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人口が減っているはずの多摩地域でマンション価格が上昇している理由
http://nikkan-spa.jp/1184817
2016.11.14 日刊SPA!
1920年の調査開始以来、初の人口減少に転じた2016年(総務省統計局調べ)。特に首都圏では、戦後の高度経済成長期を支えた多摩地域をはじめとした郊外の衰退が叫ばれて久しい。
日刊SPA!では、田園調布や聖蹟桜ヶ丘など、かつてはセレブタウンとして羨望のまなざしで見つめられていたエリアの衰退をレポートしたばかりだ。
◆多摩エリアは駅前だけが栄え続けている
立川駅
だがその実態を具体的に観察すると、多摩地域の人口減少が均一に起きているわけではないことがわかる。たとえば、ここ3年、八王子市は人口が微増の年と微減の年を繰り返しているのに対し、立川市は一貫して人口が増え続けている。
このように、各自治体によって人口の動態が異なるのはもちろん、同じ市内でもエリアによっては局地的に人が増えているケースもあり、一概に多摩地域を”衰退地域”と結論付けることは難しいと言えるだろう。
さらにこの傾向は不動産価格の変遷にも表れている。たとえばここ5年、駅近の不動産価格は、市全体の不動産価格より上昇率が高くなっているケースが多い。以下のデータを見てほしい。
【多摩地域の直近5年間の不動産価格上昇率(2010年→2015年)】
※上が市全体、下が駅近エリア
・立川市
市全体 102.7%
JR立川駅 149.6%
・三鷹市
市全体 110.2%
JR三鷹駅 115.4%
・調布市
市全体 102.7%
京王線調布駅 108.5%
・国分寺市
市全体 101.7%
JR国分寺駅 107.4%
・八王子市
市全体 103.3%
京王線京王八王子駅 100.0%
(※マンションマーケットのデータにより算出。駅近エリアは各駅徒歩5分(400m)内に立地するマンションが対象)
八王子市を除き、駅近のマンション価格が市全体の上昇率よりも高いことがわかる。特に、立川市は市全体と駅近エリアで46%もの差が開いている。
◆駅近マンションの価格上昇の理由は「プチ人口移動」
なぜ駅近のマンション価格の上昇率が高いのか。
駅近の物件は便利なので好まれるのは当然だろうと結論づけることもできるが、実態はそう単純なものではないらしい。
「原因の1つはここ数年の首都圏のマンション市場全体の動きにあります。都心の価格高騰につられて人口が減少しているはずの多摩エリアの価格も吊られてあがっているんです。ただ、もう1つの根拠のほうが大きいですね」
首都圏の大手不動産会社を経て、現在はベンチャーの不動産会社を経営する中村洋次氏(31歳・仮名・男性)。彼によると、多摩地域内で起きている人口移動がもう一つの背景にあるという。
「いま、多摩地域では小さな人口移動が起きています。その中心を占める層は駅から遠いところに住んでいた高齢者。子どもが独り立ちして夫婦だけになった家庭、ひとり暮らしをしている60代以上の人が駅チカのマンションに引っ越しているんです。たとえば、立川市の駅からバスで行くような一軒家から駅前に完成したタワーマンションへ引っ越しているケースは多く見られます」
中村氏曰く、こうした小さな変化が不動産価格にも影響を与えているというが、この傾向を見て多摩エリアの駅近マンションに投資するのはあまりに楽観的だと氏は語る。
「いま起きている多摩エリア内のプチ人口移動は何度も起きるわけではありません。多摩地域は今後人口が飛躍的に増えることが考えにくい以上、一回移動が済んだらマンションの住人はそれ以上引っ越しませんから。しがって多摩エリアの不動産価格が短期的に見て今後高騰することは考えにくいと思います」
<取材・文/日刊SPA!取材班>
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