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東京の湾岸エリアを中心に増え続けるタワーマンションだが、近年は郊外の物件も増加。静岡の熱海駅前には最上階の売値が5億円という物件も(撮影/写真部・岸本絢)
「タワマン節税」防止策、富裕層には誤差の範囲〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161110-00000234-sasahi-soci
AERA 2016年11月14日号
政府が来年度の税制改正に向けて検討している「タワマン税制」が注目を集めている。低層階と高層階との税の不公平性を是正するというが……。
一般に、マンションにかかる固定資産税は、土地の公示価格や建物の時価などをもとにマンション全体の固定資産税評価額を弾き出し、そのうえで各部屋の床面積に応じて課税されるもの。相続税の算定基準も、この固定資産税評価額だ。
ところが、実際には同じ床面積でもマンションの低層階と高層階とでは販売価格が大きく異なる。不動産投資コンサルティングを手掛けるフューチャーイノベーションの新倉健太郎社長によると、「新築物件ならば高層階の販売価格が低層階の1.5倍程度になることはザラ。最上階になると2倍に達するケースも少なくない」という。
●2018年から導入
にもかかわらず、同じマンションで同じ広さならば、固定資産税評価額は一緒。そのため、高層階を節税目的で購入する「タワマン節税」が富裕層の間で浸透しているのだ。相続対策コンサルティングを専門に行う税理士法人チェスターの荒巻善宏代表も次のように話す。
「先日も12億〜13億円の資産を持っていらっしゃる方が、目黒区にできたタワーマンションの高層階を2億円で購入されました。この物件の固定資産税評価額は、当社の試算で4千万〜6千万円。単純に最高税率を掛け合わせてみても7千万円ほどの節税効果が見込めます」
ここにメスを入れようとしているのが、政府と与党自民党の税制調査会。低層階と高層階との税の不公平性を是正すべく、「実際の取引価格を踏まえた固定資産税の按分方法を検討している」(菅義偉官房長官)のだ。対象は2018年以降に引き渡す新築20階建て以上の高層物件となる見込み。マンション全体の評価額は変えずに、低層階の評価額を引き下げ、高層階を引き上げる方向で検討されている。
これにより、タワマン節税は鳴りを潜めることになるのか?実は否定的な見方が大勢を占めている。前出の荒巻代表が話す。
「仮に高さに応じて固定資産税評価額を±10%の幅で調整することになったとすると、中層階の評価額が5千万円なら、低層階が4500万円、高層階が5500万円。しかし、現状の高層階の売買価格はその3倍は下りません。相続時に数千万円単位の節税効果が発生することには変わりないのです」
●見直し対象は「新築」
仮に±20%の幅で調整しても、同様。毎年発生する固定資産税にしても、評価額5千万円なら単純計算で70万円。これが6千万円になったところで84万円になる程度。数億円単位の資産を有する富裕層にとっては誤差の範囲での増税にすぎないのだ。
そもそも、高層階の物件のみが節税対策商品として人気化しているわけではない。タワマン節税を売りに富裕層の資産運用コンサルティングを行っているスタイルアクトの担当者が話す。
「高層階は新築物件だと特に高いプレミアムがつくため高値で売り出されますが、その半面、1年経って中古物件になると値崩れが激しくなる傾向にあります。一方、中・低層階は値崩れしにくい。相続後に購入価格よりも高い値段で売り抜けられるようにと、好んで中・低層階の物件を購入される投資家も少なくありません」
前述したように、マンションは全体の評価額を算出したうえで、床面積に応じて固定資産税評価額が決められる。総戸数の多いタワマンでは、各住戸における土地の持ち分が小さくなるため、他の住戸と比較して評価額を抑えることができるのだ。
見直し対象が「新築」に限られていることを考えれば、中古という抜け穴もある。「“億ション”という言葉が死語になるほど都内の高層マンションは高騰」(新倉氏)しており、中古市場でもタワマン物件が高値で売買されているからだ。税制改正案がまとめられるまでは楽観できないが……タワマン人気が衰える気配はなさそうだ。(ジャーナリスト・田茂井治)
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