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ポンド急落。しかし中長期的にヤバそうなのはユーロの動向だ 英国「ハード・ブレグジット」懸念
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49960
2016.10.17 真壁 昭夫 信州大学経済学部教授 現代ビジネス
10月に入り、英国が移民の流入を阻止し、代わりにEUの単一市場へのアクセスを喪失するという“ハード(強硬な)ブレグジット”への懸念が高まっている。
これを受けて為替相場では、主要通貨に対して英ポンドが大きく下落している。7日の朝8時には投機的な動きを伴って、ポンド/円の為替レートが131円台から121円まで瞬間急落(フラッシュクラッシュ)し、31年ぶりの安値を付ける場面もあった。
英国が関税や数量制限の撤廃という恩恵を失い、EUの単一市場にアクセスできなくなれば、英国経済の地盤沈下は避けられない。それに加え、EUに残るドイツやフランスなどにも「英国が出るなら我々も」とEUから離脱し、自国の決定権を国民の手にとり戻そうという考えが高まりやすい。
そうなると欧州の政治は、需要の低迷を支えるために中長期的な観点で必要な判断を下すよりも、目先の支持確保を重視するだろう。各国がEUの将来像を共有し、改革にコミットすることは難しくなる。
その結果、単一通貨ユーロに加盟する国々の非対称性が解消されず、ユーロ持続性への懸念は高まりやすい。
■ハードブレグジット
10月2日、英国保守党の党大会にてメイ首相は、2017年3月末までにEU離脱(ブレグジット)の意思を通告すると表明した。この通告期限は市場が想定していたタイミングよりも早く、ブレグジットへの懸念、警戒感につながった。
メイ首相はEUの単一市場へのアクセスを維持するとしつつ、英国への移民流入を止めることも重視している。
メイ首相〔PHOTO〕gettyimages
メイ首相の発言を確認すると、英国に決定権を取り戻すことが重視され、移民流入阻止への考えは強いようだ。
国民投票でEU離脱が決定されたのも、移民が英国民の暮らしを圧迫し、難民問題がテロの発生など社会情勢の不安定化につながっているとの懸念が強いからだ。単一市場へのアクセスも重要だが、それ以上に人の移動をコントロールしたいというのが英国の本音なのだろう。
一方、ドイツやフランスは、単一市場へのアクセスを維持するためには移民を受け入れる必要があると一切の妥協を許さない考えを持っている。
現に7日の「フラッシュクラッシュ」は、フランスが強硬姿勢を強調したことに影響された。この状況が続くと英国とEUの離脱交渉は物別れに終始し、ハードブレグジットが実現する可能性は軽視できなくなる。その場合、欧州経済は大きな混乱に陥るだろう。
離脱通告後、2年の交渉期限内に英国とEUの考えがまとまらない場合、ハードブレグジットの可能性は高まる。そうなると、英国経済の低迷懸念はさらに強まるはずだ。英国がEU加盟国に認められた関税・数量制限の撤廃というメリットを失い、対EUを中心に輸出が停滞するシナリオはその一例だ。
単一パスポート制度によってロンドンを拠点に欧州事業を展開してきた金融機関は、拠点を大陸欧州に移すだろう。その他の企業も然りだ。
その結果、資本が英国から流出し、失業の増加、賃金の減少などは不可避と考えられる。フラッシュクラッシュ後も、そうした懸念を織り込みつつ、ポンドは軟調に推移している。
■欧州政治が激変する
市場参加者の懸念は、ポンドの下落が急ピッチで進んでいることに集まっている。
しかし中長期的に考えると、ポンドだけでなくユーロの動向も心配だ。状況によってはポンド以上にユーロへの懸念が高まることもあるだろう。英国のEU離脱決定は、各国の反EU主義を強め、欧州を分裂に向かわせる要因になる恐れがあるからだ。
世界経済を見渡すと、中国の過剰生産能力を筆頭に各国で需要を供給が上回る状況が続いている。その結果、物価は上昇しづらくなっている。
本来なら各国は規制緩和を進め、企業の経営をサポートし、創造的破壊=イノベーションが進む環境を整備すべきだ。それが新規産業の育成や新製品の開発を通した需要回復を支えるだろう。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)を用いた生産設備の効率化への取り組みはその一例だ。
新しい技術や製品が社会に普及し、人々の満足度を高めることができれば、欧州各国はEUの単一市場の意義や恩恵を再確認できるかもしれない。
しかし、あまり余裕はない。欧州では移民が雇用機会を奪っている、財政危機以降ドイツが緊縮策を求め、各国は自国の状況に合わせて財政政策を打つこともできなかった。
そのため、EUよりも自国を第一に考えるべきとの考えが高まっている。2017年には独仏蘭で総選挙、大統領選挙が予定されている。いずれの国でも反EU主義を掲げる右派政党が支持を伸ばしている。
そんな中では、政治家は経済よりも政治優先しがちだ。中長期的な経済の安定を念頭に重要な決定を下すよりも、目先の支持確保が重視されるだろう。財政政策の統合、預金保険制度の一元化など、経済通貨同盟の強化は進みづらい。
当面、ユーロの構造的な問題は放置される可能性が高い。英国が移民の流入阻止を優先しているとの見方が強まれば、大陸欧州でも反EUの考えに拍車がかかり、単一通貨ユーロに加盟し続けるべきではないとの主張も出始めるのではないか。
このようにブレグジットは英国経済の地盤沈下だけでなくEUの分裂、単一市場の機能低下を通してユーロの下落圧力を高める可能性がある。
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