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バイクが売れない…販売台数9分の1、原付は「絶滅危機種」、あの「三ない運動」で大打撃
http://biz-journal.jp/2016/11/post_17086.html
2016.11.04 文=編集部 Business Journal
二輪車では本田技研工業(ホンダ)が世界のトップメーカー。ヤマハ発動機は国内2位だ。1980年代には「HY戦争」と呼ばれる熾烈なシェア競争を繰り広げた。そんな浅からぬ因縁の両社が手を組む。
ホンダとヤマハ発は10月5日、排気量50cc以下の「原付一種」の生産や開発で提携すると発表した。ヤマハ発は国内販売の大半を占める「ジョグ」「ビーノ」の生産をやめ、2018年中にホンダからOEM(相手先ブランドによる生産)による供給を受ける。ヤマハ発は台湾で年5万台を生産して日本に輸入してきたが、生産から撤退する。
ヤマハ発の渡部克明取締役は「単独で、この先の環境規制の強化に対応するのは難しい」と語った。今後は125ccや中大型クラスに生産を集中する。
今年2月、ヤマハ発からホンダに提携を持ち掛け、水面下で交渉してきた。HY戦争について問われた渡部氏は「私が入社したのはHY戦争で負けた年。5%減俸になった。HY戦争によるしこりやわだかまりはもうない」と述べた。
かつてのライバル同士が提携したのは、排気量50cc以下という国内専用で“ガラパゴス化”した車種を効率化したいとの思惑で一致したからだ。
■ヤマハ発のスクーター「パッソル」が大ヒット
二輪車は、原付第一種(排気量50cc以下)、原付第二種(51〜125cc)、軽二輪車(126〜250cc)、小型二輪車(251cc以上)に分類される。かつて、排気量50cc以下の原付バイクを乗り回すことは、カッコいい若者文化だった。HY戦争は50cc以下の車種の主導権争いだった。
原付一種の人気に火がついたのは1970年代のこと。ホンダが76年、自転車感覚で気楽に乗ることができる「ロードパル」を、6万円を切る低価格で発売した。イタリアの大女優ソフィア・ローレンが登場するテレビCMが話題になった。
ヤマハ発は77年、スカートをはいた女性でも両足を揃えて乗れるスクーター「パッソル」を売り出した。バイクのイメージからほど遠かった女優の八千草薫をCMに起用して大ヒットを飛ばした。パッソルは、主婦の買い物用、高校生や大学生の通学用として受け入れられ、旋風を巻き起こした。
■高校生にバイクを禁止する「三ない」運動で、バイク販売が激減
だが、空前のバイクブームは長く続かなかった。暴走族の横行や高校生の死傷事故が続出し、警察は取り締まりを強化。学校が高校生にバイクの免許を取らせない、買わせない、乗らないの「三ない」運動を展開したため、販売は急速に落ち込んだ。
近年では、地方都市での移動手段は軽自動車が主役になり、子育て世代では電動アシスト自転車が人気を集めている。
国内の二輪車の保有台数は1148万台で、うち原付第一種が618万台(総務省調査、15年3月末現在)。単純計算で、ほぼ10人に1人が持っていることになる。
しかし、15年1年間に国内で販売された二輪車は37万台で、うち原付第一種は19万台(日本自動車工業会調べ)。HY戦争当時の82年と比べると、二輪車の国内販売台数は9分の1になった。
さらに、排出ガス規制の強化に背中を押され、ヤマハ発はホンダと提携した。排ガス規制は10月1日から生産される新型車に適用される。継続生産車両に関しては17年9月1日に新しい基準値になる。現在のラインアップのリミットは来年8月末ということだ。
新しい基準は、EUで施行されている排ガス規制「ユーロ4」との整合性を図ったものだ。日本の基準を国際基準に近づける狙いがある。
■グローバル基準は125cc
もうひとつの理由は、原付第二種と呼ばれる125ccのバイクの免許の取得が簡素化される可能性が高まっていることだ。
16年9月17日に神戸で開催されたBIKE LOVE FORAMで、経済産業省の担当者が原付第二種の免許所得を簡単にする取り組みに意欲を示した。日本自動車工業会や全国オートバイ協同組合連合会などの業界団体がここ数年来、警察庁などに要望してきた。
125ccのバイクに乗るには、小型自動二輪免許が必要だ。50cc以下は普通免許を持っていれば乗ることができる。小型自動二輪免許を取るには時間もカネもかかる。
欧州やアジアの多くの国では、125ccまでクルマの免許で乗れる付帯免許となっている。グローバル化の中で、この流れに乗っていく狙いもある。アジアなど成長市場での普及モデルは125ccが中心だ。
海外が主戦場になった二輪車メーカーにとって、国内専用のガラパゴス化した50ccの生産効率は極めて低い。そのため、規模の縮小を進めてきた。排ガス規制と125ccのバイクの免許取得の簡便化の流れで50cc以下は風前の灯火となっている。
今後の焦点は国内で50ccを生産するスズキの動向だ。3社連合に発展するかどうかに注目が集まる。
(文=編集部)
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