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11月15日、金融市場の動きが二分されている。先進国株が上昇する一方、新興国株は軒並み大幅安。債券価格も急落している。大規模な財政出動を期待する「トランプ相場」がきっかけだが、大きな背景には金融相場の終えんがある。写真はニューハンプシャー州で10月撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)
「トランプ効果」で分断される世界の市場、金融相場の終えん示す
http://jp.reuters.com/article/trump-market-idJPKBN13A0QM
2016年 11月 15日 17:05 JST
[東京 15日 ロイター] - 金融市場の動きが二分されている。先進国株が上昇する一方、新興国株は軒並み大幅安。債券価格も急落している。大規模な財政出動を期待する「トランプ相場」がきっかけだが、大きな背景には金融相場の終えんがある。先進国の超金融緩和が転換点を迎え、財政拡大期待をベースにした業績相場に移行。どの資産市場も同じような動きをする金融相場は、過去の残影となっている。
<政策期待先行で資金シフト>
先進国と新興国の株価が、大きくかい離している。米ダウ.DJIが過去最高値を更新したほか、日経平均.N225も9カ月ぶりの高値圏に上昇。一方、ブラジルやインドネシア、フィリピンなどの主要株価は米大統領選から1週間で4─9%下落している。
株式と債券価格の二極化も激しい。好調な先進国株に対し、米国債など先進国の債券には売りが殺到。債券価格は急落し、米国の10年国債金利US10YT=RRは2.3%に上昇。1週間で0.5%ポイントの急上昇となり、昨年12月の米利上げ前の水準に達している。
市場二極化の1つの要因は、トランプ次期米大統領による、大型の減税やインフラ投資など財政拡張政策への期待だ。米経済の押し上げ期待から株式市場には資金が流入する一方、国債増発による財政悪化懸念から米国債からは資金が流出。米金利上昇とドル高で、新興国からの資金流出懸念が高まっている。
ただ、10年物米BEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)USBEI10Y=RRは2013年のピーク比で7割程度。「具体策が見えない中では、財政拡大、景気浮揚、インフレ高進といった期待が高まっているわけではなく、あくまで期待先行」とHSBC証券東京支店のグローバル・マーケッツ債券営業本部マクロ経済戦略部長、城田修司氏は話す。
<投資家には運用しやすい環境に>
「トランプ相場」が始まる前は、先進国株と新興国株、または株式と債券が同方向に動く金融相場だった。先進国を中心とした超金融緩和政策を背景に、極端なカネ余り相場が発生。市場を動かすドライバーは金融緩和に絞られ、追加緩和の有無に一喜一憂し、各市場が同じように資金の流出入を繰り返していた。
しかし、昨年12月に米国が10年ぶりの利上げに踏み切り、「金融緩和クラブ」からいち早く脱会。欧州や日本は金融緩和を続けているが、市場では限界説も根強い。OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)にみられるように、追加緩和はしばらくないとの見方が、市場では強まっている。
世界の金利は今年夏を底に徐々に上昇。金融相場はその終わりを迎えようとしていたが、「トランプ大統領」の誕生で、金融政策から財政政策へ政策の軸が一気にシフトしたと市場は受け止めたようだ。
本来、株式と債券(価格)は逆相関関係にある。株式と債券が逆方向に動き始めたのはある意味、正常な姿に戻ったとも言える。
「投資家にとっては、運用しやすい環境になった。上がる市場と下がる市場が出てきたことで、分散投資やヘッジがしやすくなるためだ。特に金利が上昇したことで、国債を選択肢に入れることができるようになったことは大きい」と、JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は指摘する。
<相場の逆回転を警戒>
この「分断相場」の今後を考える上でのキーポイントは、米経済もしくは米資産市場が、今の金利上昇とドル高にいつまで耐えられるかということだ。
米経済は、先進国で唯一、追加利上げを視野に入れているだけあって、ファンダメンタルズは堅調だ。しかし、米連邦準備理事会(FRB)が当初年4回を視野に入れていた利上げを11月半ばになっても、1度もできていないのも事実。量的緩和で膨らんだFRBのバランスシートが維持されているなど、弱さもはらむ。
トランプ次期大統領が掲げる減税や財政拡張政策が効果を発揮するのは、早くても2017年後半から。一方、米金利上昇とドル高は先行して始まっている。財政赤字や債務上限問題から財政の規模が小さくなりそうだとの見方が強まれば、タイムラグによる悪影響が市場で警戒される可能性もある。
財政出動の規模が小さいとみられれば、米株は反落。米金利が低下するなかでドル安・円高が進行すれば日本株の売り材料となる。その半面で、新興国の通貨と株式が反発するという、今の相場とは正反対の動きが起きかねない。新大統領や新財務長官からの「ドル高」けん制発言も警戒される。
「新しい産業を振興したり、民間が取れないリスクを取るなど賢い財政の使い方をすれば、米国の潜在成長率を引き上げることができる」(ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏)という。ただ、それが判明するには時間がかかる。期待と失望が交錯するなかで、各市場間でマネーが行き来する展開が続きそうだ。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
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