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「円高の危機」は去った!? 年末に向けドル・円レートはこう動く 日米マネタリーベース比率から推計
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50068
2016.10.27 安達 誠司 エコノミスト 現代ビジネス
■「円買いゲーム」は終了
1月末の日銀によるマイナス金利政策導入以後、ドル円レートは急激に円高にシフトし、1ドル=100円割れも覚悟せずにはいられない展開となった。
これにともない、国内では、「デフレの再来」という見方も散見されるようになったが、9月末以降、ドル円はやや円安方向に戻し、現在は、1ドル=104円台で推移している。
10月に入ってから、シカゴの為替先物市場でのドル円の建玉をみても、円の買い持ちポジションも減少しており、投機筋の猛攻も一服したようだ。ヘッジファンドの一部からは、「もう円買いゲームは終了した」との意見も聞かれるようになっており、1ドル=100円割れの危機はとりあえず回避されたようにもみえる。
一方、為替アナリストの見方はめずらしく2つに分かれている。「1ドル=90円台乗せが近い」と予想する為替アナリストも少なからず存在する一方で、「1ドル=100円割れの危機は過ぎ去った」と予想する向きも増えてきている模様だ。
マイナス金利政策導入以降、金利差で為替レートを予想する方法は事実上、崩壊しているため、「円高派」の拠り所は、日本の経常収支黒字(もしくは貿易収支黒字)の拡大のようだ。
だが、そもそも、複式簿記の原理で作成された国際収支統計では、貿易黒字の額が増加する局面では、同時に対外証券投資等の広義でみた金融収支赤字が拡大しているはずで、統計上のネットの国際収支はゼロになるはずである。そのため、国際収支統計をどんなにいじって「真の為替市場の需給関係」を算出しても何の意味もない。
また、「円安派」の多くは、チャート分析を行う人が多いようだが、そもそも、統計学上、チャート分析の有効性は否定されており、筆者は、これを冗談半分でしか聞いていない。
トレーディングでは、チャートを用いて儲けを出しているという人も確かにいるが、彼らの場合は、「フォーミュラ」としてのチャート分析が有効というより、個々のトレーダーの才能に依存するところが大きいと考えている。
■日米のマネタリーベース比率に着目
ところで、筆者は、日米のマネタリーベースの動きの違いを元に為替レートを予想している。これは、いわゆる「ソロスチャート」に近い考え方であり、為替アナリストの間では極めて評判が悪い。
だが、筆者は、昨年末時点で、大多数の「識者」が1ドル=125〜130円程度の円安を予想する中、今年は円高方向で推移する可能性が高いと予想した(https://post.gendai.ismedia.jp/articles/-/46933)。
そのときの予想値は1ドル=115円〜120円だったので、筆者の想定よりも円高が進行しているわけだが、相対的なパフォーマンスはそれほど悪くないと考えている。
「ソロスチャート」についての話を進めると、ドル円レートを日米のマネタリーベース比率を説明変数として回帰分析する「単純な」ソロスチャートを作成すると、現在のドル円レートの適正値は1ドル=120円程度となる。
だが、この手の「単純な」ソロスチャートは、回帰分析が有効であるための統計学的な条件を満たしていない。そのため、筆者は統計学的な有効性を満たすモデルに基づいてソロスチャートを修正している。
学術的な論文ではないため、具体的な為替モデルには言及しないが、筆者の方法では、日米のマネタリーベース比率は、ドル円レートの予想値自体というより、むしろ、ドル円レートの「中長期的な均衡水準」を算出するベースとなる。
実際のドル円レートは、当然、この「中長期的な均衡水準」から乖離して変動するが、ドル円レートの具体的な予想値を作るためには、両者が乖離することを許容し、この「中長期的な均衡水準」の乖離率の動きを考える必要がある。
実は、筆者のモデルでは、この乖離率は、ほぼ一定の法則で循環するという性質がある。つまり、実際のドル円レートは、「中長期的な均衡値」から一定水準乖離した場合、今度はその乖離を縮小させるように変動するという「循環法則」を有している。
すなわち、筆者が、ドル円レートの予想をする場合、@日米マネタリーベース比率から算出される「中長期的な均衡水準」がどの程度であるか、及び、A実際のドル円レートと「中長期的な均衡水準」との乖離率の位置関係、の2つが重要となる。
■年末のドル円レートは?
そこで、まず、ドル円レートの「中長期的な均衡水準」だが、直近9月末時点でみると、1ドル=110円程度であると推測される。そして、この均衡水準のトレンドは依然として円安である。
これは、日本のマネタリーベースがここまでは一応、年間80兆円ペースで拡大し続けている一方、米国のマネタリーベースは、緩やかな減少トレンドで推移しているためだ。
そして、日米のマネタリーベースの動きだが、10月に入ってから、米国のマネタリーベースの減少ペースが加速している。そこで、日本のマネタリーベースの供給ペースが従来通りで、米国のマネタリーベースが1月〜9月の平均的な減少ペースで進むと仮定すると、年末(12月末)時点での「均衡水準」はさらに円安になり、1ドル=125円程度となると試算される(ただし、日銀のマネタリーベースの供給ペースが減速した場合はもう少し円高になるだろう)。
一方、「中長期的な均衡水準」と実際のドル円レートの乖離率を計算すると、9月末時点のドル円レートは1ドル=101.8円だったので、約7.5%の円高となる。
この乖離率は、外的なショックがない場合は、概ね±15%のレンジで循環している。すなわち、9月末時点での乖離率は、「中長期的な均衡水準」を基準とした場合の円高局面のちょうど中間地点に位置していることになる。
乖離率の動きをみてみると、ちょうど今年の6月にゼロの時点に位置している。そこで、今後3ヵ月で乖離率が円高のピークである15%の乖離率まで到達すると仮定した場合、12月末のドル円レートは、前述の「中長期的な均衡値」の予想値である125円×(100-15)%=106.25円程度と試算される。
もちろん、この手の計算には誤差がつきものなので、誤差を加味すると、今年の年末のドル円レートは、105〜110円程度と試算される。
■円高に戻る可能性はあるか
そして、来年以降だが、米国が利上げ局面に位置し、FRBがマネタリーベースの縮小を続ける限り、円安局面(というより円高の修正局面)が続くと予想される。
筆者は、米国景気の減速が近づいているために、来年のいずれかのタイミングで、FRBは再度、金融緩和に転換する可能性が高いと考えている。
この場合、米国のマネタリーベースは再び拡大基調で推移する可能性が高いと考える。そして、これは、ドル円レートの中長期的な均衡値を円高方向に動かす要因となる。
一方、今年の年末で、(「中長期的な均衡水準」を基準として)円高局面はピークを迎えることから、「中長期的な均衡水準」からの円高方向への乖離率は縮小していく。
従って、両者を総合すると、実際のドル円レートは、来年も円安方向で推移する可能性が高いと考える。
だが、注意すべき点は、日米マネタリーベース比率の水準が大きく変わる場合(すなわち、日米マネタリーベース比率のボラティリティが上昇)、ドル円レートの水準も「ジャンプ」する可能性が高い点である。
もし、来年、FRBが金融緩和に舵を切った場合、日銀が何の行動も起こさなければ、ドル円レートの水準が突然「ジャンプ」して円高水準に戻る可能性がある(これは、リーマンショックのときに発生した)。
また、別のケースとして、日米以外のグローバルショックによる「リスクオフ」の局面では、このモデルは機能しなくなる(この場合は、「リスクオフ」特有の為替モデルを構築する必要があると考える)。当然、「リスクオフ」の局面では、円高の進行が予想される。
いずれのケースにおいても、日銀のアクションが必要となろう。筆者は、円高の修正局面に入った現段階では、日銀による追加緩和の必要性は幾分、後退したと考えるが、この2つのリスクシナリオが実現した場合においては、日銀が積極果敢に追加緩和することが望まれる。
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