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出光興産のガソリンスタンド(撮影=編集部)
出光の合併を阻止し株主に損をさせる創業家は、経営合理性も「義」も欠如している
http://biz-journal.jp/2016/10/post_16945.html
2016.10.20 文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント Business Journal
石油元売り大手、出光興産と昭和シェル石油の合併に向けた協議が迷走している。出光創業家が反対しているためだ。しかし、同社の長期的発展の視点からみると、この反対は果たして正しいのだろうか。逆にここで大株主としての“度量“を示せば、その世評は高まるだろう。
出光の月岡隆社長と昭和シェルの亀岡剛社長は、10月13日に共同記者会見を開き、来年4月としていた合併の時期を延期すると発表した。出光創業家が現計画での合併に反対しているためとした。
出光による英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルからの昭和シェル石油株取得は、従来どおり10〜11月を予定している。2017年4月に予定されていた合併は延期するが、株式取得に向けた公正取引委員会の企業結合審査は続いているという。
■出光の創業家が頑なに反対
ガソリンや石油の市場規模縮小が続くなか、業界各社は合従連衡により規模を確保・増大することで生き残りを図っている。民族派である出光と外資の昭和シェルが合併を発表したのが、15年11月のことだった。“資本の国籍”は違えど、現下の業界地図からは妥当な組み合わせとみられた。
ところがその発表の翌月、出光創業家の出光昭介氏が反対を表明して、本合併案件は迷走し始めたのである。
89歳の昭介氏は、出光創業者である故出光佐三氏の長男で、同社の第5代社長、そして会長を経て01年に代表権のない名誉会長に退いている。昭介氏個人としての持ち株比率は1.21%だが、創業家関連で3分の1以上の株式を保有し、合併が諮られる株主総会が開かれれば、グループとして拒否権を行使できるとみられている。
合併への対抗策として、本年8月には昭和シェル株40万株を取得するなど、昭介氏の両社合併への反対の意思は固いとみられるが、代理人として弁護士の浜田卓二郎氏を立て、自らは表に出てこない。館長を務める出光美術館は出光本社内にあるが、本案件について出光の現経営陣と面談したのは1回にとどまっているとされる。
■大家族主義の社風が出光の誇りだ
私は1984年に1年間、出光本社とビジネスでかかわったことがある。当時は米シアーズのプロジェクトを代表する立場だったので、出光側の経営中枢チームと仕事をさせてもらった。その出光チームには創業家の方もいたので、総帥だった昭介氏について尋ねると、「社長は米ハーバード大学卒業で」と誇らしげな顔で告げられ、肝を潰した記憶がある。
ちょうど私は米国留学から帰ってきたばかりだったので、日本で高校まで過ごした昭介氏がハーバード大学に入学することは、同大学の経営大学院に入るより難しいということをよく知っていたのだ。東京大学に合格するより、ずっと至難の業である。
当時、出光はサントリーと並んで、非公開企業、つまり同族企業の最大手の一つだった。出光チームから私が聞かされた社是は「和(やわらぎ)」というもので、大いに驚いたのはこの社是により、出光には定年がない、もちろん解雇もない、そして組合もない、という特異な労使関係であり、企業文化だった。
社員の離職率も低かったし、皆さん丁寧で、人間関係を本当に大切にしている会社だった。有名な「出光の大家族主義」である。前述した特異な諸制度は、上場した後の今に至るまで同社では受け継がれている。
昭介氏が今回の合併話に反対を表明したのは、そんな異色の企業文化を持つ出光と、外資である昭和シェルとでは「社風が合わない」、この1点に尽きる。
■君臨して統治しないのが大オーナーの矜持
しかし、昭介氏のこだわりは率直にいえば過去の栄光を求めているに等しい。長く大手同族企業の旗頭だった出光は、06年に上場公開された。それは、昭介氏の後任社長として同族でない天坊昭彦社長(当時)によって実現された。
昭介氏はそれ以前、01年に代表権のない名誉会長に退いていたので、その立場は同社の上場により、「最大株主グループである創業家を代表する」という「実質オーナー資本家」に変容して今日に至っている。
今回の合併については、ビジネス上の合理性、つまり規模の拡大、コスト削減、経営効率化などのメリットが、両社の経営陣から繰り返し報告された。そして、2社による合併可能性の討議を通じて十二分に精査された結果、現下の状況で最善策として合意されたものだ。
創業家は合併反対の理由として、両社の企業体質の違いを挙げる。このほかには、イランと親密な関係を持つ出光が、サウジアラビア国営石油の資本が入る昭和シェルと合併することは、両国が対立する状況下では不適当だとしている。しかし、両社が説明する合併による経営合理性について、個々の要素を創業家側は取り上げていないし、判断も示していない。
株主資本主義では「最大株主は会社を潰してもよい」とされるが、実際にはステークホルダーのことを慮るべきだろう。
合併延期の発表により10月13日、出光の株価は前日比6%安、昭和シェル株は5%安と急落した。創業家が合併反対を打ち出して以来、両社の時価総額は約460億円減少している。つまり、多くの株主が損失を被っている。
9月に入り、出光の販売店組織「全国出光会」が合併に賛成の立場を表明し、創業家と経営者側に話し合いの再開を要望した。経営合理性という観点から創業家はその論点の「理」を持たないとしたら、創業以来取引のある販売店の離反により、「義」を失ったというべきだろう。
全国出光会のアプローチに対しても、昭介氏は面談の扉を開けようとしていない。いわば「聞く耳を持たない」。これはしかし、同社が創業以来標榜してきた大家族主義と大きく異なる対応ではないだろうか。この頑なな態度で昭介氏は大家族からの「信」を失っていると知るべきである。
全国出光会が仲裁に乗り出したのを契機に、創業家側は扉を開き、矛を引くタイミングとすべきである。
経営は現役経営陣に任せるとして「よきに計らえ」とするのが、世に尊重される大オーナーというものでないだろうか。それが、創業家に残った「名」を残す、輝かす途ということになるだろう。
「名誉会長がハーバード大学に入ったのは英邁なことだった」
こんな称賛を今後、出光社員から聞くようなことはあるのだろうか。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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