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要注意!銀行口座データの「営業利用」はどこまで許されるのか 有用なビッグデータの危険な側面
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50180
2016.11.11 山崎 元 経済評論家 現代ビジネス
■妙に気になるネット広告
ネットでニュースなどを閲覧する際に、通販サイトなどで「妙に気になる広告」をしばしば見かけることがないだろうか。
個人的に筆者もネットの通販サイトをしばしば利用する。価格が安いし、商品が自宅まで配達されるし、品揃えも豊富なので、ネット通販を利用することは経済合理的だと思う。
しかし、一度その通販サイトで検索したことがある商品やその関連商品が、筆者が全く関係無いサイトを閲覧する場合の広告に頻繁に現れることに対しては少なからぬ「怖さ」を感じる。
「ああ、これが欲しかったのかも知れない」と思って購入することが全くない訳でもない。こうした広告には、便利な面もある。しかし、同時に過剰な消費を喚起されているような気がする。
売り手側としては、当然のことながら、潜在顧客の側の購買履歴や個人的なデータを知って、顧客に適合した広告等のアプローチを行って、商売を拡大したいはずだ。
こうした事情があるため、ニュースなどの情報を提供することを標榜するサイトでも、無料ではあっても、IDやパスワードの設定のついでに読者の個人情報を集めようとするし、加えて閲覧するページの履歴を通じて読者のプロフィールや関心を推定しようとしている。
ネット通販の購買履歴のデータは、その個人に対するマーケティングのためには極めて強力なデータだ。現在、ネット上の各媒体は、ユーザー個人の購買履歴・閲覧履歴のデータを集めようとしており、これらをビジネスに活用する技術の開発に余念がない。商品の売り手、及び売り手の広告を載せる媒体にとって、顧客及び潜在顧客の購買履歴やプロフィールが高い価値のある情報であることは疑いない。
おそらく現在でもまだ存在するだろうと思われるが、「名簿屋」という幾らか日陰の商売がある。例えば、Aという商品の通信販売購入者のリストを、Bという商品の販売業者に売るような商売だ。
実は、高齢者が典型的だが、羽毛布団のセールスに心を動かされるような人は、家のリフォームも勧められるままに工事を依頼する場合が多いし、こういう人は生命保険や投資信託のセールスにも弱い。つまり、経済的意思決定が下手な人の名簿には小さからぬ経済価値があるのだ。
金融商品についても、この種の「情弱」(情報弱者)の顧客は存在する。彼らの多くは、金融機関の営業担当者を自分が認定した「いい人」だと決めつけて、手数料の高い金融商品を営業担当者の勧めるままに売買する。
■銀行が個人の口座データを利用
さて、個人のプロフィールや購買履歴のデータがビジネス上大きな価値を持つことはご理解頂けたろう。こうした状況下で、約1ヵ月前に筆者が「これは、大変だ」と思った記事が『日本経済新聞』に載った。
その記事は、10月10日(月)の朝刊9面の金融業界の動向を報じる記事だった。見出し、小見出しは、次の通りだ。「顧客行動の予測 精度競う」「地銀が履歴解析、IT進化テコに」。
個別の銀行を批判する意図はないので、記事は実名だったが、以下の拙稿では行名を名指ししない。
西日本の某地方銀行は、「取引履歴システム」を導入し、顧客の年齢、家族構成に加えて、クレジットカードの利用頻度など同行の口座の入出金情報から「提案に適した商品を選んでいる」という。提案を受けた顧客の反応もシステムで共有して、次の対応に生かすという。
東日本にある官僚がトップに天下ることで有名な某大手地銀は、地銀9行と取引情報を共有して口座の入出金などから顧客の状況を推測し、成約率を高める試みを続けているという。
例えば、「60歳代の男性の口座に数千万円が一括で振り込まれた場合は退職金の可能性が高いとみて資産運用や相続対策を提案する」という。
退職金が振り込まれた銀行で、そのお金を運用するという形は、運用デビューとして最低の形の一つなので全くお勧めできないのだが、銀行側からは顧客のお金の動きが見えているので、顧客は丁度良く且つ無防備なタイミングで営業攻勢に晒されることになる。
また、西日本のある銀行は、グループのカード会社と共同してデビットカードを発行し、「カード履歴を基に銀行のデータだけでは分からない消費行動を分析・予測し、商品提案に生かす計画だ」という。
■口座データは営業に「有力過ぎる」
元々、銀行は個人や法人が自行に持つ口座の入出金をモニタリングすることによって、個人や法人の信用状態に関する情報を持ち、これを融資の判断に生かすことができる、というビジネスモデルだ。
確かに、一銀行に資金繰りを依存するような企業の場合、メインバンクに資金の出入りをモニタリングして貰い、一定の信用を得ることが重要だろうし、それは銀行にとっても同様だ。
しかし、個人客の場合、口座の入出金データを精査されて銀行の営業に生かされるとすると、相当の警戒が必要だ。
元銀行員の作家が書いた小説(例えば、池井戸潤「株価暴落」)などを読んで頂くとよく分かるが、銀行員は口座の資金の動きから、顧客の生活状態を相当に詳細に推測できるし、データを本格的にコンピューターを使って解析するなら、例えば、投資信託を勧められた場合に断る確率が小さい(要はセールスに弱い)顧客などをスクリーニングすることは難しくないはずだ。
■お金の運用は100%自分で決めるべき
銀行が持つ顧客の口座の入出金データは、マーケティング上極めて有効な(おそらくは危険なくらい有効な)宝の山のような「ビッグデータ」だ。
銀行経営者の立場であれば、これを最大限に利用せよと部下に命ずることが合理的だろう。むしろ、最大限に利用しないことの方が、経営的な怠慢だともいえる。
しかし、顧客の立場からすると、どこからどのような収入を得て。どのようにお金を使っているのかという自分の懐具合を熟知した相手は、セールスマンとしてはあまりに手強く、遠ざけるべき相手だ。
金融庁は、銀行が顧客の口座の入出金データを融資の際の信用リスクの判断だけでなく、金融商品のマーケティングのためにどの程度利用していいのかについて関心を持つ必要があるだろう。
実は、筆者は銀行が口座データを運用商品販売などの営業に生かすことについて何らかの規制を設けるべきだ考えて来た。
しかし、有効なデータがそこにある以上、銀行がこれを利用することをフェアに規制することは技術的に難しいように思う。AIを使わずとも人間が判断できるし、人間が判断できることにAIを使うことが悪いとは思えない。
結局、金融機関の個々の顧客たる個人が、自分自身のために警戒するしかないのだが、金融機関が自分自身に関するビッグデータを持っていて、営業アプローチに及んでいることを理解しておくことが重要だ。
端的に言って、資金の受け払いをする金融機関では、金融資産の運用を一切行わないことが適切だ。一見親切そうな担当者の話を聞く前に、資金を別の金融機関に移すべきだ。もちろん、資金を移した先の金融機関でも、担当者に相談するような愚かなことをすべきではない。
誰であっても、お金の運用は、「100%」自分で決めるべきであり、金融機関のマーケティング活動に影響を受けない方がいい。但し、本来は無視すべき金融機関の側の顧客へのアプローチはビッグデータの活用を通じて練度が上がって来ている。「ますます、要注意です!」と申し上げて置きたい。
売り手側の練度が上がっているのだから、買い手側での警戒心の醸成が必要だ。街中では「振り込め詐欺」に対して注意せよとの呼び掛けをしばしば耳にする。
不適切な運用商品による被害の額を考えると、「金融機関の運用商品セールスに注意して下さい」という呼び掛けを、振り込め詐欺対策並みの頻度と熱意を持って行うべきなのかも知れない。
尚、個人が注意し遠ざけるべき商品は、金融庁の「金融レポート」(平成27事務年度版、2016年9月刊)を見ると、毎月分配型投資信託、貯蓄性保険、ラップ口座、の主に三種類だ。大いに気を付けて欲しい。
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