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中国・上海。「もうすぐ弾ける」と言われ続けている中国の住宅バブルはいつ弾けるのか?(資料写真)
結局のところ中国の住宅バブルはいつ弾けるのか? 価格急騰の裏に不動産仲介会社の暗躍があった
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48291
2016.11.9 花園 祐 JBpress
「中国の住宅バブルはもうすぐ弾ける」──。こうした言葉が聞かれるようになってからもう10年くらい経ちます。日本の書店に行けば、中国経済崩壊論と書かれた書籍が常にズラリと並べられています。
けれども、少なくとも現時点において中国の住宅バブルが明確に弾けたと言えるような大暴落は確認されていません。
こうした主張をしている人たちからは、「まだこれからだ」と反駁されるでしょう。しかし厳しい言い方をすれば、それらの主張は「中国経済が悪くなってほしい」という希望が先行し過ぎており、雨が降るまで踊り続ける雨乞いやノストラダムスの終末予言のようなものだと筆者は考えています。加えて、そうした主張の多くには都合の良い部分だけを切り取った一面的な意見も数多く見られます。
中国の住宅バブルは本当のところはどうなのか? 筆者は現在、中国・上海で働いています。中国の不動産業の専門家でもなければ業界関係者ではありませんが、今回、上海で入手できる情報を基に自分自身で確かめてみることにしました。
■価格急騰、住宅購入規制、そして再び急騰
上海の平均住宅成約価格
上のグラフは、中国の不動産仲介業者「安個家」がまとめた2006〜2015年における上海市の平均住宅成約価格データを引用し、前年比成長率(=価格上昇率)と合わせグラフ化したものです。
このデータを見てまず目につく点は、言うまでもなく価格の上昇幅です。2006年には9437元/平米だった価格が2015年には3万4730元/平米となっています。10年近くで実に3.7倍も価格が上昇したこととなります。
デフレが続く日本人の感覚からすればこの事実一つとってもバブルだと言いたくなるような上がりっぷりですが、右肩上がりに上昇してはいるものの、各年度の価格上昇率を比較してみると少なからず波がある点に気付かれるかと思います。
価格上昇率は2010年まで2桁成長を続け、2008年と2009年に至っては30%超の大幅な上昇を遂げています。当時は現地中国でも住宅価格の急騰ぶりとバブル化を懸念する声がよく聞かれました。
この時期に急騰した理由としては、2008年のリーマン・ショックによる影響が挙げられています。つまり、株式市場で株価が大幅下落したことを受け、投資家のマネーが一挙に不動産市場へ流れ込んだことなどが原因と指摘されています。
加熱する不動産市場を懸念した中国政府は、同時期から各地で住宅購入を制限する規制を打ち出しました。具体的には投資目的での2軒目以上の住宅購入を禁止するなどして市場の鎮静化を図ったのです。こうした規制が功を奏したのか、2011年と2012年の価格上昇率はそれぞれ1.4%と2.0%の低上昇に抑えられ、一部(特に中国が嫌いな人たち)では「とうとう中国の住宅バブルが崩壊したぞ!」と騒ぎ立てられました。
しかし結果論からすれば、比較的いいタイミングに、政策によって市場の抑え込みに成功したのがこの時期の値動きだったと思えます。
ただし、一旦は抑制に成功したかに見えた住宅価格ですが、2013年に7.6%の上昇を記録すると、2014年には11.6%、2015年には28.7%と再び2桁超の急上昇を示すようになります。
国家統計局による直近のデータで見ても、2016年9月における上海の新築住宅価格指数が前年同月比32.7%上昇、中古住宅価格指数が同37.4%上昇となっており、2016年も2015年の上昇ペースを維持、それどころか上回るような急上昇を続けているようです。
あえてこの10年間でスパンを区切るとすれば、2008〜2009年に一度目の急騰期を迎えた後、政府の住宅価格抑制策によって市場は一旦は落ち着くものの、2015年からは再び30%近い上昇をするようになり二度目の急騰(バブル)期を迎えているのが現状だと言えるでしょう。
■急騰の背景に株価暴落と仲介業者の影
2015年7月、中国・浙江省杭州で株価の電光掲示板を見て頭に手をやる投資家。(c)AFP〔AFPBB News〕
ある日系銀行の関係者は、近年の住宅価格上昇は、2008年頃の時と同じく株式市場の大暴落が背景にあると指摘します。中国の株価は2015年6月、上海証券取引所のA株が時価総額の3分の1を失うほどの大暴落を引き起こしました。これによってかつてと同じく投資家のマインドが株式市場から不動産市場へと移り、マネーが不動産市場に流れたことが住宅価格の急騰を促したと見られています。
また、このところ、こうした市況による影響に加え、中古住宅を取り扱う不動産仲介業者の作為も住宅価格を押し上げている一因だとの声がよく聞かれます。特に北京市に本拠を置き、近年急激な成長を続けている北京鏈家房地産経紀有限公司(鏈家)という仲介業者については「住宅市場をかき乱している会社の1つ」であると各方面から指摘されています。
同社は2001年に設立された中古住宅を専門に扱う不動産仲介業者です。2008年のリーマン・ショックを乗り越えてから同業他社の吸収合併や提携を繰り返して、ここ数年で急速に勢力を拡大し、2015年の売上高155億元が前年比で約4倍となるなど、短期間での急成長ぶりに注目が集まっています。
筆者自身の経験で述べると、比較的ローカル色が強い不動産業界という背景もあってか3〜4年前には上海市内で鏈家の営業店を見ることはほとんどなく、かつてはその存在すら知りませんでした。ところが、現在の上海市内ではどこへ行っても鏈家の営業店舗を目にし、まるで石を投げれば鏈家に当たるとでも言いたくなるほど短期間で店舗が増え続けています。
実際に鏈家は非常に高い市場シェアを確保しています。下の表は不動産データコンサルティング企業の北京雲房数据技術有限責任公司(雲房数据)がまとめた2016年8月における上海市内の仲介業者別中古住宅成約件数のデータです。鏈家の上海法人に当たる上海鏈家徳祐地産(鏈家徳祐)の成約件数は2位の約3倍、シェアは約20%となっており、競争の激しい仲介業界の中で圧倒的な力を持っていることは間違いないと言えるでしょう。
2016年8月の仲介業者別上海中古住宅成約件数(出所:雲房数据)
独走を続ける鏈家ですが、2016年初旬、担保に出されていた住宅を担保者の了解なしに第三者へ売却しようとして、消費者保護を担当する当局より注意を受ける事態を引き起こしています。強引な取引や市場操作が横行しているという噂も絶えません。現地メディアの「第一財経日報」などよると、鏈家は圧倒的なシェアを生かして、市場に流通する物件量を制限して住宅価格の高騰を促しているとの報道も出ています。筆者自身も多方面でこうした噂をよく耳にしますし、中古住宅価格のみならず賃貸料金の高騰も招いていると聞きます。
実際に筆者が、2016年1月に引っ越し先となる賃貸物件を上海市内で捜した際、4年前は月3000元前後でワンルームの物件を見つけられたエリアで3000元台の物件は見つからず、最低でも4000元以上しかないと現地仲介業者から告げられました。その際に近年の住宅・賃貸価格の高騰ぶりについてその仲介業者に尋ねたところ、「取り扱っている自分たちですら驚くような高騰ぶりで、正直なところ混乱している面もある」という素直な心境を語っていました。
■政策や株式市況でどちらにも転び得る
上海市における中国の不動産市場の現状をこれまで説明してきましたが、日本人が一番大きな関心を持つ点は、やはり「結局のところ、中国の住宅バブルは弾けるのか否か」にあるのではないでしょうか。
この点について先程の日系銀行関係者は、「既に非常に危険な状態に陥っていることは間違いなく、時期としては2020年頃が非常に危ない」との見解を示しました。
その1つの根拠として、同関係者は、このところ賃貸物件の取引で不動産仲介業者は顧客に対して1年契約ではなく2年契約を強く薦めてくる傾向があることを挙げます。近年の住宅価格高騰を受け、これまで賃貸では1年契約を結ばせて毎年家賃を引き上げようとする仲介業者や家主が多かったのですが、今年に入ってからは住宅価格の下落を恐れ、あらかじめ高い家賃契約を結ばせて契約期間を長くしようとしているというのです。「不動産のプロたちはもう市場が危険な状態であるという認識を持っている」というのがその関係者の説明です。
一方、筆者個人の見解を述べると、現在、中国の大都市ではほぼ例外なく住宅価格を抑制するための様々な購入規制策が実施されており、仮に価格が大幅に下落するような事態に陥ったとしても、そうした規制を緩和することによって再び消費を促せる政策的緩和余地がまだ残されているように思えます。
また、普段中国人と接していて思うこととしては、圧倒的大多数の市民は依然と住宅を購入したくても価格が高すぎて購入できない状態にあり、今より少しでも住宅価格が下がるならば今すぐ買おうとするような層は非常に多く、中国の住宅市場を下支えする実需は日本人が想像する以上に底堅いのではという印象を覚えます。
ポジティブ、ネガティブな両意見を提示した上で、やや卑怯な結論となりますが、中国の住宅バブルがどうなるのかについては、現状で結論を出すのはまだ早いというのが私の見方です。
警戒しなければならない段階であることは間違いないものの、今後の政策や株式市況によっていくらでも転びようがあり、今すぐに弾けるかどうかだけを考えると、かえって状況判断を誤らせる事態に陥りかねません。日本の皆さんには、中国の住宅バブルについては感情的な希望的観測にとらわれず、以上で提示したようなマクロデータや市場関与者の現状をしっかり注視しながら冷静に判断していただきたいと思います。
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