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働いたら年金が減るって…制度上必ず起きる「働き損」という落とし穴 長い老後を生き抜くために
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49920
2016.11.03 週刊現代 :現代ビジネス
■「働いたら年金減らしますね」
働くことの意味には、生きがいや誇りもあるだろうが、第一義はやはり収入だ。ところが、せっかく収入を得るため働いたにもかかわらず、「損をしてしまった」という声が続々と上がっている。
埼玉県在住の高橋悟さん(62歳・仮名)は、22歳から営業畑で働いてきた事務機器メーカーを定年退職後、再雇用された。
「退職前の月収は40万円で、再雇用後は24万円。給料は4割カットですが、このご時世、定年してもまだ仕事があるのはありがたいと、素直によろこんでいました。
けれども、いよいよ厚生年金の報酬比例分がもらえるというので、年金事務所に行って話を聞いたら、ほんとうにガッカリさせられたんです。38年間、掛け金を払ってきた厚生年金が、私がまだ働いているからと減額された。
月額で8万円ほどになるはずだったものが、3万4400円もカットされて、しかもそれを取り戻す方法はないって言うんですよ。こんな理不尽な話がありますか」
どういうことなのか。社会保険労務士の岩田健一氏は、こう説明する。
「これには二つの制度による減額が考えられます。
まず一つ目が、在職老齢年金の制度によるもの。
在職老齢年金とは、厚生年金の受給を開始した方に一定以上の収入があったとき、年金の減額が行われるものです」
非常に複雑な制度だが、まず基準になるのは、「総報酬月額相当額」。これは「その月の収入+直近1年間に受け取った賞与の12分の1」で算出される。要するに、その月の給与と、この1年間にもらったボーナスを月あたりの金額にしたものの総計にあたる。
「在職老齢年金では、『年金の基本月額が28万円以下かどうか』、『総報酬月額相当額が47万円以下かどうか』の二つの条件で減額分の計算の仕方が変わります」(岩田氏)
冒頭の高橋さんの場合、年金は月額8万円で28万円以下。総報酬月額相当額は前年のボーナスはなし、現在の給与月24万円で47万円以下という条件に当てはまる。
この場合、年金の減額分は、(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2となるため、高橋さんは(24万円+8万円-28万円)÷2で、月2万円の減額となった。
働いて収入があるからというだけで、年額にして24万円も損をするハメになったのだ。
ただ高橋さんは年金が2万円ではなく「3万4000円減った」という。残りの減額はなぜ生じたのか。岩田氏は、ここにもワナがあると話す。
「この方の場合、60歳時点の給与に比べて、再雇用後の給与が6割まで減っています。60歳以上になって再雇用されたとき、給与が60歳時点の75%未満になると、雇用保険から『高年齢雇用継続基本給付金』というものがもらえます。これは、定年後の給与の15%を給付してくれるといううれしい制度で、月収24万円の方なら15%の3万6000円が給与にプラスされることになります」
一見、ありがたい制度だが、それがなぜ、年金の減額につながるのか。岩田氏が続ける。
「ところが、先の在職老齢年金の対象者がこの給付金をもらうと、厚生年金から毎月の給与(標準報酬月額)の6%がカットされることになっているのです。月収24万円とすると、1万4400円の減額になります。せっかく給付金をもらっても、年金は在職老齢年金と合わせて3万4400円引かれてしまいます」
少しでも老後の生活を楽にしたいと働いているのに、制度が足を引っ張ってくる。差し引きではたしかに月1600円の「微増」だが、「あなたが働いているので、年金を減らします」と年間41万円強もの厚生年金の減額を受けるというのは、釈然としない。
だが岩田氏は、「減額の幅は人によって、さまざまな場合がありますが、基本的に年金を受け取りながら働くと、年金は減額されてしまう」と指摘する。
60代を過ぎても80代、90代まで生きるのが当たり前になった現在、リタイア後の時期を一口に「老後」と言っても、その期間は20年、30年と続いていく。その長い老後を生き抜くため、働き続ける道を選ぶ人が増えているわけだが、制度上必ず起きる「働き損」が待っている。期待通りの「ゆとり」を手にすることは、想像以上に難しい。
一方、リタイア後の厳しい人生を見据え、現役最後の50代から、人生設計を見直そうとするサラリーマンも多い。だが、そこでも大きな壁が立ちはだかる。50代は、サラリーマン人生の中でも激動の時期にあたるからだ。
50代に入ると、サラリーマンの進路は大きく3パターンに分かれる。役員昇進など出世を遂げる一部の人。平社員でも構わないと最後まで会社に残る人。そして、望むか望まないかにかかわらず、社命によって関連会社などに出向になる人だ。
このうち、老後の資金計画に大きな見直しを迫られるのが、出向となった人々だ。
総務省の統計によれば、'15年現在、日本には約73万人の出向者がおり、その数は年々、増えている。背景には、企業業績も厳しい中、年功序列で給与水準が上がってしまった50代の社員を少しでも減らし、人件費を軽くしたいという企業側の事情が透けて見える。
出向になり、積んできたキャリアと直接関係ないこともある仕事に打ち込んで、働き損になることはないのか。
■早期退職は得にならない
社会保険労務士の和田雅彦氏は、こう話す。
「通常、厚生年金や健康保険は、給与の支払いのある、つまり雇用関係のある会社のものが適用されます。元の会社に籍を置いたままの出向であれば、元の会社の厚生年金や健康保険を続けることができます。
しかし現実には、元の会社との関係を断って子会社や関係会社に移ることが多いと思います。その場合、新たに雇用関係を結ぶ会社の社会保険に加入することになり、福利厚生も出向先のものが適用されます。また元の会社で入っていた企業年金に加入できなくなったりする場合もあります」
ここで言う企業年金とは、国民年金(基礎年金)や厚生年金とは別に、企業がそれぞれ独自に運営している年金制度のことだ。和田氏が続ける。
「年金のことを考えるなら、平社員としてでも元の会社に留まるというのも、一つの選択肢ではあります。ただ、出向を断るというのは、多くの場合、難しいものです。
厚生年金は掛けた期間が長いほど老後にもらえる金額は多くなる。それは当然のことですが、さらに『所得比例年金』と言って、収入が多くなるほど老後の受取金額が増え、その効果は侮れません。
出向するにしても、50代なら給与は高めになりますから、年金という観点で言えば、とにかく1年でも長く掛け金を払い続けるのが得策でしょう」
それでも、会社の処遇に耐えられない、という場合、早期退職して独立する手もある。FPの横川由理氏はこう話す。
「9月末にもメットライフ生命が希望退職を募るというニュースがありました。2年分の月収を一時金として上乗せするそうです。ただ、こうした退職金は意外と当てになりません。55歳で自己都合での退職金が1000万円あり、早期退職制度で500万円上乗せされたとしましょう。年金受給開始の65歳まで10年間をこのおカネで過ごすなら、毎月12万円で使い切ってしまいます」
FPの長尾義弘氏は、働き損ならぬ「働き得」をして、退職後の生活に備えることを勧める。
「FPの会合に行くと、参加者の多くは中高年のサラリーマン。製薬会社や損保の人事部の方などに会いますね。こうした方々は、50代で独立したり、定年後に働き続けることを見据えてFPの資格を取って備えている。
雇用保険に加入していれば、教育訓練給付制度と言って、FPや栄養士、介護福祉士など、さまざまな資格の勉強の費用の20%、上限10万円までが補助されます。退職後も1年間は利用できる制度で、お勧めですね」
人生の最終盤まで、自分はどのように働いていくか。とにかく、せっかく働いたのに損をすることのないよう、落とし穴を避ける知識が必要だ。
「週刊現代」2016年10月15日・22日合併号より
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