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カジノ誘致に異変、なぜ横浜と和歌山が最有力に浮上?東京と大阪は大きく後退
http://biz-journal.jp/2016/11/post_17195.html
2016.11.17 文=小川裕夫/フリーランスライター Business Journal
訪日外国人観光客が増加の一途を続けるなか、政府は観光立国を目指して邁進している。その目玉ともいわれるのが、日本国内でカジノの開設を可能にするIR(統合型リゾート)推進法案だ。
IR法案はこれまでにも何度も国会に提出されてきた。成立確実といわれながら安全保障法案などを優先したために、成立は見送られてきた。今国会でもIR法案は提出され、今度こそ成立するとも囁かれている。IR法案が見送られてきた背景には、国民の間には「カジノ=賭場」のイメージが強くあり、それを国会議員たちも警戒しているからだ。
カジノを大阪に誘致しようと躍起になっていた橋下徹市長(当時)は、「カジノはギャンブル場ではなく、富裕層の社交場」と繰り返し訴えてきた。富裕層の社交場と形容すればギャンブル色は薄まり、支持を得られるという認識があったのだろう。
橋下氏がカジノを推進する理由は、大阪の経済が停滞するなかでカジノを大阪再生の切り札にしようと考えていたからだ。橋下氏は表面上、市長退任後に政界から引退としている。しかし、同志・松井一郎大阪府知事をはじめとする「大阪維新の会」の面々や後継の吉村洋文市長などは、現在でもカジノを積極的に誘致しようとしている。
IR法案が成立すれば、早急にカジノをどこに開設するのかを選定する作業が始まるだろう。いや、すでに水面下では各都市間でカジノ誘致をめぐる綱引きは始まっている。
■熱が冷める東京
IR法案が議論される以前、最有力候補地といわれていたのは東京と沖縄だった。もともと、東京都はカジノに積極的で、石原慎太郎都知事(当時)は都庁内に模擬カジノをつくり、プレイベントを開催するほど熱を入れていた。
2014年に舛添要一都知事が誕生すると、東京都はカジノに対して消極的な姿勢に転じた。そうした東京都の豹変について、都庁職員はこう話す。
「石原都政下で盛り上がったカジノ構想は、お台場に用地も確保されていますが、舛添都政ではギャンブル依存症や犯罪の温床になる危険性といった負の部分をきちんと検証することになりました。東京都は積極的にカジノを推進している立場のように思われていましたが、現在は慎重な立場になっています」
カジノに懐疑的だった舛添氏の影響もあって東京はカジノレースから後退。舛添氏が辞任し、今年から新たに就任した小池百合子都知事は築地市場の豊洲移転や東京五輪の問題に忙殺されているので、とてもカジノまで手は回らない。そのため、小池都政下における東京都のカジノへのスタンスは現在のところ不明だ。
しかし、東京五輪後も引き続き、訪日外国人観光客を日本経済の牽引役として期待する地方都市は、東京がカジノ推進の動きを止めている間に、「わがまちにカジノを」と号令をかけて巻き返しを図っている。
■横浜が最有力か
現在、カジノ有力候補地として台頭しているのが神奈川県横浜市だ。横浜市は安倍内閣の陰の実力者・菅義偉官房長官の地元という強味を生かし、横浜財界はカジノ誘致を菅官房長官に働きかけてきた。そうした働きかけが実り、横浜市はカジノ最有力候補地と目されている。
横浜にカジノが開設されることになったら、カジノの運営業務を担おうと、東京―横浜間に路線を有する京急は色めき立っていた。しかし、京急の思惑は大きくはずされる。
「横浜がカジノ誘致に成功した場合、運営事業者をはじめ周辺のレストラン、駐車場、警備などの業務が発生します。横浜財界の首脳たちは、これらの業務すべてを横浜の企業で賄う考えです。カジノの甘い汁を横浜以外には吸わせない。だから、横浜財界関係者は、横浜以外の企業にカジノ関連業務に参入させないと息巻いています」(業界紙記者)
仮にカジノ関連業務に横浜以外の企業を参入させてしまったら、横浜財界首脳のメンツは丸潰れになる。求心力の低下は避けられないだろう。だから、カジノの運営や関連事業は横浜の企業だけで回すと、縄張りを意識させるスタンスを貫いているのだ。
そうした強硬な横浜財界の姿勢に、慌てたのが京急だ。京急は平和島ボートレース場を運営するなど、カジノ運営のノウハウも持ち合わせている。それだけに、横浜にカジノが開設されることに大きな期待を寄せていた。
ところが京急は本社を品川に構えており、横浜の企業ではない。このままでは、カジノに参入できない。幸運にも品川の京急本社は再開発エリアにも指定されており、新社屋建設の話も出ていた。京急はカジノに参入することも含め、19年までに本社を横浜に移転させる計画を発表。横浜の企業になることを表明し、カジノの参入にも含みを持たせた。
■なぜ和歌山が浮上?
そんななか、カジノ候補地の2番手を走っていた大阪市でも異変が起きている。大阪市が有力候補地とされてきたのは、橋下氏が官邸との太いパイプを持っていたからだ。曲がりなりにも橋下氏が政界から去ったことで、大阪市は誘致レースから大きく後退。大阪市に代わって、和歌山案が急速に有力視されるようになった。
なぜ、和歌山なのか。和歌山が急浮上しているのは、自民党の実力者である二階俊博幹事長の影響力が反映されたものだと関係者たちは口を揃える。
「横浜財界の関係者たちは、カジノ誘致で二階詣でをしています。その際、『カジノは横浜と和歌山で』といった話も出ているようです」(前出・業界紙記者)
神戸や京都といった観光地を抱える関西地方のなかで、全国的に見れば和歌山は地味な存在と思われるかもしれない。しかし、和歌山は関西空港からの便も悪くなく、南紀白浜のようなリゾートも抱えている。昨今は訪日外国人観光客も増加しており、特に熊野古道は根強い人気を誇っている。それだけに行政関係者たちから、和歌山は訪日外国人観光客を呼べる観光地の優等生とも称される。「カジノを和歌山へ」は、決してあり得ない話ではない。
いくらIR法案が成立したからといって、無尽蔵にカジノが開設されるわけではない。カジノが乱立してしまったら共倒れになる。政界もカジノを開設する都市選びには慎重になっており、関係者の間では、「当面は2カ所」ともいわれている。
カジノが和歌山に決まったら、距離的に近い大阪にカジノは難しくなる。現在、和歌山のどこにカジノを開設するのかといった具体的な地名は浮上していないが、大阪を脅かす大きな存在になっているのは間違いない。カジノ構想が潰えれば、カジノをテコにして大阪経済の再生を訴えてきた橋下氏と大阪維新の会の思惑は大きく外れることになる。
IR法案の国会提出で、再び動きだしたカジノ誘致合戦。勝利をもぎ取るのは、どこの都市なのか。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)
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