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トランプ大統領誕生にウォール街がほくそ笑む理由 やっぱり強者の味方なの?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50203
2016.11.15 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■金融街はお祭り騒ぎ
ドナルド・トランプ氏が大番狂わせで米国の次期大統領に決まったことに対して、米国内はもちろん世界各地で抗議デモが催されたり、カルフォルニア州の独立を求める動きが表面化するなど、大混乱が続いている。
そうした悲壮感に満ちた混乱とは対照的に、ビジネスの世界には飛び上がらんばかりの喜びを隠せない企業群がある。
選挙戦が終わった途端、「反ウォール街」だったはずのトランプ陣営から秋波を送られている名門投資銀行や、地球温暖化対策の煽りで廃業寸前だった石炭、石油、シュールガスなどのエネルギー企業、そして、民主党のヒラリー・クリントン候補が勝っていれば薬価の引き下げ圧力に見舞われたはずの医薬品メーカーだ。
トランプ氏の翻意を、新大統領の柔軟性を示すものと好意的に受け止めるのは困難だ。トランプ大統領誕生の原動力になった白人貧困層の不満を増幅するリスクや、世界的な温暖化ガスの排出削減の枠組みであるパリ条約を台無しにする危険を伴うからである。
世界に怒りと不安の渦を残す選挙戦略を展開しただけでも罪深いのに、支持者を騙すことにもなりかねないトランプ氏の政権引き継ぎ作業の最新状況を点検しておこう。
驚かざるを得ないのは、米国株相場の急伸ぶりだ。大番狂わせのトランプ氏勝利が、見過ごされていた企業の株高の可能性に賭けるトランプ・ラリー(活況相場)を呼び、先週末(11月11日)のニューヨーク株相場(ダウ平均)は5日続伸となった。
この間、ダウ平均は2日連続で過去最高値更新し、週間上げ幅は959ドルで過去最大の更新といったおまけも付いた。
このニューヨーク株の急騰に振り回されたのが日本株市場だ。9日の東京市場は、トランプ氏が大番狂わせで勝利を収めると米国で保護主義的な通商政策が強まりかねないとの懸念(トランプ・リスク)にストレートに反応。全面安の展開で、日経平均株価(終値)が前日比919円安と、今年2番目の下げ幅に達した。
ところが、同日のニューヨーク株高を見て一転、翌10日の日経平均は前日比1092円高と急反発して前日の急落分を埋めたのだ。ちなみに、10日の日経平均の上げ幅は今年最大でもあった。
■どの発言が株価上昇につながったのか
震源地と言うべきNYでは、トランプ氏が勝利を収めた9日から3日間のトランプ・ラリーの上げの主役が微妙に変化していた。
9日と10日に先行して株価を上げたのは、トランプ氏が選挙期間中の10月22日にペンシルベニア州ゲティズバーグで公表した「有権者との契約」などで公約した施策で恩恵を享受しそうな企業である。
ちなみに、「有権者との契約」は、大統領就任日に、北米自由貿易協定(NAFTA)の「再交渉か離脱」、環太平洋経済連携協定(TPP)からの「離脱」を宣言するほか、就任から100日以内に10の法的措置を講じるというものだ。
法的措置の中には、年間4%の経済成長と2500万の新規雇用を創出するための所得税、法人税(連邦法人税率の35%から15%への引き下げ)の減税法案や、向こう10年間で1兆ドルを超すエネルギー・インフラ投資の促進法案などが含まれている。
実現すれば、オバマ政権が進めてきた化石燃料から再生可能エネルギーへの移行がとん挫し、死に体になっていた石油、石炭、シェールガス関連企業が息を吹き返す可能性があるほか、インフレ関連企業が絶好の収益機会に恵まれる可能性がある。
そこで、インフラ投資拡大のメリットを享受しそうな建機大手キャタピラー、鉄鋼のUSスチール、エネルギー政策の先祖返りで経営が安定する石油メジャーのエクソン・モービル、シェブロンといった企業の株価が2日連騰した。
米石油協会のジャック・ジェラルド会長は10日付の声明で、トランプ氏と議会共和党の選挙戦勝利を歓迎する意向を表明した。
また、ちょっと変わったところでは、ファイザーやメルクといった医薬品メーカーも9、10日の株価上昇が大きかった。この2社は、薬価引き下げを広言していたクリントン候補が敗れたため、収益環境の悪化を避けられると見直されたらしい。
■選挙向けの方便?
一方、上げ一服感から反落する企業が少なくなかった中で、11日も株価を上げ続けたのが、ウォール街の名門投資銀行であるゴールドマン・サックスとJPモルガン・チェースの2社である。
特にゴールドマン株は11日までの3日間で22ドル02セント高(終値203ドル94セント)と1割以上も値を上げた。ゴールドマン株が200ドルの大台を回復するのは1年3か月ぶりのことである。リーマンショック後、大手証券のメリルリンチを救済合併したバンクオブアメリカも3日連騰を記録した。
こうした金融株急騰の背景には、トランプ氏が当選した途端、「反ウォール街」から「親ウォール街」に何のためらいもなく翻意したことがある。
トランプ氏は、レッドネック(貧困層の白人労働者)の格差拡大に対する不満票を囲い込むため、クリントン氏と競うように「反ウォール街」路線を掲げていた。
ところが、選挙に勝って政権移行チームを発足させた途端、「ウォール街の顔」であるJPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)、リーマンショックの反省から生まれた「ドッド・フランク法」(金融規制改革法)の廃止を推進してきたジェブ・ヘンサリング下院金融サービス委員長、ゴールドマン出身でトランプ陣営の財務責任者を務めたスティーブン・ムニューチン氏らを新政権の最重要経済閣僚(財務長官)候補とし 、ウォール街との関係改善を目指す姿勢を明確にしたのだ。
反ウォール街は選挙向けの方便で、水面下ではウォール街と手を握っていたと、邪推されたくないのだろう。JPモルガンの日本法人では、「当社幹部は閣僚ポストのオファーをきっぱり断った」と顧客への釈明に躍起になっていると聞く。
トランプ氏の財務長官選びは誰に決まるかは予断を許さないが、選挙期間中の「反ウォール街」発言とは真逆の人事構想が露呈したことで、リーマンショック後の連邦政府との冷戦状態にピリオドが打たれると期待するウォール街関係者は少なくない。その期待感が、ウォール街の株価急騰の原動力になっているのが現実だ。
問題は、トランプ氏の進める減税や投資優遇が期待されたほど低所得者層の生活改善に繋がらなかった時に、同氏を支持した有権者が騙されたと新たな不満を募らせることである。
■地球温暖化には無関心?
さらに、より現実的な問題となっているのが、トランプ大統領の誕生で国際的な地球温暖化対策が骨抜きになるリスクだ。
米調査会社ラックスリサーチによると、トランプ政権が2期8年続くと、クリントン氏が政権を取った場合に比べ、温室効果ガスの排出が34億トン増えるという。これは、日本全体の年間排出量(2012年が13.4億トン)の2年半分に相当する膨大な量である。
トランプ氏は、米国を含む196カ国・地域が昨年末に合意した、2020年以降の温暖化対策「パリ協定」からの離脱も宣言している。
同協定には、批准国が4年間離脱できない規定があるというが、米国は温暖化ガスの排出量で世界第2位の排出大国だ。トランプ政権が削減の約束を一方的に反故にすれば、協定そのものの実効性を巡る議論が再燃することは避けられない。
米国の温暖化防止協定からの離脱は、京都議定書に続いて2度目となる。そもそもパリ協定には、温暖化ガス排出量で世界1位という重い責任がありながら、「2030年からの自然減少」という目標しか掲げず、何もしない方針を押し通している中国問題もある。
これ以上、2大排出国が無責任な態度をとるようでは、温暖化ガスの排出削減の実効は上がらず、パリ協定が空中分解してもおかしくない。
パリ協定に加えて、世界経済から成長手段の一つである通商を奪いかねないNAFTAやTPPからの離脱も、トランプ氏の掲げる「米国第一主義」が米国自身の利益を損ねて自滅に繋がりかねない欠陥政策だ。
ドッド・フランク法に行き過ぎがあり、ある程度の軌道修正が必要なことは筆者も同意するが、同じ翻意するのならば、「反ウォール街」から「親ウォール街」に翻意するより、パリ協定、NAFTA、TPPに関する離脱方針を翻意する方が、はるかに有意義である。
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