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日本が財政破綻から逃れるためには(大前研一氏)
財政破綻を避けるには「平成の徳政令」を出すしかない
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161114-00010001-moneypost-bus_all
週刊ポスト2016年11月18日号
日本銀行と政府が「政策総動員」のアベノミクスを展開したものの、現状、大きな効果は出ていない。黒田東彦総裁が打ち出した異次元金融緩和の期間はすでに3年半を超え、太平洋戦争の3年9か月より長引くのは確実で、日銀はかつての日本軍と同じ轍を踏んでいるのではないか──経営コンサルタントの大前研一氏はそう批判している。財政危機から破綻への道を避けるためには、何が必要なのかを大前氏が解説する。
* * *
安倍晋三首相はプライマリーバランス(基礎的財政収支)の2020年度黒字化を目指すと表明しているが、消費税率10%への引き上げを2019年10月に延期したことで完全に不可能となった。このままでは財政危機から財政破綻に向かうことが確実なのに、出てきたのは事業規模28兆円の実効性なき経済対策だ。
戦時中の日本とのアナロジーは他にもある。新聞をはじめとするマスコミが、安倍政権の過ちを正面切って批判していないことだ。多少の批判はしていても解説や説明が中心で、大々的に批判の論陣は張っていない。あたかも戦時中の「大政翼賛」のような状況で、アベノミクスを批判して増税や財政再建を主張すると「お前は景気を腰折れさせる気か」と“非国民”扱いをされてしまう。
つまり、現在の日本は安倍一強体制下の全体主義国家のような状態であり、たとえ安倍首相が間違っていると思っても異論を差し挟むことはできない、という空気に覆われているのだ。
だが、今の日本の財政状況は、太平洋戦争で言えば、すでにミッドウェー海戦の段階を過ぎているかもしれない。今後、ガダルカナル撤退からインパール作戦、サイパン玉砕、本土空襲、沖縄戦、原爆投下へと向かい、最後は焼け野原──すなわち国債のデフォルトかハイパーインフレになってしまうだろう。
最悪の事態を避けるためには、政府が“平成の徳政令”を出して国の借金を一気に減らすしかないと思う。具体的な方法は、価値が半分の新貨幣の発行である。今の1万円が5000円になるわけだ。
そうすれば、1700兆円の個人金融資産が半分の850兆円になるので、パクった850兆円を国の借金1053兆円から差し引くと、残りは200兆円に圧縮される。200兆円はGDPの40%だから、デフォルトの恐れはなくなる。そこから“生まれ変わって”仕切り直すしか、この国の財政を健全化する手立てはないと思うのである。
その場合、徳政令はある日突然、出さねばならない。そして徳政令を出した瞬間に、1週間程度の預金封鎖を発動しなければならない。そうしないと、日本中の金融機関で取り付け騒ぎが起きてしまうからだ。
当然、徳政令を出した政権は倒れるが、これは安倍首相くらい強い権力を持っているリーダーにしかできないことである。総裁任期を3期9年に延長するのは“戦後処理”まで買って出ようということだから、その覚悟の安倍首相に私は一縷の望みをかけているのだが、補正予算を連発する危機感のない弛みきった財政運営を見ていると、残念ながら、それはやはり「ないものねだり」のようである。
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