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今年の内定式
「生涯正社員」が誰も得をしない時代になる
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161112-00010005-newswitch-bus_all
ニュースイッチ 11/12(土) 15:20配信
■企業も従業員も国にも大きな足かせに
政府もようやく「働き方改革」を大きく掲げ、日本人の働き方を変えようと動きだしました。今の延長線上では日本の経済力に限界が見えています。そこにメスをいれなければ、歪が大きくなるでしょう。産業能率大学が実施している「新入社員の会社生活調査」では新入社員の約70%以上が終身雇用制度を望むと回答しています。
意外なことにその数字は増加傾向。正社員ということは、会社にフルコミットする働き方であり、異動を命じられれば望まない仕事であろうと違う部署に移り、転勤を命じられれば家族がいようと日本全国、全世界に転勤しなければなりません。その代わりの対価として、一定の給与と昇進を得られるわけです。
しかし、この正社員の終身雇用制度は、これからの「企業」にとっても「従業員」にとっても「日本の国」にとても大きな足かせになることは間違いありません。
企業にとっての足かせは何か。今後、国内マーケットは人口減少の煽りを受けて徐々に縮小する可能性がありますが、実はそれ以上のスピードで生産年齢人口が減少していくため慢性的な労働力不足の状態が続きます。
引退して消費する側の人口が急増するにもかかわらず、商品・サービスを提供する側の人口が減少していきます。
画一的な教育を受けた正社員はリスク
戦後から2000年くらいまでのマーケットが拡大していく局面では、先に正社員として社員を終身雇用し、会社で育てながら(飼いながら!?)未成熟なマーケットに対して画一的な商品・サービスを提供することは合理的な戦略でした。
しかし、これからの成熟かつ多様化した縮小マーケットと対峙する会社にとって、終身雇用し画一的な教育を受けた正社員から商品・サービスを提供することは大きなリスクとなります。
マーケット拡大局面と縮小局面では経済活動のルールは大きく変わるため、今まで最適化されていた働き方はどんどん見直されることになります。合理的な選択をする企業から順に早かれ遅かれ、そして新入社員が望む望まざるに関わらず、この終身雇用という雇用形態は下火になっていくでしょう。
■今の勤務形態では介護と子育てができない
従業員にとっても生涯に渡って正社員で雇用されることが最適とは限りません。その一番の理由が介護問題と家事・子育てです。まず介護に関して言うと、今後10年で75歳以上の人口が急激に増えていきます。50歳前後の人たちが親の介護に関わることになります。
現在はまだまだ本格的な介護時代の入り口ですが、これから物凄い勢いで75歳以上の絶対数が増えていきます。事実、大手企業の複数社が介護休暇を導入し、その他介護に対応するための勤務形態などを設計しています。
資金的、人的に体力のある企業はなんとか社員の介護支援をできるかもしれませんが、今後10年の人口動態を見ると流石に抜本的な改革が無いと社会構造に追いつきません。
そうなると企業に所属する正社員の終身雇用は従業員のライフステージの変化に対応できず、働く側にとって非常に不便な雇用形態となってしまいます。
家事・子育てに関しても同じことが言えます。工業や建設業を中心とした体力が必要な産業で経済成長している時代であれば、力のある男性が必死に働くことで付加価値を最大化できます。
筋肉マンの男性が掃除、選択などの家事をやることはもったいなかったわけです。なので、役割分担をして女性が家事を担当し、男性は体力が必要な仕事に従事するというスタイルが夫婦のリソース配分や、企業としても日本国としても最適になるわけです。しかし、内需マーケットは人口減少に比例して縮小する可能性が高く、マーケットニーズも多様化しています。
企業も多様性を担保して柔軟にマーケットの変化に対応できる組織に変わらざるを得ません。そうなると、女性の社会進出が進み、結果として男性も育児・家事に参加「せざるを得ず」家族の役割分担が変わっていくでしょう。
<一人ひとりの生産性をいかに上げるか>
そして、日本の国(政府)にとっても正社員の終身雇用が主流の社会を変えざるを得なくなってきました。日本は経済大国ですが、GDPは世界第三位、2013年に中国にGDPを抜かれて、現在はすでに2倍以上の差がついています。
一人あたりのGDPをみると32,000米ドルで実は世界第26位。時間あたりの生産性に関してみるとOECD加盟34カ国の中では22位、主要先進7カ国の中では最下位です。この分母に当たる労働時間の中にはいわゆるブラック企業のサービス残業などは含まれてなさそうなので、実際の順位はもう少し落ちる可能性もあります。単に人口が多いのでGDPが大きく見える、というのが実情なのです。
政府も日本が国際社会の中で一定のポジションを保つためには、経済力はとても重要です。今後本格的な生産年齢人口が減少することが確定している日本にとって、一人ひとりの生産性をいかに上げるが肝になります。そのためには現在働いている人の生産性を上げると同時に、これまで(GDP観点から)働いてなかった人たちを労働市場に参入してきてもらわなければなりません。
世界的にも前例のない勢いで人手不足問題が顕在化するなか、すでに働いている人は生産性をあげて働く。まだ働いてないけれど働ける人は新規でドンドン働いてもらう、という流れを作っていかなければなりません。
■個人のライフステージに合わせた雇用選択に
そうした中、個人としてはどのような働き方を目指していけばいいのか。それは自分のライフステージとマーケット環境から、最適な業界と雇用形態を選択できる仕組みとスキル得ることです。
例えば新卒でまだビジネスのスキルや経験が低いうちは正社員として会社に所属し、業務の中で経験を積んでスキルを磨きます。ただ正社員なので会社から毎月の給与を保証される代わりに異動や転勤など会社からの要望にも答える必要があります。まだ単身者で若く伸びしろも、体力もある人が多いので、このような働き方が従業員、会社の利害が一致します。
そして数年後、結婚し子どもが生まれたら、業務委託などの雇用形態に切り替えて子育てと仕事を行う。この頃には一定のスキルと経験があるので、会社も個人も成果物で握る業務委託での契約が可能になります。複数社と契約してもいいでしょう。
そして、子育てが落ち着いたらまた正社員や契約社員として復帰するという選択肢や、起業という選択肢もありでしょう。子どもも独立し余裕が出てきたタイミングで親の介護が始まったらパートタイマーで働くのも有効かもしれません。
この雇用形態の切り替え方はあくまで一例ですので、個人の能力や環境によって変わっていくと思いますが、リンダ・グラットンさんの言う人生100年の時代、20〜80歳まで60年間働らき、それぞれライフステージも変化します。その変化に合わせて雇用形態をスイッチできることが人生の幅を広げます。
この考え方の対極にあるのが、まさに高度経済成長時代に「大成功」した正社員として終身雇用で働くモデルでしょう。しかし人口構成が変化しマーケットの環境が一変した中、所属する一社に言いなりになって(家族や地域社会を顧みず)働き続けるのは人生全体でみると非常にハイリスクローリターンです。
スキルや経験は無くとも単身である程度自由が効く若い頃は正社員の雇用形態がローリスク・ハイリターンですが、スキルも経験も溜まり、結婚・子育てや介護のなどライフステージが変化してくると、正社員の雇用形態から得られるリターンが少なくなってきます。
企業側からしても、従業員のライフステージによってリスクとリターンのバランスは変化します。その変化に対応できるような柔軟な雇用形態を作れることが、これから迎える圧倒的な高齢化と労働力不足への対策なのだと思います。
田鹿倫基(日南市マーケティング専門官)
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