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年金減額は違憲として提訴する人たち (c)朝日新聞社
世帯分離、医療費控除、税金を取り戻す15の方策〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161111-00000110-sasahi-soci
週刊朝日 2016年11月18日号より抜粋
政府は2000〜02年度の不況で物価が下がったとき、年金支給額を据え置いていたが、10年以上もたってから「もらいすぎ年金」だとして、13年から3年間で年金額を計2.5%引き下げている。
年金が減らされる一方で、あまり報じられていないが、04年の年金改革以降、国民が支払う保険料は年々、高くなっている。厚生年金の保険料率は当時の13.58%から段階的に引き上げられ、17年には18.3%になる。標準報酬月額が50万円の人のケースで見ると、当時6万8千円(本人負担分は折半額)から、9万1千円まで負担増だ。国民年金の保険料も同様に1万3300円から、1万6490円(17年度)までアップしてきた。
健康保険料や介護保険料も年々引き上げ傾向にあるほか、後期高齢者の自己負担割合も引き上げられることになりそうだ。厚生労働省は70〜74歳の窓口負担を14年4月から1割から2割に引き上げたのと同様に、75歳以上の負担増も検討している。また、「高額療養費制度」は1カ月当たりの医療費の上限を超えた分が還元されるものだが、1カ月の医療費が100万円の場合、70歳以上ならこれまで外来は4万4千円で済んだ。その上限が引き上げられることになりそうだ。
社会保障費の負担増に加え、増税も重くのしかかる。消費税が19年10月から10%になる見込みだが、高所得者をターゲットに所得税や住民税控除の上限を引き下げるなど、“隠れ増税”が高齢者の生活を直撃する。
では、老後の生活費はいくらくらい必要なのだろうか。公益財団法人「生命保険文化センター」の調査によると、夫婦2人の最低生活費の月額を22万円としている。仮に85歳まで生きるとして、60歳からの25年間で6600万円ものお金が必要になる。
厚労省がモデルケースとする厚生年金の平均受給額は、夫婦2人で月額約22万1千円(16年度)。受給開始年齢の65歳から20年間で5304万円だから、年金だけではおよそ1300万円も足りない計算になる。国民年金にいたっては、保険料を20歳から60歳まで40年間支払った満額でも月に6万5千円(平均額は5万円程度)にしかならない。
下流老人にならないために、生活防衛術をどのように実践していけばいいのか。年金評論家の田中章二氏が解説する。
「まもなく年金を受給する夫婦のモデルは夫が厚生年金で、妻が国民年金の第3号被保険者です。夫婦の年金だけで最低生活費の月額22万円を確保するのはなかなか困難です。少しでもゆとりのある生活をしていくためには、年金を取りはぐれのないようにいかに多くもらうかが肝要です」
厚生年金は2階建てで、1階が国民年金に該当する「基礎年金部分」、2階が「報酬比例部分」の構造だ。
現在、厚生年金の受給開始年齢は60歳から65歳へと移行している段階で、特別支給年金として男性は62歳、女性は60歳から「報酬比例部分」を受給できる(男性は1955年4月2日〜57年4月1日生まれ。以降、2年ごとに受給開始年齢が1年ずつ引き上げられる)。
「国民年金は62歳から繰り上げ受給すると満額の82%に減額されますが、厚生年金には減額がない。勘違いしてもらわない人も多いが、報酬比例部分はだいたい平均で月額10万円ほどになるので、もらわないと損です」(田中氏)
ただし、60〜64歳で在職中の人は注意が必要。会社の厚生年金に加入したままの状態で、年金の月額と賃金の合計が28万円を超えると、年金の支給額が減らされてしまうからだ。例えば賃金が30万円で年金が10万円の人のケースで試算すると、支給される年金は4万円にまで減る。
「この場合、6万円を国に寄付したのも同然になります。だからといって仕事をやめてはいけません。厚生年金に加入できない身分になればいいのです。今年10月該当者から月に10日だけ勤務するなど、労働時間を正規従業員の2分の1未満の条件に変えると年金を減らされずに済みます」(同)
年金の受給開始年齢が引き上げられたことで、65歳まで再雇用する会社が増えている。実は満65歳で定年退職するよりも、直前の64歳11カ月で退職したほうがトクなのだ。
ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏がこう指摘する。
「65歳を過ぎて退職すると、雇用保険は高年齢求職者給付金として最大で50日までしか出ません。しかし、満65歳直前に自己都合で退職すると、勤続年数が20年以上なら基本手当として150日まで出るからです」
長尾氏の試算によれば、再雇用後の給料が月額35万円の人の場合、雇用保険の基本手当の日額は5249円。150日分ならば約79万円だ。同じ条件で満65歳で退職した人は50日分だから約26万円。50万円以上も多く受け取れるのだ。もちろん、年金とのダブル受給もできるという。
配偶者が死亡した場合、遺族年金と自分の年金のどちらかを選択するときにも注意が必要だ。前出・田中氏が語る。
「遺族年金は全額非課税扱いですが、老齢年金は雑所得として課税されます。夫の死後、不動産収入や株式などの配当所得が入ってくるケースも多い。単に年金額の多いほうを選ぶのではなく、各所得税の計算をしたうえで判断すべきです」
低年金で単身となった老親の介護保険料を安くするための裏ワザもある。例えば父親が亡くなり、母親と子夫婦が一緒に住んでいるケースで見てみよう。母親の収入が年金だけで80万円以下ならば、子夫婦と住民票を別々にする「世帯分離」を行い、母親を1人世帯にする。それだけで介護保険料の支払額が年間5万7600円から、ほぼ半額の3万円に減る(東京都杉並区で65歳以上のケース)。同区議で、『「世帯分離」で家計を守る』などの著書がある太田哲二氏はこう話す。
「ほかにも高額介護費の上限額や、高額療養費の自己負担分の限度額を引き下げるなどで、『世帯分離』が威力を発揮します。一つ屋根の下に住んでいてもできるので、ぜひ実践してほしい。これまで銀行口座の天引きなどで社会保障費や、税金を余分に払ってきた“隠れ増税”をいかに取り戻すかが肝心です」
このほかにも節約術を掲げたので参考にしてほしい。
5千万件に上る“消えた年金記録”が発覚したのは07年のこと。当時の第1次安倍内閣で首相は「最後の一人に至るまですべてお支払いする」などと、国会答弁で大見えを切ったものだ。だが、その説明責任はいまだ果たしていない。
国民は賢くならなければ、騙されるばかりだ。(本誌・亀井洋志、西岡千史、大塚淳史)
<下流老人にならないための15の方策>
■控除
(1)障害者手帳をもらう
認知症や糖尿病も、障害者控除の対象。障害者手帳が交付されれば、医療費や住民税が減免される
(2)障害者控除を受ける
障害者手帳を持っていなくても、65歳以上で要介護認定されていれば「障害者に準ずる」と認定されて、障害者控除を受けられる可能性がある。最大5年前にさかのぼって控除を受けることも可能
(3)扶養控除を増やす
収入の低い70歳以上の家族がいる場合、離れて暮らしていても扶養控除の対象にできる。48万円の控除が受けられる
(4)医療費控除を活用
医療費や薬代のほか、病院までの交通費も対象。治療に関係するものであれば、マッサージなどもOK
(5)介護費用を控除に
介護施設から発行される領収書には、医療費控除の対象となる金額が書かれている。忘れずに医療費控除の申請をしよう
■保険
(6)介護保険料を半額に
単身になった親が年額80万円以下の低年金者の場合、子夫婦と世帯分離するだけで、介護保険料の支払額がほぼ半額になる。同居していても世帯分離は可能
(7)教育訓練で給付金
雇用保険の「教育訓練給付金」制度で、語学学校、介護福祉士など「一般教育訓練」の場合は、支払った額の20%(上限10万円)、看護師など「専門実践教育訓練」では40%(年間32万円まで)が給付される
(8)失業給付を延長
「公共職業訓練」の職業訓練校に通っている間は、失業給付が延長される。受講手当と交通費も支給される
■年金
(9)年金と失業手当のW受給
満65歳で定年退職すると失業手当は最大で50日までしかもらえないが、1カ月前に退職すれば最大150日まで。年金とダブル受給できる
(10)厚生年金の特別支給
65歳より前に特別支給される報酬比例部分の厚生年金は、国民年金の繰り上げ受給と違って減額の対象にならない。必ずもらおう
(11)働きながら年金をもらう
60歳を過ぎて働く場合、労働時間など一般従業員の2分の1未満(月10日勤務など)にすれば年金は減額されない(今年10月該当者から)
■その他
(12)格安スマホで節約
毎月6000〜8000円程度かかるスマートフォンの基本料金を格安スマホに変更すれば、毎月2000円以下で利用できる(機種代は別)
(13)介護割引
遠距離介護をしている場合、飛行機代が割引になる。最大40%の割引も(航空会社によって異なる)
(14)介護リフォーム
介護のためのリフォームが必要になった場合、介護保険料を利用できるほか、市町村で助成金制度を設けている場合がある
(15)在宅介護の助成金
在宅介護の場合、市町村によってはおむつ代などの介護費用を助成してくれる。各自治体の介護支援制度を活用しよう
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