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「合理的な説明」に窮する日米の中央銀行(東洋経済)
http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/246.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 11 月 02 日 21:17:40: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

米国は引き続き利上げを見送りか。日米の中央銀行は政策の整合性を問われている(写真:ロイター/アフロ)


「合理的な説明」に窮する日米の中央銀行
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161102-00143291-toyo-bus_all
東洋経済オンライン 11/2(水) 15:00配信


 日本株が岐路にさしかかっている。日経平均株価は9月27日の安値1万6285円をつけて以降、上昇してきた。FRB(米連邦準備理事会)による年内利上げ見通しが強まる中で新興国による予想外の利下げ、原油価格の上昇によるドル高、株高に後押しされた形だ。

 こうした中で日銀金融政策決定会合が終了、FOMC(米公開市場委員会)の結果が2日(日本時間は3日)に発表される。11月8日に米国大統領選挙を控えていることから、「日米ともに金融政策の変更なし」というのが市場のコンセンサスだ。日銀は予想通り、金融政策の現状維持を決定した。

■米住宅価格指数が2007年10月以来の高水準に

 一方の米国で気になることは、「主要20都市圏のケース・シラー住宅価格指数」が前年同月比で5.1%上昇し、2007年10月以来の高水準に達したことと、米国第3四半期GDPで、第2四半期は2.1%減だった「石油・ガス油井を含む非居住構造物への投資」が5.4%増と、2014年第2四半期以来の伸びを記録したことである。

 「金利の正常化」と「(超過)準備預金の正常化」という「2つの正常化」を果たさねばならないFRBにとって、「Behind the curve(政策が後手に回ること)」は避けなければならない事態のはずだ。

 これまでこうした事態に陥らずに済んできたのは、原油価格の低迷などで魅力的な投資先が少なかったことも大きい。しかし、利上げ先送りによって米国株価指数が最高値圏で推移するなか、OPEC(石油輸出機構)が減産合意に向けて動き出したことによる予想外の原油価格の上昇によって、「魅力的な投資先」が増えつつある。

■米国の利上げは見送られそうだが…

 10月31日には9月の米国個人消費支出コアデフレーター(PCEコアデフレーター)が発表された。前年同月比1.7%の上昇と、FRBが目標とするインフレ率2%には届かなかったものの、ほぼ目標に近づきつつある。

 FRBが負っている責務「物価の安定」は、基本的にはフロー面でのインフレを念頭に置いている。しかし、「(超過)準備預金の正常化」を迫られているFRBが「Behind the curve」を警戒しているのは、バブルを生みかねないストック面でのインフレ(資産価格上昇)を懸念しているからである。

 今後PCEデフレーターが上昇し、フロー面での物価の上昇が確認されることになれば、「住宅価格」、「石油・ガス油井を含む非居住構造物への投資」というストック面でインフレの気配が感じられる中、FRBはどのように対応するのか説明を求められることになる。

 大統領選挙やFOMC後の4日に雇用統計が発表されるなど、日程的には利上げは考え難い。だが、資産価格上昇の気配が見られる中で利上げを1カ月先送りするというのはFRBにとって大きな賭けだともいえる。

■大きな困難に直面する日銀

 金融政策の説明という面でより大きな困難に当たっているのは日銀である。

 11月1日の金融政策決定会合で、2016年度の物価見通しを0.1%からマイナス0.1%に引き下げ、目標とする上昇率2%の達成時期も「2017年度中」から「2018年度ごろ」に先送りした。見通しを下方修正しながら追加緩和を見送るという言行不一致の説明は難しい。

 消費者物価指数コア(コアCPI)は7カ月連続ですでにマイナスを記録しているが、日銀が見ている9月の日銀版CPIは8月の同0.4%上昇から低下したものの未だに前年同月比0.2%上昇とプラスを保っている。

 日銀版CPIが前年同月比0.4%上昇という段階で、9月に追加緩和に踏み切ったことは、すでに物価見通しを下方修正していたことに他ならない。

 「日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の『物価安定の目標』を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する。・・・中略・・・イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う」

 2013年4月に「異次元の金融緩和」に踏み込んで以降、黒田日銀はずっと「イールドカーブ全体の金利低下を促す」ことを金融調節の手段として掲げてきた。

■「長期金利コントロール」は簡単ではない

 しかし、先週の参院財務金融委員会に出席した黒田総裁は「超長期債を含め、イールドカーブ(利回り曲線)が低下し、フラット化したらいいとは考えてない」と述べ、「異次元の金融緩和」の根幹が間違っていたことを白状するような証言をしている。

 一方、同委員会に出席した岩田日銀副総裁は国債のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)については「長期金利をコントロールするのは困難と考えていたが、経験である程度できることがわかった」と述べた。

 しかし、市場金利をコントロールできるのは、10年国債の利回りが「概ね0%」という特殊な水準にあるからだ。「償還まで保有すれば必ず損失を被る」マイナス金利下で国債に投資できるのは基本的に日銀しかいない。したがって、日銀がマイナス金利の国債を購入すれば、国債利回りをマイナスに誘導するのは簡単なことである。

■「安倍3選」の障害になりかねず

 また、日銀は発行済み国債の約3分の1を保有しており、国債利回りを「概ね0%」に近づけるためには保有国債を売却すればいいだけのことだ。

 コントロールするのが難しいというのは、「10年国債の利回りを1%にする」というように、プラスの利回りの時の話である。日銀が発行済み国債の約3分の1を保有し、他の投資家が購入できないマイナス金利で国債を買い入れている状況で、10年国債利回りを「概ね0%」にコントロールするということは、赤子の手をひねるくらい、容易なことなのである。

 「0%」という特殊な水準に市場金利をコントロールすることが出来ていることを以て、「長期金利をコントロールできる」というのは、神(市場)を冒涜するようなものでもあり、大きなしっぺ返しを受けかねない考え方である。

 自民党が党の規約を改定したことで、規約上安倍首相の3選が可能になりつつある。しかし、「安倍3選」の上での大きな障害は、物価安定目標を達成できていない黒田総裁が2018年4月に任期を迎えることだ。ここまでに黒田日銀が推し進めてきた「異次元の金融緩和」の副作用と、効果がないことがいよいよ明らかになる可能性が高いからだ。

近藤 駿介
 

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