとIoT向け通信サービスを来年2月に始めると発表した9日。ソフトバンクの幹部はこう漏らした。
京セラと仏社のサービスはセンサー1個あたり年100円からという料金が売り物。携帯通信網の数十分の一の水準だ。ソフトバンクも9月にIoT向けサービスを導入すると発表しているが、自ら掲げてきた「価格破壊」の看板を新規参入組が奪おうと試みる。
免許制で多額の初期投資が必要な通信業界の参入障壁は高い。限りある電波を3社で分け合いサービスを提供。「協調的な寡占」体質が定着し、料金は横並び状態が続く。3社の2016年4〜9月期の国内通信事業の営業利益は合計で1兆5000億円を超える。
仏社と京セラのIoT向けサービスは免許が不要の周波数帯を使うため、異業種も参入しやすい。両社は国内40社と組み、海外24カ国で実績ある技術と低価格で日本市場に乗り込む。
揺らぎ始めたのは法人向け市場だけではない。個人向けも侵食が進む。寡占の利を謳歌する3社の足元を格安スマホの波が洗う。
日本の格安スマホの普及率はまだ1割近くだが、MM総研の試算では2年後には回線数は約2倍に膨らむ見通しだ。「月額500円(税別)から」とうたいLINEが参入し、ネット通販の楽天や流通のイオンも契約者数を伸ばす。担い手は200社を超えた。
総務省によると格安スマホの回線数は6月末時点で1346万件と1年間で340万件増えた。格安スマホ事業者の9割超がドコモの回線を借りてサービスを提供する。ドコモの契約数は9月末で約444万件増。一見すると順調のようだが、その多くを格安回線が占めているのが実情だ。
回線を奪われるだけではない。通信会社の稼ぐ力を示す1契約あたりの月間収入も沈み始める。格安スマホを含む全契約者数で関連収入を単純に割ると月間収入はドコモの場合で1000円ほど目減りする。ドコモの吉沢和弘社長は格安スマホへの「顧客流出の影響はある」と話す。
格安スマホの事業者は使い勝手のいい回線を求めて携帯大手と火花を散らすこともある。日本通信は9月末、ソフトバンクに回線の貸し出しを拒否されたと総務省に訴えた。同社の福田尚久社長は「昨年8月から接続を申し入れてきたが、6月になって応じられないと返答が来た」と話す。
ソフトバンクは拒否した事実はなく「交渉中」としており、両社の主張は平行線のままだ。こうしたなかソフトバンクは格安スマホ事業者に貸し出す回線の接続料を来春から3割下げる検討に入った。電波という公共財の「開放」を迫られるなかでの判断だ。
世界で最も格安スマホが広がるドイツ。普及率は日本の3倍にあたる3割を超える。ドイツで事業を展開する英ボーダフォン現地法人の15年の携帯電話収入は前年より8000万ユーロ(約92億円)以上落ち込んだ。
寡占の宴の終幕がちらつき始めた日本の携帯市場。何も手を打たなければ、その先行きは大手の通信収入が細ったドイツの姿と重なっていく。
[日経新聞11月11日朝刊P.13]
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
(下) 「スマホの次」求め知恵比べ コンテンツか半導体か
「AT&Tは通信のゲームのルールを変える勝負に出た。うちと共通する」
10月22日に米通信大手AT&Tが米メディア大手タイムワーナー買収を表明した直後、ソフトバンク幹部は自社とAT&Tの選択の共通項をこう表現した。
タイムワーナーは幅広い映像コンテンツを取りそろえる。映画のワーナー・ブラザーズは「ハリー・ポッター」で知られ、ニュースではCNNが世界中に取材網を広げる。
AT&Tが9兆円近くの巨費を投じ、コンテンツを求めるのは、スマホ頼みのビジネスモデルが限界に近づいているからだ。米国のスマホ普及率は7割を超え、契約者数は頭打ち。新規顧客のフロンティアはほぼ消えた。
価格競争も激しくなっている。米携帯3位のTモバイルUSと4位のスプリントは大胆な低価格戦略を打ち出し、AT&Tなど上位の顧客を奪う。4〜6月期のTモバイルの新規契約件数(純増減ベース)は64万6千件増。AT&Tは18万件減と落ち込んだ。
「ビデオの未来はモバイルであり、モバイルの未来はビデオにある」。AT&Tのランドール・スティーブンソン最高経営責任者(CEO)の言葉の裏側には、携帯市場の飽和と価格競争に直面する現実がある。
米ではグーグルなど通信網を使いコンテンツを楽しむ舞台を握る「プラットフォーマー」と呼ばれる企業が安定収益を稼ぐ。AT&Tもコンテンツを握ることで通信インフラを「使う側」への転換を狙った。ベライゾン・コミュニケーションズによる米ヤフーのネット事業買収も同じ流れだ。
スプリントを傘下に持つソフトバンクグループの孫正義社長は日米で同時進行で起きる寡占の宴の終わりを実感している。だが、孫社長はAT&Tとは違う道のりを選んだ。半導体設計に特化する英アーム・ホールディングスの買収だ。
コンテンツ市場は華やかだが浮き沈みも激しい。ヒット作が出れば巨額の収入が転がり込むが、外れることも多い。
AT&Tによる買収では次期大統領に決まったドナルド・トランプ氏が難色を示すなど政治リスクも小さくない。
「(あらゆるモノがネットにつながる)IoT時代の頭脳となる半導体の根本を押さえる」(孫社長)方策はコンテンツを押さえにかかったAT&Tと比べ飛躍した戦略に映る。だが、水物のコンテンツの世界より安定収益が稼げる。半導体業界の黒子役のアームには政治リスクもない。
ポスト・スマホ時代をにらんだビジネスモデルの再構築は、ハイテク産業の未来を読む知恵比べの様相を呈してきた。
「通信会社からライフデザイン会社に変わる」。脱スマホ依存へ5千億円規模の買収資金を用意するKDDIの田中孝司社長はこう語る。
金融、物販など通信網を使う側に軸足を置こうとする姿はコンテンツに力を入れるという意味でAT&Tとモデルは重なる。
NTTドコモは2016年度にスマホの販売台数がマイナスに転じる見通し。「これからは映像の世界になる。有力なコンテンツをつくる相手と組み新しいモノをつくっていく」とドコモの吉沢和弘社長は話す。
だが、通信各社は縮むスマホを補う規模の収益を稼げる道筋までは描けていない。高収益の先の未来図はまだぼんやりしたままだ。
杉本貴司、大和田尚孝、大西綾が担当しました。
[日経新聞11月12日朝刊P.13]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民115掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。