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電通(写真:ロイター/アフロ)
電通、靴でビール飲み強制…「社員過労死」文化は20年以上前から、東京五輪の発注停止すべき
http://biz-journal.jp/2016/11/post_17123.html
2016.11.09 文=横山渉/ジャーナリスト Business Journal
11月7日、広告代理店最大手の電通に労働基準法違反容疑による東京労働局の強制捜査が入り、大規模な家宅捜索が行われた。電通では1カ月に200時間近く残業していた社員もいた可能性があり、厚生労働省は今後の書類送検も視野に入れる意向だ。
新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が昨年末に過労自死した電通では、3年前にも男性社員(当時30歳)が過労死で死亡している。
そして、1991年8月にも、入社2年目の大嶋一郎さん(当時24歳)が長時間労働を苦に自死。2000年に最高裁判所が「過労死」と判断し、労災認定している。
この「電通事件」は、同社の過酷な長時間労働を世に知らしめるきっかけとなった事件であるため、振り返っておきたい。
大嶋さんの自死は、会社側から長時間労働を強いられ、うつ病に罹患した結果であるとして、大嶋さんの両親は約2億2260万円の損害賠償を請求した。東京地方裁判所および東京高等裁判所は、ともに大嶋さんの長時間労働とうつ病、そして、うつ病と自死の因果関係を認めた。さらに、大嶋さんの上司らによる安全配慮義務違反についても認めている。
つまり、大嶋さんの健康状態の悪化などを認識しながら、その負担軽減措置をとらなかったという過失である。
ただ、第一審は会社側に約1億2600万円の損害賠償の支払いを命じたが、高裁は過失相殺を行い、損害額の7割(約8910万円)に減額した。これに対して、原告と被告の双方が上告。最高裁では、高裁の過失相殺判断を破棄して差し戻し、遺族側勝訴となった。
高裁判断の過失相殺とは、「残業をした労働者にも責任あり」ということだが、これは最高裁で見事に否定された格好だ。
また、裁判を通じて、終業後の部署ぐるみの飲み会や「反省会」など、法律では労働時間と認定されにくい拘束時間が多くあることも明らかになり、上司からのパワハラ体質も問題になった。上司は、大嶋さんに対して靴に注いだビールを飲むように強要したとされている。
■問われる電通のセクハラ体質と労働実態
今回の高橋さんのケースも、過労自死に至る構造は1991年の電通事件とほとんど同じだ。残業時間は自己申告とされ、サービス残業によって過少申告されており、警備員の巡回記録で長時間労働が明らかになった。また、高橋さんに長時間労働をさせながら、「目が充血したまま出勤するな」「女子力がない」と責めるなど、電通のセクハラ企業体質も問われている。
電通事件における高裁の過失相殺もそうだが、日本では「残業は自由意思の部分もある」とする考え方が根強い。インターネット上にも、「残業が100時間を超えたぐらいで……」という類の書き込みは少なくない。
■電通で新人の過労自死が繰り返された背景
ブラック企業被害対策弁護団代表を務める弁護士の佐々木亮氏は、そうした社会的風潮に対して「亡くなった方に非難の矛先を向けるのは、想像力が乏しく非常にレベルが低い」と厳しく批判する。
「3カ月連続して残業月100時間を超えた場合の精神疾患(および、それを原因とする自死)との間の因果関係は、医学的見地や経験則などから導かれた合理的なものだ。自分はもっと働いているからといって、同じことを他人ができるわけではない。
新人の場合、仕事は遅いだろうし、それでもクライアントの無理な要望もあるだろう。中途入社や経験者であれば、自分のキャパシティを知っているから体の異変を感じたら残業を断ったり休んだりできる者もいるだろうが、新人は自分の耐性自体がわからない。
どこかで上司が業務量を減らさないと、事件は起きる。そういう意味では、電通事件から20年以上たって高橋さんの事件が起きたのも、決して偶然ではない」(佐々木氏)
新人の過重労働については、上司はもちろん幹部も知らないはずがない。それは、自分がたどってきた道だからだ。
たとえば、電通の石井直社長は大学卒業後の73年4月に入社しており、営業局長や常務執行役員国際本部副本部長を経て社長に就任している。若い頃はさぞかしハードワーカーだっただろうと容易に想像できるが、結局、企業の中ではそういうことを乗り越えてきた人間が幹部や管理職になっているため、過労で「死にたい」と思う人の心の痛みは、どこまでいっても理解できないのかもしれない。
■法違反や過労死の企業は社名を公表すべき
とはいえ、現在の労働法制や社会の仕組みを、このままにしておいていいわけがない。では、どのように変えるのが有効なのだろうか。
佐々木氏は、まず「労働時間の上限を決めればいい」と語る。これは、とてもシンプルだ。次に佐々木氏が提案するのは、「勤務間インターバル」の創設。これは、終業時刻から次の始業時刻までの一定時間、休息を取らせることを義務づけるものだ。
たとえば、3時間残業したら翌日は出勤を3時間遅くするという具合だ。日本では、どんなに夜遅くまで残業しても、翌日は定時出社を求められる。それでは睡眠不足になりやすく、睡眠不足は体の疲れがとれないばかりか、うつ病に罹患しやすくもなる。勤務間インターバルは日本ではまだなじみがないが、ヨーロッパでは導入例がある制度だ。
ただ、どんな制度をとり入れても、電通のように申告する労働時間でインチキをしていたら効果はまったくない。そこで、違反をした企業には強力な制裁が必要だ。佐々木氏は、「法違反をしたり、社員が過労死認定されたりした企業は、その社名を公表すべきだ」と言う。
「今回の高橋さんの件は、遺族側が記者会見を行ったのでメディアが取り上げて、社会的に大きな問題となりました。しかし、ただ労災認定されただけでは、一般の人はその企業のことを知ることはありません。
企業名を公表すれば、就職活動をする学生にとっては企業選定にも役立ちます。なお、企業の汚名返上の措置として、法違反是正への取り組みや過労死防止策を報告させ、公表すれば公平性が保たれます」(同)
しかしながら、NPO法人が過労死企業の企業名を公表するよう情報開示請求したところ国が不開示としたため、裁判で争われたことがあった。2012年の大阪高等裁判所では、「不開示は適法」との原告敗訴の判決が出ている。経済団体の反発は予想されるところだが、国もまた情報開示に後ろ向きである。
■電通、東京五輪事業から撤退の危機も?
次に、法違反をしたり過労死社員を出したりした企業については、公的事業(国や地方公共団体)への入札の参加を一定期間禁止するなどの、いわゆる公契約法・公契約条例の制定が有効だ。
「税金を使って行われる事業を、法違反をしている企業に請け負わせるのはバカげています。この規制は、都市部・地方を問わず、下手な助成金を出すよりもよほど効果があります」(同)
仮にこの制裁が制度化されれば、電通は20年の東京オリンピック関連事業を一切請け負うことができなくなる。もはや、長時間労働を許してしまう日本社会の文化を変えるには、このくらいのショック療法が必要なのではないか。
そこで、当編集部から電通広報部に問い合わせたところ、以下のような回答を得た。
――高橋まつりさんの過労自死について、現時点で御社として認識されている問題点や見解はどのようなものでしょうか。
「ご遺族と協議中のため、回答は控えさせていただきます」
――91年の「電通事件」でも過労自死が発生しており、3年前に過労死した男性社員も労災認定されていますが、その間、御社の対策や姿勢はどのようなものだったのでしょうか。また、なぜ繰り返されてしまったとお考えでしょうか。
「現在、外部法律事務所による調査・検証を行っているところです」
――社員の長時間労働の是正や健康面の確保について、今後の対応や御社の姿勢についてお聞かせください。
「当社は、当社で働く社員が健全な心身を保ち続け、一人ひとりの社員が自己の成長を実現・実感できる労働環境づくりを目指し、労働環境の改善と長時間残業の撲滅の取り組みをさらに加速させるため、11月1日付で『電通労働環境改革本部』を発足させております」
新たに発足した「電通労働環境改革本部」によって、「労働環境の改善」と「長時間残業の撲滅」がどこまで進むのか、注視したいところだ。
(文=横山渉/ジャーナリスト)
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