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[私見卓見]株主重視に傾き過ぎた企業統治 りそな銀行チーフ・マーケット・ストラテジスト 黒瀬浩一
安倍晋三政権は成長戦略の一環で日本企業の企業統治(ガバナンス)改革を推し進めた。一連の改革では、経済協力開発機構(OECD)のガバナンス原則と英国のガバナンス制度が手本とされた。
ただ、その英国では7月に就任したメイ首相がガバナンス改革をする方針を打ち出した。多くの論点があるが、我が国にとって特に重要なのは、労働者の代表を企業の取締役会メンバーに加える提案だ。というのも日本企業を総体でみれば、メイ首相が改革の必要性を指摘した問題がすでに表面化しているからだ。
法人企業統計でリーマン・ショック前の2006年と15年を比較すると、当期純利益は28.2兆円から41.8兆円へと13.6兆円増加して過去最高を記録した。増益に大きく貢献したのは人件費の削減7.3兆円、支払利息の減少3兆円だ。そして配当が6兆円増加した。
日本のガバナンス改革では、株主や従業員らすべてのステークホルダーの役割の重要性が標榜されている。しかし現実には、株主の利益だけが強く認識された。結果的にはこれこそが付加価値の配分において、従業員向け賃金や借入金の債権者より、株主向け配当が優先された背景だと考えられる。
このような姿のガバナンス改革は結果的に株主資本のコストを押し上げた。他方、銀行借り入れや社債発行の資本コストはマイナス金利など異次元の金融緩和の効果で大きく低下した。低すぎた株主の資本コストが上昇するのは当然としても、どの程度が適切なのか、これが正常な姿なのか、など改めて問う必要があるのではないか。
不十分な賃上げは経済の好循環とデフレ克服の観点でも問題だ。自律的な成長軌道に乗れないがために、政府は毎年のように財政赤字を原資とした景気対策を繰り返し、金融緩和もマイナス金利など異次元の領域にまで推し進められる悪循環に陥っている。
1980年代の日本では官民が協力して賃上げを抑制することで、石油ショックを機に発生したインフレの統制と経済の自律的成長への誘導に成功した。このミラーイメージで、経済の好循環とデフレ克服に向け、官民で賃上げを実現する協力体制を構築できないものだろうか。これはガバナンス改革で株主重視に振れ過ぎた振り子の針を、英国に先んじて、従業員や下請けも重視する姿勢に戻すことでもある。
[日経新聞11月1日朝刊P.28]
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