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イタリアの国民投票とドイツ銀行の帰趨次第では、EU発金融危機のおそれがある(写真:ロイター/アフロ)
秋以降の世界経済は「4大リスク」に要注意
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161012-00139443-toyo-bus_all
10月12日(水)5時0分配信 小野田 慎 東洋経済オンライン
2016年も残り2カ月半ほど。しかし、米国の大統領選挙や欧州の政治・経済問題など、株価を大きく動かすイベントはまだ目白押しだ。大納会までに、投資家は何に気をつけなければいけないのか。eワラント証券の小野田慎投資情報室長に聞いた。
■年末にかけ4つの重大リスクイベント
10月から年末にかけての政治・経済の主要イベントを見ると、4つの大きなリスクイベントがある。それらがどう転ぶかによって、株価動向も大きく変化していくだろう。
そのうち、時期が読めないのがドイツ銀行の経営危機問題だ。直近では危機はいったん遠のいた形になっているが、まずは10月20日のECB理事会に注目している。
ドイツ銀行問題は米司法省からの罰金が直接の要因となっているが、結局、問題の根本は収益が上がらないところにある。これは、マイナス金利や2015年7月から全面適用された銀行の市場取引規制であるボルカールールが効いている。この問題はドイツ銀行だけのものではなく、イギリスのバークレイズ銀行も2014年末と比べて9月末時点で4割ほど株価を下げている。
ボルカールールの影響は日経平均にも及んでいる。去年、日経平均がピークを付け、下げに転じたのは8月の人民元の切り下げからと言われているが、株価の推移をよく見ると、実はボルカールールが適用された7月21日からだ。
公的資金によるドイツ銀行救済は難しい。2016年からEU加盟国で適用開始されたベイルインルールは、銀行の株主だけでなく債権者にも損失の負担を強いるルールで、ドイツが主導となって作られたもの。それがドイツ自身の首を絞める結果となっている。
今後のシナリオとしては、ドイツ銀行が資産を切り崩し、債務の一部がデフォルトになってからようやく公的資金が来る流れとなる。そうなると、周囲への影響は少なくない。銀行株の動きを見ると、ドイツ銀行が下げた時にはJPモルガンもゴールドマン・サックスも下げている。金融危機のリスクは高まっていると言えそうだ。
2つ目のリスクは?
2つ目のリスクは、11月8日に行われる米国の大統領選挙だ。大統領選はそれ自体もさることながら、同時に行われる議会選挙も重要な焦点となる。今回、上院100議席中改選は34議席。内訳を見ると、共和党が持っている議席の改選が多い。この選挙で共和党は苦戦するだろうとみている。
下院議員に関しては全議席が改選対象。そして、大統領が所属する党が多数を取る傾向が強い。ただ、現状の民主党の議席数は共和党より大幅に少ないため、大統領選でクリントン氏が圧勝しない限りは共和党が多数になる可能性が高い。
■マーケットはトランプ大統領誕生を望んでいる?
今後の見通しとしては、クリントン氏が大統領となり、上院は拮抗、下院は共和党多数というのがメインシナリオとなる。この場合、ねじれ議会となるので、オバマ大統領の時と同じく政治的には停滞することになる。クリントン氏は金融や医薬品への締め付けを主張しており、TPPにも否定的。市場的にはややネガティブかもしれない。
一方、ドナルド・トランプ氏が勝ったらどうなるか。トランプ氏は存在がリスクのようなものなので、当然ながら短期的には市場の株価変動は非常に大きくなる。ただ、トランプ氏が大統領となると、議会とのねじれはなくなる公算が高い。機動的な財政政策、金融規制の撤廃によって株価上昇が起きる可能性がある。それによってドイツ銀行も復活するかもしれない。
3つ目が、12月4日にイタリアで行われる憲法改正の是非を問う国民投票。イギリスのEU離脱に関する国民投票で離脱派が多数になって以来、投資家の注目が高まっている。
イタリアは、2014年にレンツィ政権が発足して以来、経済再建と政治の意思決定迅速化に向けた改革を推進してきたが、2016年の統一地方選挙において期待どおりの結果を残すことができなかった。今回の国民投票は上院の定数削減や立法権限を制限する改正案の是非を問う名目だが、実質的にレンツィ政権に対する信任投票の様相を呈している。
メインシナリオは改正賛成が多数となり、レンツィ政権も信任を得るというもの。不確実性が下がることで、株価が上がり、イタリア国債も買われる。ただ、時間が経つにつれ、野党の勢いが増してきている。もしも改正反対が多数になれば、議論がEU離脱にまで波及し、EUの基盤をさらに揺るがすことになりかねない。そうなると、株価もユーロも大きく下がるだろう。
最後のリスクイベントが、12月13日、14日に行われるFOMC(連邦公開市場委員会)が利上げを行うかどうか。これは、すでに挙げた3つのリスクイベントがどうなったかに左右されるが、金利先物に織り込まれている利上げ確率は、およそ6割といったところだ。
もし利上げを行うと、米株安で、為替は円安ドル高になる。その結果、日本株への影響としては、両者が相殺されるか、あるいは若干の株高になる方向に働くだろう。利上げを行わない場合は逆に、利上げができないほど米国の経済が脆弱なのではないかと思われる心配がある。
こうしたリスクを勘案すると、今後、日経平均は1万5000円を切る可能性がある。特にイタリアとドイツ銀行のリスクが複合的に発生した場合、EU発の金融危機にまで発展する可能性がある。10月末で1万4650円〜1万7200円、12月末では1万3450円〜1万7750円が私の考える日経平均のレンジだ。
(構成:渡辺 拓未)
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