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国交省と財務省の「借金」問題(写真:産経新聞)
国交省が財務省に「借金」返済を迫るワケは…事故救済の積立金が底をつく!?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161014-00000507-san-bus_all
産経新聞 10月14日(金)15時0分配信
国土交通省と財務省の間で「借金」をめぐるバトルが過熱している。国交省は約20年前に自動車オーナーが加入する自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の運用益を財務省に貸し付けたが、一部が返済されただけで、財政難を理由に残り6000億円は平成28年度まで未返済のまま。国交省は交通事故被害者救済などの資金が減っているとして返還を再三求めており、29年度予算の概算要求にも盛り込んだ。だが消費税増税再延期で大きな税収増が見込めない一方、「1億総活躍社会」関連施策など歳出圧力は強く、29年度も返済は見送られる公算が大きい。返済期限の30年度は目前で、延長の可能性も出ている。
■「自賠責の運用益6000億円返せ」
「貸したものは返してほしい」−。国交省の主張は至極もっともだ。一方の財務省は、「一般会計などの状況をみて丁寧に議論しないといけない」と、返済に慎重な姿勢を示す。
ふだん財務省は各省庁の予算要求を厳しく査定。だが今回の借金問題では、のらりくらりとかわしているかのようにもみえる。
そもそもの貸し付けは、平成6、7年度の予算編成にまでさかのぼる。旧大蔵省は赤字国債の発行を抑えるため、旧運輸省の特別会計から自賠責保険の運用益計約1兆1000億円を一般会計に繰り入れた。
15年度までに利子を含めて約7000億円が返済されたものの、その後28年度まで返済はストップ。国交省は繰り返し返還を求めてきたが、財務省は財政が逼迫(ひっぱく)しているとして応じず、利子込みで約6000億円が未返済のままになっている。
国交省が返済を強く求める背景には、差し迫った問題がある。自賠責保険の運用益をプールした積立金が減っているのだ。
積立金は交通事故の被害者救済事業や事故防止対策などに使われている。ただ近年は低金利の環境で利益が出にくく、積立金を毎年度100億円程度取り崩さないと事業費が賄えない状況だ。
積立金は2000億円程度にまで目減りしており、このままでは、「20年程度で底をつく」(国交省)。財務省からの返済金が頼りというわけだ。
しかし長く返済が滞っている現状に、交通事故の被害者らからは、「もう返ってこないのではないか」との声が上がりつつあるという。国交省関係者は、「返済されれば被害者らの安心につながる」と話す。
■30年度の返済期限も先延ばしか
それでも、29年度もまた返済は見送られそうな情勢だ。
消費税増税が31年10月に再延期されたうえ、足元の円高に伴う輸出企業を中心とした業績の伸び悩みなどで、思うような税収増は見込みにくい。
一方で、安倍晋三政権の看板施策である1億総活躍関連施策の推進のほか、増税と同時に実施する予定だった社会保障の充実策を増税より先に実現するための財源確保も必要だ。
ある政府関係者は、「今までより財政は苦しくなる」と指摘。政府内では「(積立金がある)国交省の特別会計の収支に、すぐに問題があるとはいえない」(関係者)との見方もあり、29年度から借金を返済する方向に舵を切る可能性は低いとみられる。
現在の返済期限は30年度に設定されている。しかし期限は当初の12年度からたびたび先延ばしされてきた経緯があるだけに、今回も延長が現実味を帯びてきている。(中村智隆)
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