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IT業界「残酷物語」はなくなるか
フリーランスが示す労働環境改善の可能性
記者の眼
2016年11月9日(水)
河野 祥平
「1日3時間睡眠で1カ月間休みなし」「1週間会社に泊まり込んで徹夜もざら」――。某大手広告代理店も腰を抜かすような、過酷な労働環境に置かれている会社員の姿が話題に上るケースが多いのが、技術革新が進み注目を集めるIT(情報技術)の業界だ。インターネット上には何年も前からこうした「残酷物語」のエピソードが飛び交い、華やかなイメージの裏で長時間勤務や不安定な労働条件に苦しむ技術者が多数存在することが指摘されてきた。
ネット上の書き込みなどには誇張された表現などもあるだろうし、個々の企業の細かい労働実態までを網羅的に把握することは難しい。ただ、厚生労働省の2015年賃金構造基本統計調査によると、職種別年収ではプログラマーが408万円で全65職種中35位、システム・エンジニアは592万円で同18位。単純比較はできないものの、米国の電子工学技術の学会が実施した調査では、同国のIT技術者の年収は13万5000ドルとされており、少なくとも待遇の面では大きな差があるようにみえる。
2030年には79万人が不足
さらに、国家レベルで深刻な課題となるのが人材不足だ。経済産業省が6月に発表した調査では、国内でITに関わる人材は現時点で約17万人が不足しており、2030年にはその数が最大で約79万人に増えると予測。技術の進歩や競争激化でIT需要が一段と高まる一方、諸外国に比べて人材の育成や確保が追いつかず、深刻な需給ギャップが生まれる可能性が高いという。
政府ではこうした状況を防ぐため、2025年までにIT人材を現在の約103万人から202万人に倍増させる方針で、新たな資格制度を作ったり小中高校での教育を強化したりといった施策を進める計画。ただ、現状では若者が夢や希望を持ってIT業界に飛び込むことができるようになるのかは不透明だ。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/110800347/g1.png
IT人材の供給動向の予測と平均年齢の推移
出所:「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」(経済産業省)
こんな問題意識を持って調べていくうち、あるキーワードが耳に飛び込んできた。それが「フリーランス」。聞けば現在、大手IT企業で経験を積み腕に自信のある若手技術者が、自ら希望してフリーランスへの道を進むケースが増えているという。企業側にとっては限られたIT技術者を有効活用できる一方、働き手にとってもフリーランスとして活躍できる土壌が整えば、働き方や働く場所の選択肢が広がり条件面でも改善が進む可能性があるというのだ。
ただ、いわゆる「ブラック企業」ならいざ知らず、大手の安定した雇用環境を捨ててまで独立して働きたい技術者が増えているとはどういうことなのか――。そんな疑問を解消するため、IT技術者の人材サービスを手がけるgeechs(ギークス、東京都渋谷区)に話を聞きに行ってみた。
ギークスは前身となる企業が2001年に設立され、2002年からIT人材紹介事業を始めた業界の草分け的存在。その後ゲーム事業などにも参入する一方、基幹の人材紹介事業は現在でも急成長を続けているという。「開発現場とITフリーランスを繋げる」ことを掲げ、技術者を求める企業への営業を代行したり、案件受注のサポートを行うのが主なサービス内容だ。2015年のフリーランス技術者の新規登録者数は前年比で2倍近くに増えている。
フリーランス希望で大手就職も
「当初からフリーランスになることを志向して、あえて大手で何年か勤務経験を積む若者も増えている」。IT人材事業本部長を務める小幡千尋・執行役員はこう説明する。増加の大きな2つのきっかけとなったのが、2008年のリーマン・ショックと、それ以降の働き方の多様化や企業の意識の変化だという。
リーマン・ショックでは、大手IT企業も大きな影響を受け、40〜50代の技術者を中心にいわゆる「肩たたき」が横行。再就職も厳しい中、やむなくフリーランスとして生きる道を選んだ人も多かった。イメージは必ずしも良くなかったものの、「大手に入れば安泰」という幻想が崩れ、企業に依存せずキャリアを磨く必要があるという土壌が作られていった。
さらに、2011年頃からは「ノマドワーカー」「クラウドソーシング」などの言葉も広く使われるようになり、特定の組織に属さない働き方に注目が集まるようになる。「こうした状況の中、新しい技術にも強い20代の技術者が意思を持ってフリーランスになろうとする雰囲気が生まれてきた」(小幡氏)。企業側にも社内に囲い込んだ技術者だけでなく、経験や専門知識を持った外部の人材を積極的に活用していく意識が目立つようになってきたという。
活用の仕方も様々だ。SEO(検索エンジン最適化)コンサルティング事業などを手がけるSpeee(スピー、東京都港区)では、ギークスのサービスを利用して確保したフリーランスの技術者に若手社員の教育などを託している。エンジニアマネジメント責任者の是澤太志氏は「他の会社での成功体験などを若手に伝えてもらうことで、効果的なOJT(職場内訓練)につながる」と説明する。他のギークスのクライアントでも、フリーランスに開発チームのまとめ役を任せたり、新規事業の立ち上げに参画してもらったりするケースが増えているという。
ギークスでは各種セミナーや交流会を通じ、登録者がスキルアップできる機会を積極的に提供している
与えられる役割や職責に応じて、より良い待遇の実現が可能になっていることもフリーランスへの動きを後押ししている。ギークスに登録している技術者の平均年収は約800万円に上り、専門技術を持ち経験年数の長い人であれば正社員より稼ぐ人も珍しくない。小幡氏は「技術力はもちろんだが、柔軟性があり豊富なアイデア、高いコミュニケーション能力を持つ人であれば企業からのオファーも尽きない。結果として、意思を持って理想的な働き方ができる人も出てきている」と話す。
ブラック企業とは付き合わない
とはいえ、ここまで書いてきたように何から何まで良いことづくめというわけではない。そもそもフリーランスとして独立できるだけの技術力がなければならないのは大前提だが、常に自分の希望に沿った求人があるわけではない。「腕」を買われている以上、常に新しい技術や知識を習得して自らを磨き続けることも重要だ。
ギークスではこうした点のサポートにも注力。契約書の作成など事務作業を代行するほか、各種セミナーや交流会を通じて登録者がスキルアップできる機会も積極的に提供している。さらに、事業の大前提として、ブラック企業はクライアントにしない。小幡氏は「業界内で悪い噂が立っている企業には、我々としては決してアプローチしない。駒のように技術者を使うような企業と取引すれば、サービス自体の信用問題に関わる」と明かす。
緒についたばかりとはいえ、フリーランスを活用する動きは今後さらに広がっていきそうだ。それに伴い労働環境改善が促されれば、IT人材不足が解決に向かう一つのきっかけになる可能性もある。ギークスと同様のサービスを手がける企業も増えており、優秀なフリーランスを確保するための競争も足元では激化しているという。米国同様「1000万円プレーヤー」のフリーランスが当たり前のようになれば、多くの技術者を苦しめる「残酷物語」が減っていくことにもつながるのではないだろうか。
このコラムについて
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/110800347/?ST=editor
LCC「スクート」のビジネスクラスに乗ってみた
トレンド・ウォッチ from日経トレンディ
シンガポール航空系LCCの実力は?
2016年11月9日(水)
日経トレンディ
LCC(格安航空会社)は全席エコノミークラスが原則。だが、中距離LCCの中にはビジネスクラスを設定している航空会社もある。日本発着ではジェットスター(オーストラリア行き)、エアアジアX、タイ・エアアジアX、そしてスクートの4社で、運賃はフルサービスキャリアのエコノミークラスレベルと比較的手ごろだ。
そこで、日本では成田−台北−シンガポール、成田−バンコク−シンガポール、関西−高雄−シンガポール、関西−バンコク−シンガポール、札幌−台北−シンガポールの5路線を運航しているスクートのビジネスクラス「スクートビズ」に搭乗してきた。
スクートは全便最新鋭機ボーイング787型機で運航している
スクートには日本人客室乗務員も乗務
免税品の販売もある
今回、搭乗したのは、同社が日本路線として初めて就航した成田発台北経由シンガポール行きのスクート(TZ)201便。成田空港での発着はJAL便と同じ第2ターミナルを利用する。当時はボーイング777-200型機だったが、現在はボーイング787で運航されている。
成田出発は午前11時55分なので、10時から10時半の間くらいに成田空港に到着すればよい。筆者は9時発の東京駅八重洲南口からの格安バス「THEアクセス成田」で10時ごろに成田空港に到着した。格安バスで東京駅を出たあと最初に停車する第2ターミナル南口は、降車場からスクートのチェックインカウンターが至近距離なので大変便利だ。
チェックインカウンターにはスクートビズ利用客専用の優先カウンターが用意されており、エコノミークラス利用客の行列を横目に見ながらスムーズにチェックインできた。スクートビズは事前の座席指定が無料なのに加え、手荷物も無料で30キロまで預けられる。さらに機内持ち込み手荷物はエコノミークラスが10キロなのに対し、スクートビズでは15キロまで可能なのもありがたい。ただ残念ながら、到着空港での荷物の優先引き渡しサービスはない。
成田空港第2ターミナルでチェックイン
スクートビズは専用カウンターで混雑知らずだった
ビジネスというよりプレミアムエコノミー感覚
チェックインを済ませたあと、保安検査・出国審査を済ませて搭乗ゲートへ。フルサービスキャリアのように保安検査場の優先やビジネスクラス利用者向けのラウンジはないが、スクートビズ利用者は優先搭乗できる。
スクートはLCCでは珍しく最新鋭のボーイング787型機を導入しているが、成田−台北−シンガポール線では大きいサイズである375人乗りのボーイング787-9型機を使用。スクートビズは2−3−2の座席配列で35席設置されている。
シートは黒の本革張りで、シートピッチは約96センチ確保。シート幅は56センチで、座ってみるとビジネスクラスというよりもプレミアムエコノミーに乗っている感覚。少しでも広い空間を確保したい人は、足元が広い最前列を予約するとよい。リクライニングは8度までと大きく倒れるわけではないが、エコノミークラスに比べると快適だ。
787-9型機のスクートビズの座席配列は2−3−2で35席
シートピッチは約96センチ
シート幅は56センチ
ビジネスクラスというよりもプレミアムエコノミーに近い感覚
機内食の事前予約が可能
席に座ると客室乗務員から水が配られ、機内食の確認とドリンクのオーダーを聞かれる。スクートビズは機内食1食分とワンドリンクが含まれており、フライト予約時にリクエストできるのだ(事前にオーダーをしていない場合には機内販売メニューから選べる)。ドリンクは機内でビールやワインなどアルコール類を含むメニューから好きなものを注文可能(2杯目以降有料)。
スクートビズの機内食。照り焼きチキンライス(成田−台北)
甘酢魚のライス添え(台北−シンガポール)
ドライラクサ(シンガポール−台北)
機内食の確認が終わり、全員の搭乗が完了して台北へ向けて出発。離陸してからシートベルトサイン消灯後、他社ではあまり聞かれないアナウンスが流れた。エコノミークラスからスクートビズへの有料アップグレードの紹介だ。価格は80シンガポールドル(約6500円)。スクートでは、空席がある場合には機内でもアップグレードを受け付けるのだ。
そして機内サービスがスタート。オーダーした機内食が各席に運ばれる。何度かスクートを利用している筆者がいくつか食べたなかでお気に入りが「てりやきチキン」。ご飯との相性もよい。ただビジネスクラスといってもLCCなので、フルサービスキャリアでいうとエコノミークラスレベルの機内食という印象だった。ボリューム的には十分腹いっぱいになるが、余裕があればほかのメニューもチャレンジしてみるべし。クレジットカードでの支払いも可能だ。
客室乗務員に聞いたところ、人気があるのがカップラーメン。なかでもトムヤムクン味が一番人気ということで早速注文。1個5シンガポールドル(約400円)だったが、たしかに機内で食べるカップラーメンはうまかった。
トムヤムクン味のカップラーメン。スクートの機内で一番人気だという
自前の端末でエンターテインメントを楽しむ
機内の設備はどうだろう。LCCでは各座席にシートテレビは装着されてないのが一般的だが、スクートでは自分のタブレットやノートパソコンを使い、機内Wi-Fiを活用して「スクートTV」にアクセスすれば、動画コンテンツを見ることが可能(日本語のコンテンツは少ない)。ただ、スマートTVはエコノミークラスでは有料、スクートビズでは無料となっている。
また筆者が便利だと思ったのが、機内インターネット接続サービス。エコノミークラス、スクートビズともに有料だが、自分のノートパソコンやタブレット、スマートフォン(機内モード状態)でインターネットに接続できるのだ。筆者も実際に機内で使ってみたが、動画コンテンツの再生に時間を要したり途中で止まったりしたこともあったが、ウェブサイトの閲覧やメールの送受信(添付メールを含む)、LINEやFacebookのメッセンジャーでの文字や写真のやり取りもスムーズにできたのだ。ノートパソコンで測定したところ1.3Mbps、スマートフォンでは5.3 Mbpsだった。
スクートビズならタブレットやスマートフォンなどから機内エンターテインメントに無料でアクセスできる
速度も機内という環境を考えれば十分に満足
ウェブサイト閲覧やLINEも問題なし
ネット接続料金は1時間プラン、3時間プラン、24時間プラン、そして5Mbpsまで速度が制限されるライトプランの4つから選べる。値段は以下の通り。成田からの利用であれば、台湾便なら1時間プランか3時間プラン、バンコク便なら3時間プランか24時間プラン、経由便で最終目的地がシンガポールまでなら24時間プランがおすすめだ。
・1時間プラン 11.95USドル(約1260円)
・3時間プラン 16.95USドル(約1780円)
・24時間プラン 21.95USドル(約2300円)
・ライトプラン 5USドル(約530円)(20Mbpsまでで速度は低速になる)
日本発着のLCCで機内インターネットが唯一使えるのがスクートなのだが、機内エンターテインメントがなくてもネットで友人などとメッセージをやり取りすることでフライト時間が短く感じられた。また各席にシート電源も備え付けられているので、電池が切れる心配もない(シート電源サービスはスクートビズでは無料であるが、エコノミークラスでは5シンガポール(約400円)と有料)。電源が有料というのも、エコノミークラスのみとはいえLCCらしい課金システムだ。
シート電源はスクートビズだと無料で使えるがエコノミークラスは有料
また、ネット接続速度が低速だが、わずか5USドル(約530円)で利用できる「ライトプラン」も使ってみた。64kbpsでのこのプランのホームページ閲覧や画像などのやり取りは正直厳しいが、LINEやFacebookのメッセンジャーで文字のみのやり取りであれば特段の問題はない。使用用途限定なら利用する価値は十分にあると思う。
そうこうしているうちに、あっという間に約3時間のフライトで台北到着。台北で降りる人も、シンガポールまで向かう人も全員降機することになり、シンガポールへ向かう人は通路でトランジットカードを受け取ったあと、再度保安検査を受けて出発ゲートへ向かって搭乗開始を待つことになる。7月21日にスタートしたバンコク便就航によって、同じ路線を就航するタイ・エアアジアXとの競争も激しくなることが予想される。どちらにしてもバンコクへの路線網が増えることでスクートを利用する機会は増えそうだ。
(文・写真/鳥海高太朗=航空・旅行アナリスト、帝京大学理工学部航空宇宙工学科非常勤講師 編集/日経トレンディネット)
このコラムについて
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