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過度な金利引き下げには副作用が伴う(画像=PIXTA)
年金や保険にダメージも! 日銀が気にする「金利下げ」2つの副作用
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161107-00010003-nikkeisty-bus_all
NIKKEI STYLE 11/7(月) 15:10配信
■日銀は金融政策をどう見直したのですか。
日銀が9月に金融政策を見直したそうね。何がどう変わったの? 消費者物価上昇率2%の目標はなかなか達成できないみたいだけど、効果はあるのかな。
日銀の金融政策をテーマに、司徒友嘉さん(24)と菊地恵美子さん(45)が清水功哉編集委員の話を聞いた。
「目標である物価上昇率2%の実現に向けて経済を刺激するという金融政策の目的に変更はありません。見直したのは手段で、ポイントは2つあります」
「第1に、政策を動かす主な目安を『資金供給量』から『金利』に切り替えました。従来は資金供給量残高を年間80兆円のペースで増やすという明確な数値目標を掲げていましたが、これはやめます。一方、長期金利(10年物国債の利回り)を当面ゼロ%程度に誘導する目標を新たに掲げました。短期金利(日銀当座預金の一部金利)を当面マイナス0.1%にする『マイナス金利政策』も維持します。これで短期から長期までの金利を全体としてコントロールしようとしています。日銀は『イールドカーブ(利回り曲線)・コントロール』と呼んでいます」
「第2に、資金供給量の数値目標はやめるものの、残高の拡大そのものは続けます。拡大を物価上昇率が安定的に2%を超えるまで続けると約束しました。『オーバーシュート型コミットメント』と呼んでいます」
■なぜ見直したのですか。
「金融緩和をより長く続けられるようにするためです。日銀は2013年春に就任した黒田東彦総裁のもとで、2%物価目標を2年程度で実現するため、思い切った資金供給を続けてきました。いわば短期決戦に挑んだのです。しかし原油安や消費増税の影響、海外経済の減速などの逆風により、思ったような物価上昇を実現できませんでした。人々の物価観をすぐに変えるのは難しいこともわかってきました」
「そこで長期戦で物価押し上げに取り組むことにしたのです。それには、今までのようなペースで資金供給量残高を増やすことはできません。資金供給は金融機関が持つ長期国債などを日銀が買い入れることで実施しますが、長期国債の量には限りがあり、今のペースでは1〜2年程度で限界が来るとの指摘があるからです。そのため国債購入ペースを落とすことが可能な枠組みにしました」
■それでは経済の刺激効果が落ちませんか。
「確かに、国債の購入を減らしすぎて長期金利が跳ね上がる(国債価格が下落する)と、経済の刺激効果が落ちてしまいます。だからこそ長期金利の目標を設けて誘導するのです。こうすれば、逆に長期金利が下がりすぎて金融機関の収益が大幅に悪化することなども避けられます。今年2月に始めたマイナス金利政策のもとで一時、日銀の想定以上に長期金利が下がったことも政策変更の背景にあります」
「従来の日銀は巨額の国債残高を踏まえると長期金利のコントロールは難しいと言っていました。ただ長期国債の購入額が大きく膨らんだことで、一定程度の操作は可能になったとしています。経済や金融市場の状況が悪化するなら、長短金利を下げるなどの追加緩和を決める可能性もあります」
「また日銀は資金供給を軽視するようになったわけではありません。ペースは落ちますが資金供給自体は続けます。その決意を示すのが物価上昇率2%超まで資金供給量残高を拡大させるという約束です。物価目標の水準は2%のままですが、一定期間それを超える状態も容認します。デフレ退治への決意を印象づけ、人々の心理に影響を与えようとしています」
■新政策の影響は?
「金融緩和の持続性向上が政策の手詰まり感を解消するなら経済にとってプラスになるかもしれません。ただ、資金供給量残高の拡大ペース鈍化が今後本格化する場合、為替市場で円高材料になる恐れもあります。中央銀行の資金供給量が多い方が通貨安になりやすいと考える投資家もいるからです。また長期金利の誘導により国債相場の変動幅は小さくなります。財政悪化に対して長期金利上昇で警鐘を鳴らすようなマーケットの機能が低下する点も懸念されます」
「そもそも、デフレ脱却には日銀の金融政策の力だけでは限界もあります。政府の財政政策や成長戦略との連携も重要になります」
■金利下げ過ぎには副作用も
金利が下がれば下がるほど経済は刺激されるというのが、教科書的な理解だろう。日銀も今年1月にマイナス金利政策導入を決めたときには、基本的にそう考えていたとみられる。だが、実際に政策を手掛けるうちに、次第に見方が変わってきた。政策がマイナス金利という「常識外」の世界に入ってくると、金利が低ければ低いほどいいという単純な話ではなくなるということだ。
日銀が気にしたのは2つの副作用だ。第1に長期金利低下による利ザヤ縮小は銀行収益に悪影響を及ぼし、マネーを世の中に流す金融仲介機能を低下させること。第2に期間10年を超える超長期金利の低下は保険や年金の運用にマイナスの作用をもたらし、人々の心理を悪化させることだ。
こうした問題点を考慮し行き過ぎた金利低下を防ぐことも、長期金利操作導入の目的のひとつである。ということは今後の金利の下げ余地もそう大きなものではなさそうだ。追加緩和について考える際の重要なポイントだろう。
(編集委員 清水功哉)
NIKKEI STYLE
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