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アベノミクスは限界を迎えた? 黒田日銀の「ホンネ」と「言い分」 「失敗、ではなく終結と言ってほしい」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50136
2016.11.06 小野 展克 現代ビジネス
■「敗北」とは言わないでほしい
「『敗北宣言』というより、せめて『終結宣言』としてほしい。われわれの気持ちとしては」
筆者が現代ビジネスに執筆した「黒田日銀総裁まさかの『敗北宣言』は、アベノミクス終焉の前兆か」(9月23日付)を読んだ日銀幹部の一人は、筆者の取材に、こう自嘲気味につぶやいた。
日銀は11月1日の金融政策決定会合で、物価2%目標の達成時期を「2017年度中」から「18年度ごろ」に先送りした。このことは日銀総裁、黒田東彦の任期中に、物価目標の達成が難しくなったことを示している。
そして、黒田はついに追加緩和には動かなかった。これまでなら、物価上昇の動きに鈍さがでるたびに、追加緩和への期待が市場に渦巻いた。ただ、今回は、そうした期待は市場には微塵もなく、日銀の金融政策への視線は冷め切っていた。
「できることは何でもやる」「戦力の逐次投入はしない」
デフレ脱却に向けて異次元緩和を推進する威勢の良い言葉は黒田の口から消え去った。9月23日に日銀は、異次元緩和の「総括的検証」を公表、「長短金利操作付き質的・量的金融緩和」という新しい金融緩和の枠組みを導入した。これまでの量的緩和、質的緩和とマイナス金利に、10年物国債の利回りをゼロ近辺に誘導するという新たな操作目標を加えた。
日銀の金融政策は、数々の緩和手段で飾り立てられたが、事実上の「異次元緩和の終結宣言」だった。
それから1カ月余り。日銀の金融政策への市場の期待感は一気に萎んだ。異次元緩和の急ブレーキは日本経済に何をもたらすのか。『黒田日銀 最後の賭け』(文春新書)の小野展克が分析した。
■黒田日銀は、ラッキーだった
日銀幹部は、なぜ敗北宣言ではなく、「終結宣言」という言葉にこだわったのか。それは、総括的な検証でも示された異次元緩和の成果への自負があるからだ。
異次元緩和以降、株価は上昇トレンドを描き、為替相場は円安に進んだ。失業率も急速に低下した。アベノミクスの実質的な成果は、その大半が黒田日銀の異次元緩和によってもたらされた果実だ。安倍晋三内閣の安定した支持率を支えた大きる柱は、異次元緩和だったと言っても良いだろう。
その点を踏まえた上で、ここにきて黒田日銀が異次元緩和のブレーキを踏んだ意味を読み解いてみたい。
まず足元の市場動向から確認しておこう。ドル円相場は、ここしばらく1ドル=100〜104円を中心とした水準で推移している。
直近3ヵ月、ドル円の購買力平価の推計はIMFが1ドル=103円、世界銀行が105円、OECDが106円の近辺で推移しており、購買力平価からかい離した水準にはなっていない。日経平均株価(225種)は「トランプ大統領の実現」への警戒感が一部にあるものの、1万7000円を軸とした水準を維持している。
注目の米大統領選はクリントン候補のメール問題の再燃で、支持率ではトランプ候補がクリントン候補に肉薄しつつあるが、実際の州ごとの票読みでは、クリントン候補の勝利は揺るがないとの見方が支配的だ。日経平均株価(225種)は「トランプ大統領の実現」への警戒感が一部にあるものの、1万7000円を軸とした水準を維持している。
米連邦準備理事会(FRB)は11月2日に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明文で、12月13〜14日に開く次回会合での利上げを示唆したことも、円高への警戒感を薄めている。英国のEU離脱など欧州経済の先行き不透明感、中国経済の減速リスクはあるものの、米国経済は安定しており、世界的に落ち着いた市場環境となっている。
「異次元緩和が限界を迎えた時に、世界経済が比較的安定していたことは、黒田日銀にとって非常にラッキーだった。黒田総裁は好機をとらえて、急ブレーキを踏んだのでしょう」
大手銀行の幹部は、こう分析する。
■「次の一手」は残されているのか?
しかし、いつまでも幸運が続くとは限らない。世界経済は様々な不確実性を内包している。例えば、経済危機が発生、リスク回避で急速に円高が進んだ場合に、黒田日銀は、どんなカードを切ることができるのだろうか。
ある外資系証券幹部は「マイナス金利を0.1%深掘りしてマイナス0・2%に、10年物国債の誘導目標も「概ね0%程度」からマイナス0・1%程度に引き下げる可能性が大きい」とみる。マイナス金利の深掘りは、円高圧力を跳ね返し、景気を下支えする効果が大きいとの考えだ。
しかし、マイナス金利の受益者であるはずの信用力のある大企業ですら、低利で調達した資金で、積極的に設備投資に動き出すマインドは乏しい。さらに、預金金利をマイナスに設定できなければ、金融機関の利ザヤが縮小する問題は、マイナス金利の深掘りで、さらに深刻度を増すことになる。
「預金をマイナスにはできない」という社会通念の壁を破壊しなければ、個人が貯金を消費に回すメカニズムは稼働せず、金融機関の苦境をいたずらに深めることになりかねない。
では、日銀が国債の購入額を増やす、という選択肢はどうだろう。現在の年80兆円を100兆円に増やすことは考えられるだろうか。
国債の購入額をこれ以上増やせば、長期金利に一段の低下圧力がかかる。つまり、国債の購入を拡大するためには、長短金利の引き下げという措置がセットでなければ、現行の金融政策の枠組みとは整合しない。つまり、長短金利の引き下げで発生した問題と同じ限界に突き当たるということだ。
この命題を回避する選択肢があるとすれば、政府の巨大な財政出動と合わせ技にするという手法だろう。政府が国債を大幅に増発して、国債の供給量を増やせば、日銀が国債の買い入れの拡大という需要の増加に対して、価格の上昇(金利の低下)を防ぐことができそうだ。
しかし、このことは、裏を返せば、政府の国債発行量に、国債の大量買入れという異次元緩和の心臓部が握られていることを意味する。
「クラウディングアウトを起こさないで、緩和的な金融環境を続けることによって、財政政策の効果がより大きくなる、まさにそういう意味で相乗効果が あるということだと思います」
11月1日の記者会見で、財政政策と金融政策の関係を問われた黒田は、こう答えている。国債の大量発行は、国債価格の低下と長期金利の上昇を引き起こすのがセオリーだ。クラウディングアウトとは、政府が景気対策のために国債を増発すると、金利上昇という形で、経済を苦しめてしまい、景気浮揚効果が打ち消されてしまうメカニズムのことだ。
そのため、政府の景気対策の効果を削がないよう、日銀が金融緩和で金利の上昇を防ぐことで、相乗効果が出るというわけだ。しかし、日銀が10年物国債をゼロ近辺に誘導する枠組みを導入したことを考えると、逆に、政府の国債発行量に金融政策が従属する構造ができあがってしまったと言えよう。
そう考えると、経済危機への対応策としては、政府が巨額の財政出動を実施した上で、急激な円高の進行には、政府の為替介入で対抗するのが現実的な対応ということになりそうだ。
■バトンは安倍首相に渡されたが…
一方で、デフレ脱却の本筋と言える潜在成長率は、どうやって引き上げれば良いのだろうか。労働者の生産性を引き上げ、給与が上昇、消費が活発になり、物価が上昇軌道を描くのが理想的な展開だ。
異次元緩和は、人々の物価観を転換してデフレから脱却、通貨の信頼を破壊して、消費への欲望を蘇らせることに本質があった。しかし、人々のデフレマインドの根は深く、経営者のアニマルスピリッツには、なかなか火が付かないままだ。
ここでも、安倍晋三率いる政府が、労働改革や企業統治改革、規制緩和に真剣に取り組み、地道に経営者のマインドを燃え上がらせる環境を整備するしか道はない。
黒田は最近、周辺にこう漏らしたという。
「われわれが踏ん張って時間稼ぎをしている間に、政府に奮起してもらいたい」
すべての国債を買い切り、外債、不動産、資源…など日銀が買い入れ資産の幅を広げれば、まだ金融緩和の余地はある。マイナス金利の相当な深掘りという手段もないわけではない。
あらゆる手段を駆使すれば、デフレ脱却を実現すること自体は可能だろう。ただ、黒田にはもはや、その覚悟はなく、今の日本の社会システムもそれに耐えうる環境にはない。
デフレ脱却を実現するためのバトンは、異次元緩和の果実をたっぷり頬張った首相の安倍晋三へと渡されたのだ。
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