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企業倒産件数の推移
財務省試算の衝撃!「1%の金利上昇で日本経済にダメージ」の意味
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161028-37154247-bpnet-ind
nikkei BPnet 10/28(金) 10:19配信
日銀が短期金利だけでなく長期金利(10年債)の誘導もはじめてしばらくたちます。しかし、その結果、長期債の値動きが非常に小幅となり、新発10年物国債の売買は半減した状況となっています。金融機関はマイナス金利政策で貸出金利が低下し収益が圧迫されている上に、国債売買での収益チャンスも奪われた状況になっています。そんな中で、当面のインフレ率や金利の上昇は望み薄の状況ですが、後に引用する金利上昇に関しての財務省の試算が私には結構衝撃的でした。
安倍政権は、13年4月に異次元緩和をスタートさせた当初から「物価目標2%」を目指してきました。それから3年半もの時間が経ちましたが、依然としてその目標は達成できていません。現状の消費者物価上昇率は年率マイナス0.5%程度で、むしろ目標から遠ざかっていると言えます。
ただ、もし本当にその目標が達成されてしまったら、日本経済はかえって危険な状況に陥るのではないかと以前から私は懸念していました。インフレ率が2%になれば、長期の新発国債も2%に近い利回りにしなければ、発行できなくなってしまいます。そうならないと、投資家たちは国債ではなく、株式やゴールド、不動産などの資産を買うようになってしまいますからね。
インフレ率が2%にならなくとも、なんらかの原因で長期金利が上昇しますと、今度は既発債の価格が下がります。残存期間が長ければ長いほど、価格が下がりますので、国債を保有している金融機関は、巨額の含み損を抱えることになるのです。 では、本当に金利が上がってしまった場合、金融機関は具体的などれだけの含み損を抱え、実体経済にどのような影響が出るのでしょうか。今回は、金利上昇時の日本経済のダメージについて考えたいと思います。
■金利1%上昇で67兆円の含み損が発生
金利上昇時に、日銀や民間金融機関はどれだけの含み損を抱えるのか。2016年10月17日付の日本経済新聞朝刊に次のような記事がありました。それほど大きな扱いではありませんでしたが、衝撃的な内容です。
「金利上昇時の含み損、日本国債は大きく 財務省試算」
財務省は各国が発行する国債の金利が1%上がった場合の影響を試算した。銀行や生命保険会社など日本国債の保有者が抱える含み損は日本の国内総生産(GDP)の13.5%に達する。米国は4.2%、ドイツは2.5%だった。英国は日本と同じ13.5%だった。(2016年10月17日付 日本経済新聞朝刊)
日本が抱えるリスクは、他国と比べてもダントツに高いことが分かります。また、ここには実額が記載されていませんでしたが、他紙では「金利1%の上昇で、国債価値は67兆円ダウンする」と報じられていました。この67兆円という額は、はっきり言って小さい額ではありません。
80年代後半の空前のバブル時と比較してみましょう。当時、海外では「日本の不良債権額は100兆円規模にのぼる」と報じられていました。私は銀行員だったのでよく覚えているのですが、日本の銀行員たちは「100兆円なんてあり得ないよ」と口を揃えて言っていました。
ところが、実際はどうでしょうか。本当に100兆円もの損失を被ってしまったのです。
■金利が上がり始めると1%でとどまる保証はない
当時の100兆円規模のバブル崩壊の衝撃は、皆さんもご存じの通りです。仮に金利が1%上昇し、67兆円の含み損を抱えたときのダメージも、相当大きなものになると予想できます。そして、金利が上昇する際に1%で留まる保証はどこにありません。
先ほどの日経新聞の記事では、財務省が「国債の金利が1%上がった場合の影響」を試算したとのことですが、もし、本当に金利が上昇し始めますと、1%でとどまるとは考えにくいでしょう。当然ですが、金利が1%にとどまらず2%になれば、含み損は倍に膨らみます。2%でとどまる保証もありません。
また、含み損67兆円のうち3分の1は日銀が被ります。日銀は発行積み国債の約3分の1を保有しているからです。1%の金利上昇時の含み損は単純計算で20兆円強です。中央銀行が20兆円もの含み損を抱えてしまったら、その後、どう運営していくのでしょうか。金融が不安定になるだけでなく、経済全体が大きく混乱する危険性もあります。もちろん、民間金融機関も大きな含み損を抱えることになります。
もう一つ、冒頭でも触れましたが、長期の国債ほど価格変動リスクがありますので、金利が上昇すれば、10年物、20年物、30年物は大きな含み損を抱えることになります。特に日銀は、長期の国債をどんどん買い入れていますので、余計にダメージを受ける恐れがあるのです。そして、日銀は今後も年間80兆円ペースで国債を買い入れていくのです。
今のところは、日銀が大量の国債を買うことによって金利を抑え込んでいますが、このような状態を長期間続けることは、経済をゆがめることにもなりかねません。もし、日銀が国債購入額を削減したり、やめたりした場合には、金利が上昇することが予想されます。
■金利上昇でどんなリスクがあるのか
そもそも、金利とはどのような場合に上昇するのでしょうか。日本においては2通りあります。1つは、先にも触れたように、物価が上昇すること。もう1つは、日銀が大量の国債を買うのをやめることです。
しかし、政府は「物価目標2%」を掲げています。本当に物価が上がれば、金利も上昇し、日銀や金融機関は巨額の含み損を抱えることになります。異次元緩和はそもそも自己矛盾をはらんでいるのです。
さらに、金利上昇は、財政を圧迫する恐れもあります。金利が上がれば、「国債の利払い費」も上昇するからです。平成28年度の一般会計予算約96兆7000億円のうち、約10兆円が「国債の利払い費」に計上されています。
もし、金利が1%上昇すると、政府の負債総額は1000兆円超もありますから、利払い費は数年の単位で考えると年間数兆円程度、中長期的には約10兆円増えることになるのです。
さらに、日本は少子高齢化が急速に進んでいますから、赤字国債の残高が年々増え続けていきます。いくら消費税を引き上げて、増加分を社会保障費に充てようとしても、金利が上がれば、利払い費だけでその額が相殺されてしまいかねません。消費税を1%上げて得られる税収増は、約2.7兆円です。もし10兆円利払いが増えれば、4%分の消費税が吹き飛ぶ計算になります。
すると、赤字国債の増加に歯止めがかからなくなります。最悪の場合は、国債の信任が失われて国債金利が跳ね上がり、さらに財政が悪化するということもあり得るのです。もちろん、金利が上がれば国債の含み損も巨額に膨らむということです。
■今後は金利上昇の可能性が高い
金利は、何がきっかけで上昇しはじめるか分かりません。今後のシナリオを考えてみますと、まず、米国は12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを始めると思われます。
すぐに1〜2%まで上がることはないでしょうが、数年のスパンで考えますと、2%程度まで上がる可能性は十分にあります。
すると、円安ドル高が進みます。円安が進めば、日本経済にとっては輸出やグローバル企業の業績という点で恩恵を受けやすいかもしれませんが、逆に輸入物価は上昇します。原油価格の動向にもよりますが、インフレ率が上がります。
インフレ率がプラスになりますと、長期金利も短期金利も抑え込み続けるということは、ほぼ不可能でしょう。
なぜ、金利を抑え込めなくなるかといいますと、冒頭でも軽く触れましたが、投資家が国債を買わなくなってしまうからです。インフレはお金の価値の目減りですから、インフレ率より低い金利の長期債を買っていては、お金の価値の目減りをカバーできないからです。
以上の流れを考えると、今後金利が上昇しはじめれば、日本の金融はじわじわと厳しい状況に追い込まれていくのではないかと思います。
■67兆円の含み損で実体経済にどんな影響があるのか?
では、金利が1%まで上がり、67兆円の含み損が発生すると、実体経済にはどのような影響があるのでしょうか。
含み損67兆円のうち、3分の2は民間金融機関が被ります。単純計算で40兆円強です。すると、民間金融機関の自己資本比率が悪化しますから、貸し渋りが起こります。
今、企業倒産件数は異常に低い水準で推移しています。
これは、月1500件を超えると危険水域、逆に1000件を下回るとかなり低い水準と判断しています。今は、極めて低い水準だと言えますね。ただし、資産が負債を上回る「資産超過」状態での事業停止「休廃業」は、この倒産件数に含まれていませんが、2015年も3万5000件以上の高い数字で推移しています。
なぜ、企業倒産件数が極端に減っているかと言いますと、異次元緩和の影響で資金繰りが潤沢、つまり銀行がお金を比較的楽に貸してくれるからです。以前の連載で取り上げた「日銀短観」でも、資金繰りが楽と答えた企業の比率は高い水準を維持しています。
しかし、金融機関が損を出し、自己資本比率が下がると、資産の圧縮の必要から貸し渋りが起こりかねません。そうなると、業績の悪い企業から一気にお金が引き揚げられてしまう可能性があります。倒産件数が増え、当然のことながら、景気は急速に悪化していくでしょう。
金融は、経済の血液です。血液の流れがおかしくなると、結局、実体経済もおかしくなるのは当然の話です。
■財務省の本音は「増税」ではないか
政府や日銀にとっては、将来の安定性を確保することも、現状の景気回復とともにとても大切な仕事です。今の金融政策を見ていると、私はその役割を十分に果たそうとしているようには思えません。正しい言い方をすると、「将来を犠牲にしながら、景気浮揚を狙っている」という印象を受けます。
そもそも、なぜ財務省は、金利が上昇した場合に民間金融機関などが抱える含み損の試算を現時点で公表したのでしょうか。はじめは、私は国民の不安を煽るだけではないかと思っていましたが、その思惑は、「もう国債を増発するのは危険だから、増税をするべき」というシグナルなのではないでしょうか。
財務省としては、増税を強く望んでいます。しかし、消費税増税は二度まで延期され、2019年の増税も怪しいものです。だからこそ、今の国債残高は異常に多く、金融市場を乱す危険があることをアピールし、増税へのしっかりした道筋をつけたいのではないでしょうか。
もしそうであれば、政府は増税の前に、歳出の削減に努めるべきです。現状の景気が続くとなれば、19年10月に控える消費増税もさらに延期となるでしょう。2020年東京五輪に向けて景気が良くなることを信じている人が多いようですが、その可能性は低いと私は思います。
後に引けなくなった金融政策をどうするのか。日銀がどのような答えを出すのかは分かりませんが、残念ながらその先行きは明るいものではないと感じます。
(構成=森脇早絵)
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