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宝の持ち腐れいつまで、使えば輝く日本の潜在力−ヒト・モノ・カネ
高橋舞子
2016年11月17日 06:00 JST
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• 能力高い女性や高齢者の労働力活用−基礎能力は世界でトップクラス
• 技術力や生産性向上へ改革を−企業の内部留保も潤沢、融資に余裕
日本は経済成長に向けた高い潜在力を持っている−。そんな指摘がある。人口減に伴う内需縮小が懸念される中、能力の高い女性や高齢者の労働力を活用し、豊富な資本を元手に持ち前の技術力でビジネスを拡大し、何十年も改善していない生産性を向上させれば、急成長が期待できるとの見方だ。
スマホを操作する女性(銀座)
Photographer: Akio Kon/Bloomberg
経済協力開発機構(OECD)の村上由美子東京センター長は2日のインタビューで「経済活動をするなかで、とても重要な基本条件がヒト、モノ、カネだ」と説明。日本にはこれらの素材がそろっているとした上で、経済成長に向けた「伸び代と言う意味では、日本が1番あってもおかしくない。伸びるための潜在的な余力がある」と話した。
隠れた人材
村上氏がまず挙げるのは基礎能力が抜群に高い女性の社会進出だ。24カ国・地域に住む16−65歳の男女を対象に実施したOECDの調査によると、日本の女性は数的思考力で282点、読解力で295点を獲得し、いずれも参加国中トップだ。
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しかし、高等教育を受けた日本の女性の就業率は低い。OECDの「図表で見る教育」によると、高等教育を修了した25−64歳の男性は93%と平均の88%を上回る一方、女性は72%と平均の80%を下回っている。
日本の女性は結婚後、出産・育児に手がかかる30ー40歳代で職場を離れ、賃金の低いパートタイムで戻るケースが多い。出産後も仕事を続ける女性は増加傾向にあるが、同世代の女性の就業率が落ち込む「M字カーブ」を描く現状は変わらない。
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OECDの調査では、女性と同様に調査対象の最高齢となる55−65歳の年齢層でも、日本は読解力と数的思考力でいずれも1位だった。しかし、多くが55歳以上で定年を迎えることから就業率は急激に下がる。村上氏は高齢化が進み、生産年齢人口が減少する日本にとって隠れた人材の活用が不可避とみる。
日本の高齢者は他国に比べて勤労意欲も高い。米国、スウェーデン、ドイツ、日本の4カ国で実施した内閣府の調査によると、「今後も収入の伴う仕事をしたい」と答えた高齢者は日本が44.9%と一番多かった。理由は「収入がほしい」が49%、「体に良いから」が24.8%、「仕事が面白いから」が16.9%の順番だった。
「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」内閣府
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技術力と生産性
世界知的所有権機関(WIPO)によると、14年の特許取得件数で日本は1位となる29万7251件を記録。2位の米国(25万6047件)を大きく引き離した。3位は中国(17万6398件)だった。特許庁によると日本の出願件数も3位だ。
しかし、必ずしも製品化につながっていない。OECDによると、新商品を市場に導入した企業割合は、製造業で12.7%、サービス業では6.4%にとどまっている。村上氏は「日本にはイノベーションの種はたくさんある。ただ、アイデアを商品化するのにもリスクがいる」とし、リスクを取りやすい環境整備が重要だと言う。
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生産性もしかり。日本生産性本部によると、1970年から2014年まで、日本の時間当たり労働生産性は主要7カ国(G7)の中で一貫して最低だ。OECD加盟国の中では、日本は21位(14年)と低位に甘んじている。長時間労働がまん延し、週50時間以上働く雇用者の割合は日本が22.2%とOECD平均の12.51%を上回った。
内部留保
村上氏が人件費をはじめ、技術力や生産性を高めるための資金源として注目しているのが日本企業が抱える膨大な内部留保だ。財務省の法人企業統計によると、内部留保に当たる国内企業の「利益剰余金」は年々増加。15年度には378兆円に上った。
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日本銀行の資金循環統計(16年4−6月期)によると「民間非金融法人企業」が保有する現金・預金は242兆円に上る。さらに貸出・預金動向(10月速報)では、銀行の預金残高と貸出残高の差額が218.5兆円と、融資余力の大きさを示している。
資金を借り入れる際の金利も下がっており、企業が積極的に投資する環境も整っている。日本銀行によると、主要行の長期プライムレートは1月にマイナス金利の導入を決定して以降、1桁を割り込み、8月10日時点で0.95%となっている。
村上氏は「お金があるのに回っていない。マイナス金利でお金はあるはずだが、投資やリスクマネーに向かっていない。これは仕組みの問題だ」と指摘。その上で、「日本の1番の課題は、持ち腐れとなっている宝を結果につなげるための仕組みをいかに構造改革で作っていくかだ」と述べ、痛みを伴う構造改革の必要性を訴えた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-16/OGMD026K50XW01
コラム:トランプ相場の賞味期限と円安余地
鈴木健吾みずほ証券 チーフFXストラテジスト
[東京 17日] - 正直、その奔放な言動と過激な政策などから共和党ドナルド・トランプ候補が当選した場合には金融市場のリスクオフ反応を予想していた。しかしこれまでのところ、トランプ氏が過激な政策の微修正や大統領職に真摯に向き合う姿勢を示していることで、期待がリスクに対する警戒感を上回る状況となっているようだ。
大統領選後1週間の値動きにはさすがに過熱感が強いものの、市場は金利上昇、株高、ドル高で反応し、ドル円は1ドル=110円を目指す動きを見せている。
筆者はこれまで一貫して、1)リスクの後退、2)テクニカル的な過熱感、3)ファンダメンタルズの見直し、の3つを理由に年末にかけて105円から110円程度の水準へ上昇する展開を予想してきた。今回の大統領選の結果そのものは想定外だったものの、市場がこれをリスク後退と認識したことで、ドル円の動きとしてはおおむね予想通りの展開となっている。年末にかけての予想がほぼ現実化したなか、視線をその先、来年前半にかけての相場に移していきたい。
<ドル押し上げ要因を打ち消す要注意リスク>
相場の方向には上昇と下降、そして横ばいの3つがあるが、基本的に来年半ばにかけては、横ばい・もみ合い・レンジ相場といった展開を想定している。この見通しについても「リスク」「テクニカル」「ファンダメンタルズ」が重要だ。
原油価格の急落や中国経済の急減速観測など、今年前半にかけて先鋭化したいくつかのリスクが緩和されたことがリスク回避の円高圧力を和らげ、ドル円上昇の1つの要因になったと考えているが、来年前半にかけてはまだ警戒すべきリスクがくすぶっている。
例えば、11月30日に予定される石油輸出国機構(OPEC)の総会で原油減産の話し合いが決裂するリスクがある。昨年も年末のOPECでの減産合意見送りをきっかけに原油価格が急落した経緯は記憶に新しい。
12月4日にはイタリアで憲法改正に関する国民投票が行われる。レンツィ首相はこれに政治生命をかけるかのような発言しており、否決された場合には首相辞任や解散総選挙の可能性が視野に入る。この場合、反欧州連合(EU)を掲げる政党の躍進などを含め政局の不透明感が高まるだろう。また、同日にはオーストリア大統領選挙も実施される。ここでも反EUを掲げる極右政党が勝利する可能性が指摘される。
12月14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げが行われると見ているが、万が一、見送られればドル円の急落を誘うだろう。加えて来年序盤にかけて警戒が必要なのがトランプ氏の言動と英国のEU離脱問題だ。
前述の通り、大統領選後、トランプ氏が奔放な言動を封印していることが好感されているが、「選挙戦で見せた奔放な姿こそが本性ではないか」との懸念が常に脳裏をよぎる。来年序盤にかけて閣僚人事決定や就任式、一般教書演説などの重要イベントが控えるが、現状、期待で大きくリスクオンに振れた分、その言動次第では大きく巻き戻される可能性には警戒が必要だ。
また、英国のEU離脱も要注意だ。メイ首相は来年3月までにEUに対して離脱を通知するとしたが、高等法院は11月、離脱の通知には議会の承認が必要との判決を行い、英国政府が最高裁に上訴している。この判決が1月にも出る予定だ。
議会承認が必要となれば、政府が経済的な損失を度外視してEU離脱に突き進む「ハードブレグジット」の可能性が低下する。他方、承認必要なしということになれば拙速な離脱に対する警戒感が高まるだろう。
後退していくリスクがドル円の押し上げ要因となる一方、このような要注意リスクが頭を押さえ、結果としてドル円の上下の方向性は限定的となるだろう。
<1ドル102―112円のレンジ相場へ>
テクニカル的な動きに関しては先月のコラムでも言及したが、2012年以降の値動きを振り返ると、半年以上にわたって値幅20円以上もの一方的なトレンドが続いた場合、その後、半年程度は横ばいの動きが見られている。
短期間の大幅な為替相場の変動を実体経済が織り込み、消化するために相応の時間がかかるためではないかと考えているが、今回も昨年末から約24円もの円高を実体経済が消化するなかで、ドル円相場は来年序盤にかけて、もみ合い・横ばいといった状況になるのではないか。
ファンダメンタルズ面もドル円の方向感を醸し出すには決め手に欠きそうだ。米国では緩やかな景気回復が継続しているが、今後は景気回復局面も後半戦入りが明らかになっていくだろう。米連邦準備理事会(FRB)も、利上げを模索しつつも非常に緩やかなペースで進めるとのスタンスは崩すまい。
トランプ氏の政策も、国内産業を重視する姿勢がドル安要因である反面、米企業に海外からの資金回帰を促す税制の導入などはドル高要因であり、ドル円の方向に与える影響についてはすぐには判断が難しいだろう。
日本サイドにおいても、円高要因とされる経常収支の増加がじわりと継続している一方で、対外証券投資による円安圧力も強まっている。日銀は9月の金融政策枠組み変更後、持久戦の構えを見せており、必要ならば躊躇(ちゅうちょ)しないとしつつも、目先、追加緩和に対しては腰が重いだろう。
このようにリスク動向、テクニカル、ファンダメンタルズなどからドル円相場は来年半ばにかけて横ばい・もみ合いの展開を想定している。具体的には1ドル=106―107円近辺を中心に、102―112円程度のレンジ相場となるのではないか。
*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-kengo-suzuki-idJPKBN13C0S3?sp=true
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