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コラム:
トランプ大統領は変動相場に未曽有の脅威
唐鎌大輔みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
[東京 10日] - 米大統領選挙は、下馬評を覆し、共和党ドナルド・トランプ候補の勝利で終わった。金融市場にとっては英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に続く「歴史的な大誤算」だが、日本に与える影響はブレグジットよりも大きいものとなりそうだ。
現状、為替市場の反応は想定されたものとは真逆であり、リスクオン地合いとなっている。これは「トランプ大統領」への未知なる期待を込めた部分もあろうが、そもそも選挙を前にリスクテークが控えられていたことの反動もありそうである。政治経験のない同氏の議会運営への不安は覆い難いものがあり、トランプショックの影響はこれから顕現化してくるのではないか。
「トランプ大統領」にまつわる最大の論点は為替などではなく、米国の孤立主義路線やそれに伴う国際秩序の不安定化と思われるが、その辺りは諸賢の論考に任せるとして、本コラムでは経済・金融、特に為替に絞って議論を進めたい。
昨年来、筆者は「米連邦準備理事会(FRB)の正常化プロセスは信用できないため、ドル高は続かない」との見通しを唱え続けてきた。大統領が代わっても、その論点は不変であり、2017年にかけての為替相場は過去2年半続いたドル高相場の本格的な調整(ドル安)を経験する年になると予想する。
トランプ大統領誕生はこうしたシナリオを補強する材料にすぎない。たとえ民主党ヒラリー・クリントン候補が勝利しても為替見通しは大きく変わるものではなかった。
<為替に言及する米大統領誕生か>
改めて確認する必要もないが、トランプ氏の通貨・金融政策に対するスタンスは、はっきりとドル安方向である。例えば、今年5月にはテレビ番組で「利上げしてドル高になれば、大問題になる」などと述べたことがあった。そればかりか、ドル高の背景となる利上げ路線を進めるイエレンFRB議長を更迭する意思まで明かしたことがある。
基軸通貨国である米国の大統領が為替相場の方向感に言及することは本来考えにくいが、トランプ大統領ならばその可能性も拭えない。米国の通貨・金融政策の意向が絶対的な影響力を持つ変動為替相場制という「舞台」において、現職の米国大統領が為替の方向感に何らかの希望を述べるとしたら、それは「未曽有の脅威」になり得る。
「トランプ大統領」の言動いかんでは、2017年以降の為替予想は各種ファンダメンタルズを分析するのではなく、単に同氏の顔色をうかがうゲームになりかねない。この点は「大統領候補」から「現職大統領」に変わるに伴ってトランプ氏が少しでも「大人の対応」を心掛けることを願うしかない。
そうした通貨・金融政策の陰に隠れて財政政策は注目されにくいが、トランプ氏は財源の当てのない大型減税を志向していることでも知られる。度が過ぎれば、米国債の格下げ、ひいてはドル安が連想されやすくなるだろう。
確かに、緩和的な財政政策が利上げ可能な実体経済を形作る可能性もあり、この辺りの論点は読みが難しい。仮にトランプ政権でドル高が発生するとしたら「巨額の財政出動」「景気浮揚」「利上げ」「ドル高」といった経路しかないだろう。とはいえ、トランプ氏に「ドル高は嫌だ」という確固たる信念があるのだとすれば、根本的にそのような展開も期待薄だとは思われる。
その他、通商政策では環太平洋連携協定(TPP)の破棄や北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し(極端なケースでは脱退)といった論点が目につく。米国がそうした立ち回りを演じることは世界の保護主義化の起点になるという文脈で捉えるべき事案だが、当然、米国に拠点を構える多国籍企業に打撃を与える話にもなるだろう。
そのような行為が米国の実体経済に対してポジティブな影響をもたらすとは思えず、結局はFRBの利上げ路線を挫折させる遠因となる。要するにドル安材料である。
もちろん、通貨安誘導や減税そしてトランプ氏が折に触れて言及する規制緩和は適切に執行されれば実体経済を押し上げるかもしれない。だが、直情的なトランプ氏が議会と一致協力してそのような政策運営を果たしてできるのかどうか、正直、にわかには信じ難い。
現時点で得られる情報を総合すれば、トランプ次期大統領の政策運営からは「どこを切り取ってみてもドル安の臭いしかしない」という印象を受ける。
<米当局はもともと「ドル高に不寛容」>
ちなみに、為替市場ではクリントン氏勝利の場合はドル安志向の強いラエル・ブレイナードFRB理事が財務長官に指名される可能性が注目されていた。これに対し、トランプ政権における財務長官は選挙対策財務責任者のスティーブン・ムニューチン氏らの名がささやかれているが、それほど注目はされていない。他ならぬ大統領自身がドル安志向をあらわにするのであれば、その配下である財務長官人事に関心が集まらないのも当然かもしれない。
ただし、重要なことは米財務省の通貨政策に関しては、為替政策報告書における「監視リスト」の存在などに象徴されるように、選挙以前からドル高相場に対する警戒感が示されてきたという経緯だ。要するに、大統領や財務長官という政治的かつ属人的な要素以前に、米通貨政策のスタンスとして「ドル高に不寛容」という事実がもともとあったことは忘れてはならない。
雇用統計の増勢は明らかに衰えているし、企業収益もドル高と符合するように2014年下期から頭打ちになっている。まっとうに考えれば、米政策当局者の間で利上げやそれに伴うドル高の悪影響について懸念が芽生えるのは自然な話と思われる。
<ドル円の主戦場は90円台前半へ>
最後にドル相場の現状を簡単に確認しておきたい。繰り返し述べているように、2014年6月以降続いているドル相場の上昇に関し、2016年はほとんど調整が進んでいない。つまり、トランプ氏はドル相場の水準が高いまま大統領に就任することになる。
ゆえに、誰が大統領に就こうと、「これ以上のドル相場続伸は認め難い」というのが筆者の基本認識である。大統領が代わったからと言って、為替相場を評価する時間軸まで非連続的なものにすべきではなく、従前の動きからの連続性を重視すべきと考える。
日本人の目から見れば、2016年は大きくドル安が進んだように感じるかもしれないが、実はドルは対円でこそ下落したが、その他通貨に対してはそれほどでもない。例えば、今年1月から9月までの間に円は対ドルで16.2%も上昇したが、ドル相場全体の動きを示す名目実効為替相場は同期間に2.7%しか下落していない。円が対ドルで上昇した分は、英ポンドや中国人民元、メキシコペソといった通貨が対ドルで下落した分で完全に相殺されてしまったのだ。
それでもドルの名目実効為替相場が全体として下落したのは円の他にカナダドルやユーロなども対ドルで上昇したためだが、過去2年半の急騰を踏まえれば、2017年に調整余地を残してしまったという印象は拭えない。
現状、「トランプ大統領」に関しては分からないことが多く、語れることは少ない。だが、上述してきたように、為替予想を立てる上では「ドル相場は急騰後、調整していない」「トランプ氏はドル安志向が強い」「米財務省の通貨政策はもともとドル安方向」といった確実に言える事実が目につく。
こうした状況下、2017年にかけてのドル円相場は年度内に100円割れが定着した後、90円台前半を主戦場とする展開へ移るというのが筆者の抱くメインシナリオである。
*唐鎌大輔氏は、みずほ銀行国際為替部のチーフマーケット・エコノミスト。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構後、日本経済研究センター、ベルギーの欧州委員会経済金融総局への出向を経て、2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。欧州委員会出向時には、日本人唯一のエコノミストとしてEU経済見通しの作成などに携わった。2012年J-money第22回東京外国為替市場調査ファンダメンタルズ分析部門では1位、13年は2位。著書に「欧州リスク:日本化・円化・日銀化」(東洋経済新報社、2014年7月)
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisuke-karakama-idJPKBN13502X?sp=true
トランプ次期米大統領が覆す貿易政策
中国、NAFTA、TPPを標的に
By WILLIAM MAULDIN AND JOHN LYONS
2016 年 11 月 10 日 12:12 JST
世界最大の貿易経済国の新たなリーダーに選ばれたドナルド・トランプ氏は、世界貿易を覆すと訴えてきた。
トランプ氏の大統領選勝利で、米国が中国やメキシコなどの貿易相手国に好戦的な姿勢で臨む時代が幕を開けるかもしれない。同氏によれば、こうした国々は米国の雇用を犠牲にしたグローバル化の中で恩恵を受けている。トランプ氏の公約が実現すれば、貿易戦争を引き起こし、輸入品の価格を押し上げ、成長の原動力を国際貿易の拡大に頼ってきた世界経済を混乱させかねない。
同氏は、中国が不公正な貿易慣行を変えなければ、就任初日に同国からの輸入品に45%の関税を設定し、同国を為替操作国に認定すると言明してきた。カナダ、米国、メキシコを結びつける北米自由貿易協定(NAFTA)については、メキシコが再交渉に合意しなければ脱退すると述べている。
世界貿易は英国が欧州連合(EU)脱退を選択した時点ですでに打撃を受けているが、トランプ氏の当選で先行き不透明感が深まった。
「選挙の結果は何よりもまず、政策や政治、ひいては世界経済の一段の不透明感を暗示している」とオックスフォード・エコノミクスのエコノミスト、ルイス・クイジス氏は述べた。
その不透明感を裏付けるかのように、世界の株価は下落した。S&P500は夜間取引で5%安と、値幅制限いっぱいまで下げた。日経平均株価は約5%下落し、メキシコペソは対米ドルの過去最安値を更新した。円や金などの安全資産は上昇した。
トランプ氏が米国の主要貿易相手国を追い込むとの訴えを実行するかどうか、確実なことは全くわからない。しかし、大統領は議会の承認がない場合でさえも、貿易政策に関して大きな権限を持っている。
中国との貿易戦争は必至
例えば、鉄鋼などの製品で中国企業がダンピング(不当廉売)しているとの疑惑を受けて、米当局は関税を課して早急に対応するかもしれない。中国を為替操作国に認定すれば、米国が現行法の下で中国製品に反補助金関税を課すこともあり得る。一方、専門家によれば、中国は何らかの報復を検討する公算が大きい。
自由貿易を支持するピーターソン国際経済研究所の上席貿易アナリスト、ゲーリー・ハフバウアー氏は、中国との貿易戦争が起きることは間違いないと述べた。20年以上続いているNAFTAについては、トランプ氏が就任から数日中に撤廃検討のシグナルを発するとみている。
トランプ氏の側近は貿易戦争の可能性に取り合ってこなかった。彼らは、不動産業界の重鎮であるトランプ氏が持つ交渉力に関税の脅威が加われば、中国・日本・メキシコといった大型の貿易相手国は補助金交付をやめ、米製品に対する障壁を引き下げるとの見方を示してきた。
エコノミストや貿易専門の法律家によると、トランプ氏は必要であれば、主要貿易相手国に関税を課すために議会が大統領に付与した非常手段を行使する可能性もある。
だが貿易推進派は、その結果として米国の利益が損なわれたり、米国の輸出市場縮小や輸入品価格上昇で経済が減速したりしかねないと懸念している。さらに、経済の先行き不透明感から銀行が融資を制限するかもしれないとエコノミストらは述べている。
ピーターソン国際経済研究所の研究によると、中国とメキシコに対する大型関税と両国からの報復を織り込んだシナリオでは、米国はリセッション(景気後退)入りし、500万人の雇用を失う可能性がある。
米中ビジネス協議会の中国事業担当バイスプレジデント、ジェイク・パーカー氏は「われわれはトランプ大統領がトランプ候補より繊細であることを期待している」とし、「保護主義の壁を築くよりも、米国の輸出を振興すべきだ」と述べた。
トランプ氏は、自身の政策で雇用を米国に取り返すと話してきた。このメッセージは、グローバル化が米国の多くを置き去りにしたとの不満を持つ有権者の共感を呼んだ。勝利演説では直接には貿易に言及しなかったが、他国との「偉大な関係」を維持すると言明。「皆に公平に対応する」と述べた。
TPP採決、共和党議員に動機なし
しかし、トランプ氏は企業の「オフショアリング(海外委託)」製品を狙い撃ちにする計画の一環として、メキシコから輸入した米企業の製品に課税すると訴えてきた。実行されれば、フォード・モーターやユナイテッド・テクノロジーズ傘下のキャリア・コーポレーションといった企業が打撃を受けかねない。
世界貿易のルールの書き換えは、世界貿易の拡大から恩恵を受けてきた新興国の製造業に多大な影響を及ぼす可能性がある。
中国は電子レンジから衣類まであらゆるモノの製造を支配し、世界2位の経済大国に成長。どの国よりも多くを得てきた。関税は、トランプ氏の主張より小幅であっても大きな影響を及ぼすかもしれない。香港の大和証券によると、中国は輸出品に15%の関税を課されれば、経済が1%縮小する。
中国が減速すれば、それは最大の貿易相手国である米国ではなくアジア諸国に波及するだろう。米国の盟友である韓国、日本、台湾も影響は免れない。
起こりうる変化にアジアの多くの地域は気をもんでいる。みずほ総合研究所の菅原淳一主席研究員は、同氏の発言がどこまで実際の政策に盛り込まれるかはまだ不明だとしている。
トランプ氏の勝利はまた、オバマ大統領の環太平洋経済連携協定(TPP)の運命を決定づける。同氏はTPPについて、米国を「レイプ」したい特殊な利害関係者の仕業だと非難していた。
オバマ氏は、共和党議員と組んで選挙後の「レームダック(死に体)」会期にTPPを承認させる意向だった。ただ、かつてTPPを支持していたヒラリー・クリントン氏が当選していた場合でさえ、厳しい戦いになっていたとみられる。
共和党議員にはもはや、TPPを採決に持ち込む動機がほとんどなくなった。トランプが就任後の撤退や実施阻止、賛成した議員の処罰をちらつかせることは簡単だ。
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トランプ氏の経済顧問、FRBをこう見る
トランプ氏が大統領として下すことになる重要な経済政策判断の一つはFRB理事人事だ
By DAVID HARRISON
2016 年 11 月 10 日 13:10 JST
米大統領選で勝利した共和党のドナルド・トランプ氏が大統領として下すことになる重要な経済政策判断の一つは、連邦準備制度理事会(FRB)理事人事だ。定員7人のFRB理事のうち現在は2人が空席で、議長と副議長は2018年中に任期満了を迎える。
候補者を指名するにあたりトランプ氏が何を重視するかは分からない。
金融政策についての同氏の姿勢は選挙戦中にたびたび変わった。5月のCNBCとのインタビューでは「私は低金利主義者だ」と語ったが、9月には、FRBは人為的に金利を低く抑えて資産バブルをあおり、「見せかけの経済」を作り出していると非難した。
トランプ陣営の経済顧問チームのFRBについての考え方は一様ではない。リセッション(景気後退)に陥るリスクを減らすためにFRBは金利を低く抑えるべきとの意見がある一方、多くのメンバーは、FRBはオバマ政権を助けるために利上げを見送り株価押し上げを図ってきたと主張している。
何人かの顧問のコメントを以下に挙げる。
――ローレンス・クドロー氏(エコノミスト)
「FRBに関して言えば、この状況下では政策を据え置くきだ。利上げすべきではない。政策金利を引き上げた2011年には、量的緩和第2弾が行われる中で消費者物価指数(CPI)の伸び率は3.8%に上昇した」
――ジュディ・シェルトン(エコノミスト)
「経済成長のてこ入れを意図したFRBの超低金利政策を受け、富裕な投資家や借り手企業の手元に割安な資金が大量に流れ込む一方、銀行預金者はほぼゼロの金利を受け入れざるを得ない状況が続いてきた。だが、非従来型の金融政策は期待されていた景気押し上げ効果を生んでいない。さらに悪いことに、FRBが信用市場や投資市場で大規模に介入してきたことで、金融の安定を脅かす大きなゆがみが生じている。今後、米金融業界に対する救済が必要になった場合、実体経済がその負担を吸収できるとは思えない。金融偏重のきらいがあるだけでなく、利益以上に害をもたらしているかもしれないFRBの政策に、国民の我慢にも限界がある」
――ピーター・ナバロ氏(カリフォルニア大学アーバイン校経済学・公共政策教授)
「FRBは景気を回復させる方法を知らないオバマ政府と連携して金利を低く抑え、この見せかけの状況を作り出してきた。FRBは調子を合わせているだけと言ってもいいだろう」
――トーマス・バラック氏(コロニー・キャピタル創業者兼最高経営責任者=CEO)
「(FRBの低金利政策が)見せかけの刺激で、幻想であるのは言うまでもない」
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トランプ氏、FRB議長の辞任求めず=経済顧問
Kate Davidson and GREG IP
2016 年 11 月 10 日 08:49 JST
米次期大統領に選出されたドナルド・トランプ氏の経済顧問は9日、同氏が連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長の辞任を求めていないことを明らかにした。ここ数週間、トランプ氏がイエレン議長の辞任へ圧力をかけるとの憶測が広がっていた。
アトラスネットワークのシニアフェローでトランプ氏の金融政策顧問を務めるジュディ・シェルトン氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、「トランプ氏がイエレン氏に辞任を強く求めているということは全く無い」と語った。
イエレン議長の任期は2018年2月に満了する。シェルトン氏は、トランプ氏がイエレン議長を2期目に指名せず、他の人物を起用する見通しを示唆した。
トランプ氏の発言を言い換えるかたちで、「自身とより考えの近い人が望ましいと言っている」と説明した。
トランプ氏は選挙キャンペーンの最後の1週間、FRBに集中砲火を浴びせた。オバマ大統領、ひいては民主党候補のヒラリー・クリントン氏を助けるために金利を低く抑えているとして、FRBとイエレン議長を非難した。イエレン議長は「政治的行為を働いている」とも責め立てた。
半年前までトランプ氏は、イエレン議長の仕事ぶりがまずいとは思わないとしていた。ただ、18年2月の任期満了に伴い共和党所属の議長に交代させたい考えを示していた。
イエレン氏は、たとえ議長を退任しても、理事としての任期が満了する24年1月までFRB内にとどまることができる。だが、FRB議長は議長としての任期が終わった時点でFRBを離れるというのがこれまでの慣例だ。
シェルトン氏は9日、「FRBの政策に立ち入るべきでないとの考え方を(トランプ氏が)受け入れたことは一度もない」と話した。
シェルトン氏はトランプ氏の政権移行チームについて明らかにしていないが、今回の発言を聞く限り、FRBへの監督強化を求める共和党の取り組みは来年、ホワイトハウスで歓迎される可能性がある。
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トランプ氏当選で、銀行規制の緩和期待高まる
トランプ政権では、民主党上院議員のエリザベス・ウォーレン氏やバーニー・サンダース氏が主張するような厳しい銀行規制にはならないと予想される
2016 年 11 月 10 日 13:50 JST
米国のドナルド・トランプ次期大統領については、投資家には見当がつかないことが数多くある。一つだけ明確なのは、中小を中心に銀行業界は新政権の誕生を歓迎すべきだということだ。
米大統領選で共和党のトランプ氏が予想外の勝利を収めたのを受け、株式市場は当初下落したが、経済成長の加速や規制緩和が見込めるとして銀行株はその後急伸した。株価は銀行の規模にかかわらず上昇し、KBWナスダック銀行株指数は約5%高と、2月以来の急騰となった。
ラファーティ・キャピタル・マーケッツのアナリスト、ディック・ボーブ氏は、銀行規制強化を提唱する民主党上院議員のエリザベス・ウォーレン氏とバーニー・サンダース氏に言及した上で、トランプ政権では「どのような法律も両氏のような主張を含まないだろう」とし、同氏の当選以上に銀行にとって有益な出来事は想像できないと述べた。
何らかの規制緩和が行われた場合、中小銀行は大銀行よりも業績向上につながる可能性がある。
トランプ氏は総じて規制は緩やかであるべきとの立場から、米金融規制改革法(ドッド・フランク法)は小規模銀行にとって不必要に厳しいと批判してきた。米政府も米議会も共和党が主導権を握ったことで、米消費者金融保護局(CFPB)と証券会社の受託者(フィデュシアリー)責任に関わる新たな規則は縮小される可能性があるとみられている。
今後予想される変化として、システム上重要な金融機関(SIFI)と見なされ米連邦準備制度理事会(FRB)のストレステスト(健全性審査)の対象となる金融機関の資産規模の下限が引き上げられる可能性がある。カウエンのアナリスト、ジャレット・サイバーグ氏は、米議会が資産規模の下限を5000億ドル(約52兆6000億円)に引き上げるか、またはこの規則を撤廃する道が開かれたと考えていると言う。現在は資産規模の下限を500億ドルとしているため、多くの中規模銀行がストレステストを受けなければならない。
投資家は、費用のかさむストレステストを受ける必要がある中規模銀行にとってトランプ氏の当選は朗報だと受け取ったようだ。資産規模引き上げを求めて強力なロビー活動を展開していた中規模銀行ザイオンズ・バンコープの株価は9日、7%近く上昇した。
http://jp.wsj.com/articles/SB11842517604067003472604582427520963012192
米金融当局、1年半で首脳陣など様変わりも−トランプ次期政権で
Christopher Condon、Jeanna Smialek
2016年11月10日 08:23 JST 更新日時 2016年11月10日 11:09 JST
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2018年にはイエレンFRB議長、フィッシャー副議長が任期切れ
上下両院を支配する共和党は金融当局の独立性を狙い撃ちか
米連邦準備制度の首脳陣、権限、政策は今後1年半で様変わりする可能性がある。
トランプ次期大統領は、イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長の4年の任期が切れるまで、同議長を更迭することはできない。だが、トランプ氏は2018年半ばまでにFRBの首脳陣の一部を交代させ、金融政策策定の枠組みや規制政策を変更させることも考えられる。上下両院を支配する共和党議員の一部は、政治的な影響からの米金融当局の独立性を狙い撃ちするかもしれない。
FRBの首脳陣交代か
FRBの首脳陣交代か Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg *** Local Caption *** Janet Yellen; Stanley Fischer
米ブルッキングズ研究所のアーロン・クライン研究員は「トランプ氏は米国の中央銀行を大幅に刷新する能力を持つことになる」と指摘した。
ただ、変革の可能性をめぐる議論には一つの重大な警告が伴う。トランプ氏がどのような人物をFRB理事に指名することになりそうかや、どんな規制面の手法を好むかについてさえ、FRBウオッチャーの誰として予測するだけの確信がないように見受けられる。トランプ氏は選挙戦で、米国内で運営する銀行への制限を大幅に増やした10年制定の金融規制改革法(ドッド・フランク法)を批判した。しかし、同氏はその一方で、銀行貸し出し業務と証券引き受け業務を再び切り離す考えを示した。
広範な選択肢
米ジョージ・ワシントン大学のサラ・バインダー教授(政治学)は「トランプ次期大統領に関する会話には、必ず予測不可能の星印が付く」と語った。
FRB理事(議長、副議長を含め定員7人)の顔ぶれ変更は、2人の空席を埋めることからスタートすることになるかもしれない。
FRBの報道官は取材に対する返答を控えた。
また、18年2月にイエレン議長、同年6月にはフィッシャー副議長が任期切れを迎えるため、トランプ氏はこれら2つのトップ人事の指名の機会を持つ。トランプ氏は選挙戦を通じ、オバマ大統領がホワイトハウスを去るまで低金利を維持して景気てこ入れを図っているとしてイエレン議長を非難してきた。
エコノミストの多くは、イエレン議長がトランプ次期大統領の下で進んで辞任する可能性に否定的だが、トランプ氏が同議長ないしフィッシャー副議長を再指名すると見込むエコノミストはほとんどなく、次期大統領は自身が好む後任候補に広範な選択肢を得る。
JPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏(ニューヨーク在勤)は次期政権のFRB首脳人事に関し、このところの連邦公開市場委員会(FOMC)声明で「説明されてきたような漸進的な進路をたどる公算が小さい人々が起用される可能性がある」と語る。
ジェフリーズのチーフ金融エコノミストを務めるウォード・マッカーシー氏(ニューヨーク在勤)はこうした見方にもっと懐疑的だ。マッカーシー氏は「民主党候補ヒラリー・クリントン氏をイエレン議長が助けようとしていると、トランプ氏が受け止めていた時には、同氏は恐らく議長にとても批判的だった」とした上で、「トランプ氏が大統領に就任すれば、好景気を望むであろうため、金融当局が緩和的な姿勢を取ることにもっと共感を抱くだろう」との考えを示した。
原題:Fed Faces Overhaul as Washington Braces for Trump-Led Shakeup(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-09/OGECGD6S973G01
トランプ氏の人事助言役に金融規制強化に反対の元SEC委員−関係者
Ben Bain、Robert Schmidt
2016年11月10日 10:36 JST
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ポール・アトキンス氏はブッシュ前政権時代にSEC委員を務めた
アトキンス氏起用は金融規制ルールを緩和する方向性を示唆か
米国のドナルド・トランプ次期大統領は、金融規制当局の新たなトップを選定する際の助言役に、かつて論争の的となった幾つかの金融規制ルールに反対したことで知られる元米証券取引委員会(SEC)委員を起用する方針だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。
この関係者によれば、ブッシュ前政権時代にSEC委員を務めた共和党員のポール・アトキンス氏がトランプ氏の政権移行チームの一員に選ばれた。アトキンス氏の同チームでの立場は公的なものではないとして、同関係者は匿名で明らかにした。アトキンス氏は現在、コンサルティング会社パトマック・グローバル・パートナーズ(ワシントン)の最高経営責任者(CEO)を務めている。
アトキンス氏に電子メールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。
同氏はSEC委員時代、ヘッジファンドのSECへの登録義務付けや、投資信託会社の投信運用委員会の委員長ポストに会社経営から独立した人材を起用するよう義務付ける規定に強く反対した。また企業への多額の制裁金についても、不正を行った者よりも株主に不当に多大な損失をもたらすとして、しばしば異を唱えてきた。
アトキンス氏の起用はトランプ氏の金融市場規制プランの方向性を示唆する可能性がある。トランプ氏当選が決まって以来、投資家の間では、米金融規制改革法(ドッド・フランク法)の下で導入されたものを含む金融ルールの緩和をトランプ氏は目指すのではないかとの観測が広がっている。
トランプ氏のアトキンス氏起用については、先に米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が報じていた。
原題:Trump Said to Tap Critic of Wall Street Rules to Aid Transition(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-10/OGEHDS6JTSJV01
コラム:政界経験乏しい「チームトランプ」のお手並み拝見
Gina Chon
[ニューヨーク 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ次期大統領の政策運営は、さながら新たな経済理論の実験といった様相になるかもしれない。
既得権益層への怒りに訴えて勝利した不動産王のトランプ氏だが、結局はゴールドマン・サックスや買収ファンドのKKR、数々のヘッジファンドに属する金融家から助言を仰ぐ可能性がある。政界経験に乏しい経済チームが米国経済を好転させられるのか、お手並み拝見といったところだ。
トランプ氏は民主党のヒラリー・クリントン候補について、ウォール街と癒着しており、銀行の言いなりだと攻撃してきた。しかしトランプ氏自身が金融業界の金持ちエリートに助けを求めるだろう。
選対の財務責任者を務めたゴールドマン・サックス出身のスティーブン・ムニューチン氏は、財務長官の最有力候補だ。ヘッジファンドを運営するジョン・ポールソン、アンソニー・スカラムッチ両氏も選挙戦でトランプ氏に政策助言を行っており、新政権でも同様の役割を果たす可能性がある。
トランプ氏は環太平洋連携協定(TPP)その他の貿易協定を破棄する可能性をちらつかせているため、この分野でどのような人材を起用するかは要注意だ。同氏は通商代表部(USTR)を廃止して商務省に統合する意向を示している。共和党の財務委員長でありKKRの上席顧問を務めるルー・アイゼンバーグ氏や、富豪投資家のウィルバー・ロス氏がこの機関のトップに起用されるかもしれない。
トランプ氏は米最大手企業100社の最高経営責任者(CEO)からは支持を得られなかったが、産業界からも助言を得ている。石油会社コンチネンタル・リソーシズのハロルド・ハムCEOがエネルギー相の有力候補となりそうだ。
これらの側近達は、ほとんどが政界での経験を持たない。議会上下両院を共和党が制したことで、トランプ氏とその仲間達にとって少しは政策を進めやすくなるかもしれない。しかし上院で共和党は過半数を辛うじて上回ったにすぎず、法案通過には民主党の助けが必要になるだろう。
選挙戦では往々にして、政治のアウトサイダーが闘いやすい。しかし政治を司るには一連の専門技能が必要とされる。「チーム・トランプ」は間もなく、専門のビジネスで経験を積んでいるからといって、経済全体を繁栄させる仕事に直結はしないことを思い知るだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
http://jp.reuters.com/article/column-team-trump-idJPKBN13506S?sp=true
米労組、雇い主に有利な政策転換に懸念 トランプ氏勝利で
[ニューヨーク 9日 ロイター] - 米国の労働組合は新たな共和党政権下で、労働法や規制の抜本的な改革に直面する恐れがある。新たな政権が雇い主に有利な政策に転換するとみられるためだ。
共和党は8日、大統領選に加え上下両院の過半数も獲得。トランプ氏と上院は次の連邦最高裁判事を指名する予定だが、最高裁では労働関連の訴訟も扱う。
米国州郡市町村職員連盟(AFSCME)のリー・サンダース代表は「とても難しい時期になりそうだ」と述べた。
懸念として、最高裁で今年争われた訴訟を挙げた。公共部門の組合が勝利を収めたが、評決では4─4と意見が分かれた。
最高裁は9人の裁判官で構成されるが、スカリア判事が死去したことに伴い、リベラル派と保守派が4人ずつで拮抗。トランプ氏がスカリア氏の後任に保守派の判事を任命すれば、状況が一変する可能性がある。
また、独立行政機関の全米労働関係委員会(NLRB)も、共和党の指名者が率いる見通し。
http://jp.reuters.com/article/usa-election-unions-idJPKBN1350C5
トランプ氏勝利、エコノミストはこうみる
オックスフォード・エコノミクスでは、トランプ政権が保護貿易や減税、財政出動に関する主張を撤回するならば、当初の影響は米経済にとって一時的に好材料でさえあるとみている
By JEFFREY SPARSHOTT
2016 年 11 月 10 日 14:05 JST
今年の米大統領選挙では共和党のドナルド・トランプ氏が勝利する一方、連邦議会議員選挙では共和党が上下両院で過半数議席を確保した。市場には驚きが広がり、米国の経済政策は新たな方向へ向かう可能性がある。エコノミストらはいま、トランプ氏の選挙公約や議会共和党の優先課題、新政権が優先するとみられる税制や規制、貿易、移民、医療など多数の主要問題について読み解こうとしている。各社の反応は以下の通り。
−PNSフィナンシャル・サービシズのスチュアート・ホフマン氏
トランプ氏の経済政策には決まっていない問題が多いが、戦後の米国の政策を導いてきた基本的な超党派の合意形成とは全く異なるものになる可能性が高い。同氏は貿易協定に極めて懐疑的で、移民の厳しい制限を求めている。また、富裕層の個人所得税の大幅減税や大規模なインフラ計画、規制撤廃やオバマケア(医療保険制度改革法、ACA)の撤回も呼び掛けている。共和党が議会多数派であるため、トランプ氏の政策提案の多く、特に個人所得税の減税やACAの撤回は成立する可能性が高い。
−キャピタル・エコノミクスのポール・アシュワース氏
トランプ氏の融和的な勝利演説は、選挙運動中のような扇動家というよりも指導的政治家らしい大統領になり得ることを示しており、劇的な勝利直後に急落した株価はいくらか持ち直している。だが結局のところ、気性の荒い性格であることは繰り返し証明されている。さらに、トランプ氏も側近の多くも政策経験がない。これらの要素は、不確実性や市場の変動率が数年までいかなくとも、数カ月は高いままであることを暗示している。
−エコノミック・アウトルック・グループのバーナード・ボーモール氏
トランプ氏の勝利に伴い、当社の国内総生産(GDP)見通しはかなり変化した。現在は不確実性が民間部門を覆い尽くしている。そうした不確実性のコストが明確になるはずだ。経済成長はかなり大きく方向転換するだろう。来年の成長率は従来予想の2.7%ではなく、1%に満たないとみており、2四半期連続でマイナス成長となるリセッション(景気後退)の確率は60%と予想している。
−HSBCのケビン・ローガン氏
全体として、トランプ政権は財政政策の大きな変化につながるとみている。税収が減り赤字が拡大し、貿易や国際資本動向は制限され、政府の規制は減るだろう。トランプ氏の移民政策が実施された場合、労働力は大幅に減少する恐れがある。
−RSM USのジョセフ・ブルスエラス氏
トランプ氏の逆転勝利と共和党による上下両院の過半数確保は、政府の成長への取り組み方と、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策へのアプローチの双方に大きな変化が待ち受けていることを示唆している。最も明白なのは、サプライサイドの減税再開、大規模な財政赤字、より伝統的な金融政策への回帰とみられ、いずれは短期および長期金利の上昇につながるはずだ。
−プレステージ・エコノミクスのジェーソン・シェンカー氏
大統領選挙の結果でわれわれの見通しが変わることはない。経済は減速しており、リセッションのリスクは高まっている。
−ドイチェ・アセット・マネジメントのステファン・クロイツカンプ氏
トランプ氏は大統領選に勝利したばかりで、過去に政治経験はない。明らかに飲み込みは早い。彼が努力を成功に変える能力を見くびってはならない。選挙遊説でのパフォーマンスにはむらがあったため、政治が金融市場の不安を引き起こすのは、今回の反応が最後ではないかもしれない。
−ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのカール・ワインバーグ氏
不確実性の時期へと放り出された。今言えるのはこれくらいだ。
−オックスフォード・エコノミクスのアラン・スレーター氏、ガブリエル・スターン氏
トランプ氏の勝利に対する市場の反応はいまのところ、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票直後よりも落ち着いている。これは彼が実際にどれくらい過激な動きをするのか、議会は彼の政策をどの程度骨抜きにできるのかが不透明なことの表れだ。トランプ大統領が保護貿易に関する発言を撤回し、減税や支出に重点を置いた場合、当初の影響は米経済にとってプラスになる可能性さえある。当社では引き続き、FRBが12月に利上げすると予想している。市場の反応がさらに悪化した場合に限りFRBは先送りするとみている。
−TD証券のエコノミストら
将来への行程表はトランプ氏の政権移行チーム次第だ。彼のチームとその優先課題が今後数週間で明らかになるだろう。そのメッセージが財政拡大、規制撤廃、税制改革というものである限り、リスク資産は安定するだろう。赤字拡大が織り込まれれば、利回り曲線は大幅にスティープ化する可能性がある。ただ、保護貿易や関税、移民、国外退去やFRB指導部の交代に重点が置かれる限り、株価はさらに下落し、金利の上昇は抑えられる可能性がある。目先はボラティリティーが高止まりするはずだ。
−インディードのジェド・コルコ氏
米国民の多くにとって選挙結果は衝撃的で、逃げ道を思い描いている。トランプ氏の当選直後の数時間、国民は前の晩の10倍ものペースでカナダに職を探していた。もちろん、衝撃が薄れた後にこうした求職者のどの程度が移住するか判断するのは時期尚早だ。ただ、求職の急増が示しているのは、どれほど多くの国民がトランプ氏の勝利に驚き、国外の選択肢を考えているかということだ。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjGv9rzuJ3QAhUDO7wKHcpqDTAQqQIIHTAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10192246251775523818204582427532112236736&usg=AFQjCNGGhK28mvPjkhHq_UIpnePtvQNz4g
トランプ氏の急務と試練
見習うべきはロナルド・レーガンか
2016 年 11 月 10 日 12:00 JST
ドナルド・トランプ氏が予想を覆してヒラリー・クリントン氏に勝ったことは、米国の政界ではそうめったに起こることのない政治的激震だ。最後に起きたのは、19世紀のアンドリュー・ジャクソン第7代大統領が、善かれ悪しかれ、確立された体制に盾突いた時だった。今、政界やメディアのエスタブリッシュメント(既成勢力)は混乱している。多くの有権者もそうであることは疑いない。
トランプ氏が勝利する可能性は極めて低いものだった。そして、共和党はもう終わったと切り捨てた政治アナリストやウォール街の観測筋は、今年の大統領選で生じた数々の驚くべき展開を無視した。クリントン氏は9日未明にトランプ氏に電話をかけ、敗北を認めた。トランプ氏はサウスイースト(南東部)、アッパーミッドウエスト(中西部の北側)、マウンテンウエスト(西側の山岳地帯)の重要な州を制した。
たとえトランプ氏の当選が国民の不安を瞬間的にとらえただけであるとしても、有権者はその選択の意味を理解していたわけであり、彼らの判断は非伝統的かつ苦い選挙の年に起こった単なる偶然の出来事として片づけることはできない。トランプ氏は政治のあらゆる場面でさまざまな好機を見つけることに、ほとんど誰も経験したことのない喜びを感じることができるだろう。
トランプ氏の支持基盤は不満を抱えた民衆の力の証しだ。その多くがフロリダ、オハイオ、ウィスコンシンといった、4年前の共和党候補ミット・ロムニー氏が制することのできなかった州の有権者だった。オバマ大統領はまるで彼らのニーズや望みが非論理的であるかのように統治することが多すぎた。有権者に対するこうした軽視が政治的な挑戦を生む土壌を形成した。
政治の専門家が学ぶべき教訓――本紙も含めてだが――は有権者の心情と、戦わずして景気低迷を受け入れることはない一般国民の拒絶反応にもっと敬意を払うことだ。われわれはオバマ大統領がトランプ氏のやり方で反論に出るとは思ってもみなかった。政治経験がなく、公共政策に関する信念が特に当てにならないトランプ氏のやり方でだ。
トランプ氏は自身の政策論で勝利したわけではなさそうだ。彼にそれがあったとしての話だが。有権者は変革をもたらす主体としてトランプ氏をとらえ、進歩主義的な政策案とクリントン氏による「3期目のオバマ政権」を拒絶した。つまり彼は「歩く不満」なのだ。この国にできる精一杯のことは現状維持であるかのように景気停滞に無関心なリベラル派全般に対する非難を体現したのがトランプ氏だ。
トランプ氏の政治経験のなさや激しい気質に賭けてみたいと思うほど、有権者は不満を募らせていた。資金集めや投票推進運動のような従来型の選挙活動ではクリントン陣営が優位だったにもかかわらず、有権者は無秩序なトランプ氏に賭けた。トランプ氏は現代史上、最も非伝統的な選挙戦を繰り広げていたのに、トランプ氏の気性では大統領になる資格がないと訴えていたクリントン氏を負かした。
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問題は当選したトランプ氏が、これから自分が担うことになる膨大な責務を果たすかどうかだ。より良い未来への期待を抱いて、大勢の米国民が彼に一票を投じた。中国やロシアといった敵対国は時を待たずして新任の最高司令官の本気度を試してくるだろう。
株価指数先物は英国が欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を決めたときのように、トランプ氏勝利の一報を受けて大きく下げた。だがトランプ氏が責任ある行動をとるなら回復するだろう。そうでなければ、投資家がおびえ、資本の流れが止まり、すでに企業投資の弱い経済が再びリセッション(景気後退)に陥る可能性がある。
誰が当選しても同じことだが、トランプ氏の仕事は自信と安心感を国民に与えることだ。選挙の翌朝、トランプ氏が国を結束させ、全ての国民の「可能性」を解き放つと約束したのは適切だった。
トランプ氏の最初の試練のひとつは人事になるだろう。財務長官と国務長官、さらにホワイトハウスのウエストウィング(大統領執務室や閣議室などがある西棟)のスタッフをまず決めなければならない。トランプ氏の周囲には、ホワイトハウスの権力の使い方を熟知し、マイク・ペンス氏を副大統領に選んだときのように、彼が知らないことを教えられる聡明かつ堅実な人材がいるだろうか。それとも、トランプ氏は自身の直感とわずかな仲間に頼り続けるのだろうか。
張り詰めていたうえに分断を招いた今回の選挙戦を終えて、トランプ氏はクリントン氏に対しても寛大さを示すという適切な対応を見せた。さらに一歩進んで、クリントン氏を捜査すると息巻いた選挙中の脅しを撤回し、連邦議会の共和党との戦いも止めるべきだ。
協力者を作ることが急務であり、議会との関係修復に着手すれば仲間を見つけることもできるだろう。ポール・ライアン下院議長とは政策上の相違点があるが、今回の選挙で再び共和党が多数党となった上下両院はトランプ政権の成功に重要だ。トランプ氏はまた、上院の民主党議員とも接触を図るべきだ。これまでのトランプ氏は現実であれ想像であれ、敵だと思う相手には本能的に復讐してきた。だが今後、相手を追放するようなことがあれば、政治資本の無駄使いになる。トランプ氏とは意見を異にする共和党員でさえ、トランプ氏に成功してもらいたいと望んでおり、そのための手助けをしたいと思っている。
トランプ氏は、ジャック・ケンプ氏をはじめとする下院共和党議員が準備した改革案を採用したロナルド・レーガン氏を手本にするのが賢明だろう(訳注:故ケンプ氏は1996年大統領選の副大統領候補)。そうした政策案は下院共和党の「ベターウェイ」計画すでに盛り込まれている。トランプ氏が選挙演説用に準備した政策案と重複する部分も多く、経済を迅速に活性化し、所得の伸びと雇用創出に貢献するだろう。保護貿易主義やメキシコとの間に築く壁はそれと正反対の効果をもたらすだろう。
全国民のために雇用創出と所得増につながる経済成長を最優先にするという約束を守るなら、トランプ氏が成功する可能性はある。有権者は自分たちの暮らしに直結する目に見える成果で大統領を評価する傾向にあり、豊かさは多くの問題を解決する。
トランプ氏が選挙中の発言とは違った形で国を統治できるというのが前提条件であることは認識している。だが、大統領職という立場は時に、意外な人を大きくするものだ。「勝利、勝利、勝利」という言葉があふれれば、より楽観的で包含的な政治の進め方を見つけるかもしれない。この国の礼譲と良心のためだけにでも、そうあってほしいとわれわれは望む。新たに大統領に当選した人物は自身がまもなく就くことになる公職こそが、究極の「アート・オブ・ザ・ディール」だと悟るだろう(訳注:アート・オブ・ザ・ディールはトランプ氏の著作で「取引の技術」という意味)。
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トランプ氏を当選させたようなポピュリズムは米国史においては珍しいものではない。だが、実際に権力を握るのは珍しい。向こう数週間から数カ月間はリーダーとしての資質が試されるだけでなく、連邦主義者が確立した分権の強さと、激しく分裂した政党間の平和的な政権移行という米国の伝統が試される期間でもある。
1865年にエイブラハム・リンカーンが2期目の就任演説を行った際、「誰に対しても恨みを抱かず、すべての人に慈しみを持って」和解と家庭内の平和に向けて歩もうと「同胞諸君」に呼びかけた。この16代大統領の言葉はどんな時でも思い起こすに値する。だが、8日のような長い夜の後ではなおさら価値がある。
トランプ氏、勝利までの道のり
ドナルド・トランプ氏が大方の予想を裏切ってホワイトハウスへの道を勝ち取った。出馬表明やヒラリー・クリントン氏との討論会など、トランプ氏の選挙戦を写真で振り返る。
Amelia Good, 6, wears a crown made from pipe cleaners during a campaign rally for Mr. Trump at the Orlando Amphitheater at Central Florida Fairgrounds Nov. 2 in Orlando, Fla.
Donald Trump speaks at a rally on May 25 in Anaheim, Calif.
Mr. Trump announcing his candidacy in his hometown of New York on June 16, 2015.
Mr. Trump tosses a water bottle while speaking to supporters during a rally at the Fort Worth Convention Center on Feb. 26, 2016, in Fort Worth, Texas.
New Jersey Gov. Chris Christie speaks to Mr. Trump as Florida Sen. Marco Rubio stands close by during a commercial break at the Republican primary debate at Saint Anselm College in Manchester, N.H. on Feb. 6, 2016.
Mr. Trump hands a five-dollar bill back to a supporter after signing it.
Karen Pence (left), wife of Republican vice presidential nominee Mike Pence, waves to supporters with Melania Trump, Mr. Trump’s wife, at a rally on Nov. 3 at the Main Line Sports Center in Berwyn, Penn.
Mr. Trump speaks with former New York Mayor Rudy Giuliani (right) as he visits Gettysburg National Military Park on Oct. 22.
Mr. Trump’s children, Donald Trump Jr. (left), Ivanka Trump and Eric Trump take part in the roll call in support of their father during the Republican National Convention on July 19 at the Quicken Loans Arena in Cleveland, Ohio.
Democratic nominee Hillary Clinton and Mr. Trump take part in the final presidential debate at the Thomas & Mack Center on the campus of the University of Las Vegas on Oct. 19.
Mr. Trump with vice presidential candidate Mike Pence at the Republican National Convention in July.
Texas Sen. Ted Cruz hugs his father, Rafael Cruz, and wife Heidi Cruz after announcing the suspension of his campaign on May 3 at the Crowne Plaza Downtown Union Station in Indianapolis.
Mr. Trump walks onstage past CNN anchor Wolf Blitzer during the Republican primary debate on Dec. 15, 2015 in Las Vegas.
A news ticker in New York displays the latest stories from the campaign trail during the final weeks of the election.
Mr. Trump's plane passes Mrs. Clinton's campaign plane at McCarran International Airport in Las Vegas on the eve of the candidates’ third and final presidential debate.
Mr. Trump and Mexican President Enrique Peña Nieto prepare to deliver a joint press conference in Mexico City on Aug. 31.
Amelia Good, 6, wears a crown made from pipe cleaners during a campaign rally for Mr. Trump at the Orlando Amphitheater at Central Florida Fairgrounds Nov. 2 in Orlando, Fla.
Donald Trump speaks at a rally on May 25 in Anaheim, Calif.
米大統領選特集
トランプ氏政権移行チーム、閣僚の人選に着手
トランプ氏を勝たせた「嘆かわしい人々」
トランプ氏の勝利、FRBへの意味合いは
http://jp.wsj.com/articles/SB11842517604067003472604582427253481932554?mod=wsj_nview_latest
トランプ氏勝利後初日に早くも明暗−世界の市場の勝者と敗者
Phil Kuntz
2016年11月10日 08:39 JST
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• 石炭会社の債券や薬品株、防衛関連株、ロシア株が上昇
• メキシコ・ペソや米国債相場、再生可能エネルギー関連株に打撃
ドナルド・トランプ氏の予想外の米大統領選勝利は、早くも世界の市場や産業で勝者と敗者を分けている。トランプ氏の石炭重視姿勢が米アパラチア山脈にある鉱山会社を勇気づけた一方、メキシコ・ペソはパニック売りを浴びた。変化はゆっくりと伝わる物が多いが、ほとんど時間を置かずに反応が出た市場を以下に挙げる。
勝者
民間の拘置・矯正施設関連銘柄:移民の拘束で民間の拘置・矯正施設をトランプ氏が利用するとの臆測が広がり、コレクションズ・コーポレーション・オブ・アメリカの株価は日中に前日比で一時60%上昇した。ジオ・グループは一時35%高。
防衛関連企業:トランプ氏は米国の防衛費増強を約束していることから、ロッキード・マーチンやノースロップ・グラマン、レイセオンといった関連株が金融危機以降で最大の上昇を記録。
石炭:トランプ氏勝利は、債務や過去数十年で最大の値下がりに見舞われる石炭業界に新たな活力を吹き込んだ。石炭王ロバート・マレー氏は発表文で今回の選挙について「米国にとって素晴らしい日」になったとコメントし、全てのエネルギー源が公平な条件で競争できる国家政策を期待すると述べた。同氏の会社マレー・エナジーの債券価格は1年4カ月ぶりの高値を付けた。
ロバート・マレー氏
Photographer: Kenny Crookston/Bloomberg
石油・天然ガス掘削会社:「フラッキング(水圧破砕法)」に楽観的なトランプ氏は、規制緩和や、連邦政府所有地を掘削会社にさらに開放することを約束している。
薬品株:共和党が上下両院を制し、トランプ氏が大統領選で勝利したため、民主党がちらつかせていた価格規制はもはや懸念材料ではなくなった。ファイザーなどの銘柄が市場取引開始早々に最大の勝者の一角となった。
ロシア株:ロシアのプーチン大統領を強力なリーダーと呼んだトランプ氏は、クリミア併合を受けた企業への制裁措置を解除するとの観測が広がり、指標のMICEX指数は9カ月で最大の上昇となった。
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ペニャニエト大統領
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Photographer: Jason Alden/Bloomberg
敗者
メキシコ・ペソ:トランプ氏が選挙戦で頻繁にメキシコへの厳しい姿勢を示したため、同国中に不安が広がっており、ペソは過去20年余りで最大の下げを演じるペースとなっている。同国のペニャニエト大統領にとって今回の選挙結果は特に手痛い。8月には、トランプ候補をメキシコ市に招いて会談したものの意見は食い違い、ペニャニエト大統領の支持率は過去最低に沈んだ。
米国債:安全資産への逃避で米国債相場は上昇すると見込まれていたが、共和党が景気促進で歳出を拡大するとの観測から下落している。
再生可能エネルギー:風力タービンメーカー最大手、デンマークのベスタス・ウインド・システムズは一時13%安。太陽光発電関連株も売られ、米サンパワーは一時14%下落した。
原題:Trump Day-One Winners and Losers Piling Up Fast Across the Globe(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-09/OGE9TO6JTSE901
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