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コラム:
トランプ円安はサプライズではない
村上尚己アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト
[東京 11日] - 米大統領選挙における共和党ドナルド・トランプ候補の勝利と、海外市場で始まった株高・金利上昇・ドル高の動き――。これらは、日本の市場関係者の多くには理解し難い出来事だろうが、筆者にとっては想定内の展開であり、違和感はない。株高・金利上昇・ドル高トレンドは継続する可能性が高い。
まずトランプ氏の勝利は、「とんでもない人物が米国の大統領になることはない」との論調が内外の大手メディアを支配していたため、「サプライズ」だと見なされた。特に日本のメディアは事前の想定が裏切られたことが驚きであるかのような論調に傾いており、例えば「トランプ氏勝利=米国社会の分裂・苦境」といったトーンが目立つ。
ただ、米国の金融市場では、もともと「トランプ大統領」は十分あり得ると認識されていた。「トランプ政権の誕生が深刻なリスクになる」といった議論を、筆者は米国人投資家の口からあまり聞いたことはない。米国メディアの報道や調査にもバイアスはあり、6月の国民投票で欧州連合(EU)離脱を選んだ英国ショックのような事態が発生する可能性は当然ながら想定されていたためだ。
実際、同僚の運用者の大半は十分な備えを講じていた。つまり、米国市場にとってショックとは言い難いのである。
もう1つ、日本の市場参加者にとってサプライズだったのは、トランプ氏勝利を受けて、欧米市場は東京市場とは真逆の円安ドル高に動いたことだろう。トランプ大統領なら株安となり、安全資産の円が買われるという条件反射的な思惑は外れたわけだ。
振り返れば、日本の為替アナリストの大半は、「円は安全資産」あるいは「米次期政権はドル安志向」とのロジックを振りかざし、米大統領選は円高要因になると論じていた。それに対して、筆者は10月19日付のコラムで「トランプリスクは幻影」と書いたように、円高要因ではないと見ていた。
<「トランプ政権=ドル高」は教科書通りの動き>
さて、トランプ氏が表明している経済政策は多岐にわたり、矛盾しているものが多く、どの程度実現するかは不確実である。ただ、減税を中心に景気刺激的な財政政策が実施される可能性が高いとの見方は、多くの投資家の共通認識だ。
これは、米国の株高・景気押し上げ要因である。当社エコノミストは、米政府の拡張的な財政政策がドル高を後押しすると予想。2017年の米国内総生産(GDP)成長率は財政政策で0.5%程度押し上げられると見ている。
米国でインフレ率が高まり、名目長期金利が押し上げられ、米連邦準備理事会(FRB)が緩やかながらも利上げを続けるなら、理論的にはドル高である。多くのエコノミストにとって、トランプ政権でドル高円安となるのは教科書通りの自然な動きなのだ(トランプ政権がFRBへの介入を強めることは筆者が考える最大のリスクだが、他の政策メニュー同様に不確実で現時点では判断のしようがない)。
それでも日本の金融市場では相変わらず、トランプ氏が掲げる保護主義政策の採用やグローバリゼーション時代の終焉によってドル安がもたらされるとの見方がよく聞かれる。これは、1990年代半ばまで金融市場を支配していた「円高シンドローム」(特にビル・クリントン政権で顕著だった政治的な円高強要と日銀金融政策の機能不全がもたらした現象)が、トラウマとして為替市場参加者に影響している側面が大きいと考えられる。
ただ、現在は当時と異なり、まず黒田東彦総裁率いる日銀は強力なデフレファイターとして生まれ変わっている。また、米政府にとって貿易摩擦の最大相手国が日本だった当時の状況と今は違う。
さらに、そもそも日本のアナリストの多くが予想するドル安政策は米利上げ見通しと整合性がとれていない。実際には、金融政策は引き締め方向で、財政政策は拡張方向に進み、ドル高がもたらされる可能性が高いと筆者は考える。
ドル高の持続性の鍵を握るのは、米経済の成長やインフレ率である。そして、そうした点に変化があるようには見えないため、夏場から述べているように、行き過ぎた円高の修正は続く可能性が高いと筆者は予想しているのである。仮に円高に振れた際には、むしろ投資機会として捉えるのが正しいアプローチではないだろうか。
*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-naoki-murakami-idJPKBN1360P1?sp=true
コラム:トランプ氏のウルトラ財政出動、ドル高止まらぬリスク内包
田巻 一彦
[東京 11日 ロイター] - ドナルド・トランプ氏が米大統領選での勝利宣言を行った9日夕(日本時間)以降、ドル高と米長期金利上昇が進み、その後は米株高にもなった。これはほぼ「完全雇用」の米国でウルトラ財政出動をすれば、何が起きるのかということをマーケットが予想した結果だろう。ただ、ドル高が一定水準で止まる保証はない。
トランプ次期大統領がどこかでストップをかけるのか見ものだ。
<急上昇する米長期金利>
最も劇的に変化したのは、米国債利回りだろう。10年債US10YT=RRは9日の取引で2%に乗せ、10日には2.13%台まで駆け上がった。30年債US30YT=RRの上昇はさらに急ピッチで10日には2.94%台と3%が視野に入ってきた。
日米金利差に着目した市場は、ドル/円JPY=EBSを押し上げた。10日の欧米市場では106.95円まで上昇し、早くも「トランポノミクス」の威力を見せ付けた格好だ。
何が市場を動かしたのか──。これまでの金融政策に依存してきたマクロ政策をトランプ次期大統領が大胆に転換し、財政で景気を押し上げるインパクトにマーケットが注目した結果だと言える。
4年間で所得税減税、法人税減税、インフラ投資などに4.4兆ドルの財政資金を投入すれば、その分、米国の国内総生産(GDP)を押し上げ、景気を押し上げる。停滞感を払しょくし、インフレ期待を高める働きも期待できる。
元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブ・フェローは10日、ロイターのパネル・ディカッションで、経済が完全雇用状態にある中で大規模な財政拡大に踏み切り、保護貿易主義に走れば「国内需給がタイトになり、インフレになりやすい」とし、「それをFRBが止めようと(利上げすれば)すれば、ドル高になる」との見方を示した。
<想定超すドル高がもたらす現象>
一方で危い面もありそうだ。1つは米議会が上下両院とも共和党が過半数を制し、トランプ次期大統領の人気にあやかろうとして、「小さな政府」志向を棚上げし、積極財政を肯定した場合だ。
けん制勢力が事実上なくなって、強い薬の投入効果で、予想を超えて物価が上がり出し、FRBが想定以上に利上げをせざるを得なくなる状況に直面。そのことがドル高の圧力をさらに強める展開だ。
2017年に3回利上げとの見通しが市場に出てくると、ドルは対円で110円を突破し、125円を目指すこともあり得るのではないか。一部の市場参加者がそのように思い始めると、ドル高が止まらないシナリオも「荒唐無稽」とは、言えなくなる。
ドル/円で125円を超える円安が進めば、例えば、日系メーカーの自動車販売価格は、引き下げ余地が大きくなり、米自動車メーカーに打撃を与える可能性も出てくる。
その時に考えられるのは、今回の大統領選でトランプ氏に投票した中西部の製造業で働く人たちの強い反発だろう。
トランポノミクスの反射的効果によって、トランプ支持者の不満が膨張した場合、強くドル高/円安をけん制する行動に出る展開は、一定程度の可能性があるのではないか。
<懸念される新興国通貨・株の下落>
もう1つの副作用は、すでに10、11日の市場で見え始めている新興国からのマネー流出現象だ。マレーシア、インドネシアでは通貨が急落。インドネシアでは株価も3%安と市場変動が大きくなっている。
米国市場が世界からマネーを吸い上げると、相対的に「引力」の弱い新興市場は、継続的にマネー流出に直面することになる。
そこから言えることが、さらにある。2008年のリーマンショック以降、世界の金融・資本市場は、「リスクオフ」なのか「リスクオン」なのかという判断で、マネーの流れが決まる傾向を強めてきた。
しかし、これからはマネーが流入する中心的な存在の米国と、マネーが流出する周辺とも言うべき新興国という「二極化」が鮮明になる局面にシフトすると予想する。
そうなると、マネーフローの観点からは、ドル高が一方的に継続する展開が予想され、それを止めるのは「政治的な発言」と当局の「実力行使」ということになりそうだ。
いずれにしても、4兆ドル規模の財政支出が現実になるなら、マーケットへの影響は黒田バズーカの威力を大幅に上回って「劇的な」規模になるだろう。
そして、米国にマネーが流入し続けることが、果たして継続可能なことなのか、という見方が台頭し、さらに大きな変化が生じる可能性があると予想する。
http://jp.reuters.com/article/column-tamaki-idJPKBN1360QI?sp=true
コラム:「トランポリン相場」の始まり=岩下真理氏
岩下真理
岩下真理SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト
[東京 11日] - 米大統領選挙は、共和党ドナルド・トランプ候補が予想外の勝利を収めた。市場は6月23日の英国ショックがトラウマとなり、事前にトランプリスクを意識してドル安・株安・債券高というリスクオフ相場を何度かこなしていたはずなのだが、それでもトランプショックは起きた。
結果が判明していく日本時間9日は、日経平均株価が一時1000円を超える下げ幅となり、ドル円も一時101.19円まで円高が進行した。
そもそも、英米ともに事前の世論調査はなぜ外れてしまうのか。まず考えられる原因は、回答率が低いと外れる可能性が高まることだ。経済統計でも重要だが、回答率を確認する必要がある。
次に米国の場合、過激発言のトランプ氏の支持を知られたくない「隠れトランプ支持者」が多かったようで読み切れなかった。さらには支持率と獲得選挙人数は一致しておらず、民主党ヒラリー・クリントン候補の支持者は投票率が高くなかった可能性も指摘できよう。
来年は4―5月にフランス大統領選、後半(9月頃)にはドイツ総選挙が実施予定であり、市場は世論調査に疑心暗鬼にならざるを得ない。結果判明の時間も災いして、日本市場はリスク回避手段として使われやすい。今後も欧州選挙のたびに不安定な相場を覚悟するしかないだろう。
<船出前から高まる「トランプノミクス」期待>
日本時間9日夕方、勝利宣言をしたトランプ氏は「全ての国民の大統領になる」「どの国とも公平に付き合う」「最強の経済をつくる」と協調性のある発言をして、安心感が広がった。そこから空気が一変、際立ったのは大幅な財政出動を警戒した米10年債利回りの上昇だ。クリントン氏優勢で12月利上げを織り込む過程で越えられなかった1.9%を突破。それに連動してドル円も105円台まで戻し、米10年債利回りが2%に乗せた後、一瞬107円をつけた。
株式市場も大型減税(総額10兆ドル)やインフラ投資促進、金融規制の緩和への期待が強まる一方、通商や移民政策では過激なことはできないとの楽観的な見方に傾いて大幅上昇。日米のマインド指標を比較すると、米国のマインド回復はかなり速いと統計で理解していたが、新大統領を受け入れる切り替えの速さは目を見張る。
10日の日経平均は前日比1000円超上昇し、トランプサプライズとなった。この2日間はまるでトランポリンで弾んでいるような動きであり、トランプの語感に近い「トランポリン相場」と命名したい。
筆者は前回のコラムで、「2017年の世界経済と相場動向の最大のテーマは米国であり、具体的には(09年6月を谷として7年5カ月経過した)同国の景気回復局面は続くのか、16年12月が2回目で最後の利上げにはならないか、新大統領は財政政策を講じるのかといった点が注目される」と指摘した。まだ船出していないトランプ新政権の財政政策(トランプノミクス)への期待は走り出し、「トランポリン相場」が始まった。
<米10年債利回り次第で1ドル110円も視野>
それでもトランプ氏について問題なのは、政治手腕が未知数なことだ。今回、米議会選で共和党が上下両院の過半数を維持し、ねじれは解消できた。これまで共和党の主流派と距離を置いていたトランプ氏が、閣僚人事で財務長官、国務長官にどのような人物を起用するのか、経済政策や外交問題にどう対処していくのか、当面は見守っていくことになろう。
そもそも共和党は財政規律を重視する向きが多く、来年3月末の米連邦債務上限引き上げ期限が、財政出動をする上での最初の試金石と思われる。議会の協力を得るため、新政権の政策が徐々に現実路線へと見直されていく可能性はありそうだ。
トランポリン相場は、落胆から一転、楽観ムードに包まれている。だが、今後も紆余曲折はあると想定すべきだ。新たな材料に一喜一憂し、この先も上下変動を何度か繰り返す相場展開が予想される。
その際、注意すべき市場動向は米債と考える。昨年12月に利上げを開始する前の米10年債利回りは2.3%台にあったことを思えば、その水準に近づきつつある。8月以降、日米欧の金融政策の転換点が近いとの見方から、世界の債券市場は変調を来した。それまでの過度な金利低下(日本では過度なフラット化)の反動修正が日本発で起きたと言える。
9月21日に日銀は新しい枠組みの導入を決定、金融政策の軸を量から金利へ転換し、その後、欧州中銀(ECB)の緩和縮小観測の呼び水となった。日銀のイールドカーブコントロールにより、日本の長期金利は限られたレンジでの動きとなったが、欧米での債券売りの流れは止まっておらず、米大統領選後に再び加速している。目先は追加利上げを十分に織り込み、新政権への期待プレミアムを乗せれば、米10年債利回りの2.5%程度までの上昇はあり得る。
日本の投資家が米債の買い支え役となるのか、当面は試される時間となろう。ドル円も米10年債利回りの上昇に合わせて、2.3%なら108円、2.5%なら110円も視野に入る。
<ドル円も日本株も12月にいったんピークか>
米大統領選は予想外の「トランプ勝利」となったが、市場の混乱は長引かずに済んだ。「クリントン勝利」の前提よりも、米経済の押し上げ期待は強まり始めている。目先の米連邦準備理事会(FRB)の政策判断に影響はないだろう。イエレンFRB議長の任期は18年2月3日までだが、新政権のもと更迭される事態には至らないと見る。
筆者は物価上昇率の伸び悩みと10―12月期の景気減速の可能性を懸念していたが、その霧は米10月雇用統計で少し晴れた。賃金上昇により、インフレ率2%に向けた上昇の流れは出てきている。12月2日発表の11月雇用統計で大きく鈍化しなければ、2%への自信につながるだろう。
また、アトランタ連銀が公表している国内総生産(GDP)成長率のリアルタイム推計「GDPナウ」では、10―12月期の成長率予測は前期比年率3.1%(9日時点)と3%台に乗せており、7―9月期(速報値)の同2.9%の強さがそのまま続いている。よって、12月の米利上げは最後とはならず、来年も緩やかな利上げペース継続(メインは年2回)は可能だ。
ましてや新政権で財政出動となれば、インフレ期待も高まり、利上げ継続の環境が整うことになる。17日には、イエレン議長が経済見通しについて議会証言をする予定だ。利上げの条件はほぼ整い、緩やかな利上げを継続できる経済状況を説明するだろう。
一方で100円割れの円高が遠ざかり、日本の長期金利が低位安定、欧米に比べて相対的な金利の低さはイールドスプレッドの観点からも、日本株の投資妙味を高めることになろう。アベノミクス4年目、年終盤の日本株高のジンクスは、日銀の協力のもと、1)原油高、2)欧米金利の上昇、3)円安と外部環境、が支援する形がイメージされる。
ただし、1点目については、11月30日の石油輸出国機構(OPEC)定例総会での減産協議の結果次第で弱含む可能性はある。それでも、過去2年のような原油安が長引く展開に転じるとは考え難い。残り2点については、12月8日のECB理事会、12月13―14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でいったんの材料出尽くしとなる可能性があり、12月上旬が米10年債利回り、ドル円、そして日本株の一時的なピークとなる可能性は念頭に置きたい。その後、新政権の政策運営を見守りながら、仕切り直しの展開を予想する。
*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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