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市場に冷や水をかけられたトランプ新大統領の、次の一手を予測する 日本はじっくり構えておけばいい
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50234
2016.11.18 長谷川 幸洋 ジャーナリスト 東京新聞・中日新聞論説副主幹 現代ビジネス
■皮肉な円安・人民元安
勝利に沸くトランプ次期米大統領に最初の冷水を浴びせたのは為替市場だった。ドル高円安である。首尾一貫しない政策が皮肉にも、敵視してきた日本や中国に思わぬ援軍になった形だ。さて、トランプ氏はどう出るか。
大統領選後の金融市場は大きく揺れ動いた。開票日11月9日(日本時間)の大勢判明直後、東京はじめアジアの為替市場では円が買われて、一時は1ドル=101円台のドル安円高をつけた。ところが、翌日は一転してドル高に振れ、その後は109円前後の円安基調が定着しつつある。
株式市場も同様だ。開票日は日経平均株価が大幅下落したが、その後はニューヨーク市場が連日、過去最高値を更新し、つれて東京市場も値を戻している。
当初はだれもが予想外の「トランプ・ショック」に慌てたが、次第に市場は冷静さを取り戻し「これは株もドルも買いか」と思い直した形である。
なぜ、ドルが買われたのか。
トランプ氏は減税と財政支出拡大を唱えている。選挙戦で法人税は35%から15%に、個人所得税も39.6%の最高税率を33%に下げると訴えた。公共事業についても道路や橋、トンネルなどインフラ整備に10年間で1兆ドルを支出すると公約した。
さらに米軍も陸海空、海兵隊とも強化拡充する。軍事支出は公共事業と同じく経済を刺激する効果がある。金融市場はこうした減税と財政支出拡大の組み合わせが財政を一段と悪化させると読んで、国債を売り長期金利が上昇した。
もともと12月には連邦準備制度理事会(FRB)が懸案の利上げに踏み切るという見方があったところへ、長期金利の上昇で環境が整い、一段と利上げ観測が強まった。となると「財政拡大+金融引締め」のポリシー・ミックスは一層、典型的な金利上昇を招く。教科書通りである。
投資家からみれば「米国に投資すれば高利回りが得られる」と期待できるので、世界の投資マネーが一斉に米国に向かった。その結果がドル高円安である。為替安になったのは日本だけではない。中国も、だ。人民元は16日に8年3ヵ月ぶりの元安になった。
円安や人民元安は日本や中国の輸出にプラスである。だが、トランプ氏は選挙戦で「中国には45%の関税を課す」とか「日本が米国の牛肉に38%の関税をかけるなら、米国も日本の自動車に38%の関税をかける」などと訴え、両国からの輸出をけん制していた。
日本や中国からの輸出を抑えたいのがトランプ氏の本音なのに、実際に為替市場で起きたのは円安と人民元安であり、むしろ輸出増に追い風になっているのだ。
■二つの見方
こうした動きについて、市場の見方は2通りある。まず「減税とインフラ整備は公約の柱だから、いまさら引っ込められない。したがって市場原理に基づく金利上昇は避けられず、ドル高も定着する」という見方だ。
これに対して「ドル高を放置すれば米国の輸出に打撃になる。そうなればトランプを支持した中西部の工場労働者たちが黙っていないから、いずれドル高修正に動かざるをえないだろう」という見方もある。
私がどちらをとるかといえば、前者だ。
■矛盾した政策
なぜかといえば、一口にドル高修正と言っても、簡単ではない。もともとトランプ氏は中国を為替操作国と非難しているくらいだから、政府や中央銀行がおおっぴらに相場介入するわけにはいかない。
背に腹は代えられず介入してみたところで、米国だけで為替を思うように動かせるわけでもない。いまや為替市場の規模が大きすぎるからだ。何が何でも力づくでとなれば、それこそ1985年のプラザ合意のように主要国が合意して協調介入するような大げさな話になる。
残念ながら、そんな介入を演出できるほどトランプ政権が主要国に求心力を持つとは思えないし、そもそも米国自身にも力がないのが現実である。
介入に頼れないなら、ドル安に誘導するには経済学のセオリーにしたがって、財政金融政策のポリシー・ミックスを金利低下方向に修正するしかない。すなわち「財政引き締め+金融緩和」である。
だが、そうなれば公約である減税とインフラ整備は不可能になる。
つまり、いま何が起きているのかといえば、「減税とインフラ整備で景気を良くしよう」という公約と「日本や中国の輸出ラッシュを止めよう」という公約が互いに矛盾しているのだ。
■日本はじっくり見ていればいい
どちらを優先するのかといえば、それは「景気を良くしよう」という方だろう。なぜかといえば、日本や中国からの輸出を減らしたところで、人々の暮らしが良くなるわけではないからだ。むしろ困るのは米国の産業界ではないか。
中国は早くも「中国製品に45%の関税をかけるなら、米国のボーイング社ではなく欧州のエアバスを購入する。iPhoneも打撃を受けるだろう」(環球時報)と恫喝している。
iPhoneは背面に小さな文字で記されているように、中国で組み立てられている。中国はiPhoneを買わないだけでなく、いざとなったらiPhoneの製造自体をけん制する嫌がらせだってできる。困るのはアップルなのだ。
結局、減税と財政支出拡大の公約は取り消せない。貿易問題は環太平洋連携協定(TPP)の扱い、あるいはTPPなき後の扱いも含めて後回しになるだろう。
トランプ氏は選挙戦で威勢のいいことを言い続けた。だが、勝利から1週間余りでたちまち政策の綻びが見え始めた。日本としては、天から降って湧いたような幸運な円安である。TPPの見通しが立たなくても、現状を維持するだけだ。
ここしばらくは慌てず騒がず、じっくりトランプ氏の出方を見ていればいい。
ただ、やがてTPP離脱を含めて貿易問題で本格的な保護主義政策が始まるようなら、ドル高がドル安に反転する可能性は高い。米国経済の中長期的な先行きが怪しくなるからだ。来年1月の就任式後は円高を警戒する必要がある。
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