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脳科学者 茂木健一郎氏
茂木健一郎氏が予言、人工知能はむしろ「人間らしさ」の時代を巻き起こす
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161012-00032760-biz_plus-bus_all
ビジネス+IT 10月12日(水)6時10分配信
人工知能が発達し、将棋や囲碁における「人間対人工知能」の闘いで人間が負けることが珍しくなくなった。しかし、本当に人工知能は人間より優れているのだろうか。脳科学者の茂木健一郎氏は、「人間と人工知能の本当の闘いはこれからだ」という。闘いはどう展開されるのか。人工知能が進化したら、どんな時代がやってくるのだろうか。
●将棋「電王戦」に見る人工知能対人間の勝敗
「今、『世紀の一戦』が行われようとしている。それが人間と人工知能の対決だ」と茂木氏は力強く語り、『不屈の棋士』(大川 慎太郎著 講談社現代新書)という書籍を紹介した。同書籍はPONANZA(ポナンザ)をはじめとする将棋ソフト(人工知能)の登場で窮地に立たされた将棋のプロ棋士たちが、その現状に危機感を抱き、未来を真剣に模索している姿を描いた証言集である。この書籍を読んだ茂木氏は「魂が震撼した」のだそうだ。
人工知能の基本は統計的学習である。ビッグデータを解析して、それを基に瞬時に最適な値を出す。そしてこの統計的学習分野において、「人間が人工知能と勝負をしても敗北が決まっている」と茂木氏は言うのである。
その敗北の一例が今年行われた第1期電王戦だ。電王戦は、ドワンゴが主催する将棋の一般棋戦「叡王戦」の優勝者「叡王」と将棋ソフトの代表による対局だ。第1期電王戦では、山崎叡王が将棋ソフト代表PONANZAに完敗した。
茂木氏は「私たちすべての職業が人工知能に取って代わられるのではないかという説も登場している」と語り、米国のある法律事務所が破産法専門の人工知能の法律家を雇用している例を示した。また、医学の世界でも人工知能は人間の地位を脅かしている。米IBMが開発した人工知能「ワトソン」が、白血病のタイプを見抜き、適切な治療方を助言したのだ。
「人工知能は100万件ぐらい論文を読んでおり、一人ひとりの遺伝子検査の情報も把握している。だからこそ、適切な診断ができた」(茂木氏)
さらに人工知能技術が進むと、もはや人間の医者より人工知能の医者を信頼するようになるかも知れない。
●人間にできて人工知能にはできないこと
では本当に人間は人工知能に勝てないのだろうか。「電王戦は第一ラウンド。第二ラウンドから人間の逆襲が始まる」と茂木氏は力強く語る。ならば人間が人工知能より優れているものとは何か。
先述の白血病を診断した人工知能「ワトソン」は、料理レシピを作り、解析することもできる。だが、ワトソンがいくら良い料理レシピをつくったとしても、ワトソン自身はその料理を味わうことができない。しかし、私たち人間はレストランで2時間かけて、オードブルからデザートまでを食べるという体験をすることで、幸せを感じることができる。
「人工知能はレストランのテーブルに座って食事を楽しむことができない。ざまあみろと思いませんか」(茂木氏)
人間ができて人工知能ができないことはまだある。たとえば、小説を読んで、そこから人生を学ぶという体験だ。茂木氏の愛読書は「赤毛のアン」である。10歳のときに読み、40歳になったときにわかったことがあったという。それは「運命を受け入れる潔さ」や「他人からは魅力的に見える特徴が、自分では嫌で仕方がないこともある」ということだ。これは小説を読み、その記憶とともに年を重ねるという体験をしたからこそ、得られた知識である。
小説に関して人工知能ができるのは、ヒットした小説の傾向を統計的に解析することだ。つまり、人工知能は人間のように「楽しんで、人生を学びながら読む」という体験ができない。
体験そのものの基礎、意識の中のさまざまな質感、私が私である自己意識そのもの、時間の流れの不思議さ、今という時間がある不思議さ、身体感覚の不思議さ、今ここに居るという不思議さ。「これらは人工知能がまったく手を出せない分野だ。ここにこれからの人間の存在意義の重要なヒントがある」と茂木氏は言うのである。
人工知能の解は常に「最適化されたもの」だ。将棋であれば一番勝つ確率の高い手を打つ。だが、「最適化された解」が「幸せ」につながるかと言うと、そうとも限らない。たとえば人工知能に「あなたの生涯年収を最大化する行動を紹介するのでそれに従ってください」と言われ、それに従ったとして、その体験が本当に人間の幸せにつながるのだろうか。
「私たちの体験は、そんな数値では図れないところに面白みがある。その面白みを感じることが幸せなのだ」(茂木氏)
茂木氏の著書に「脳とクオリア」がある。クオリアとは体験の質感のことだ。
「人間がいかに世界を感じて受け止めるか。その質感がクオリア。このメカニズムはビッグデータを分析し、その規則性を見て最適化するという手法では到達できない。私たちは1回きりの人生を生きている。私たちの人生は最適化すればよいというものではない」(茂木氏)
●人工知能がもたらす「人間らしさ」の時代とは
茂木氏は「テスト不要論と偏差値教育の撤廃」を訴えた。たとえば、私立大学の文系学部の入試でよくあるのが、年代別に歴史上の出来事を並べよという問題。この問題を解くのに必要なのは暗記能力だ。こういった問題こそ、人工知能の得意分野である。茂木氏の友人である宮尾祐介氏が開発しているロボットは、2021年に東京大学入試を突破することを目標にしているという。現在、そのロボットは全国の80%の入試は解けるまでになった。
「単純な数学処理能力や記憶力が必要となる知識に価値を置いても仕方がない。そういった知識はコモディティ化して意味がなくなる。人間を測る尺度として有効性を失っている」(茂木氏)
だからこそ、これからの人工知能時代において、「主観的な価値や活動領域こそが大事になる。これら人間本来が持っていたものが見直されていくはずだ」と茂木氏は語る。
「我々がこの宇宙で暮らしている神秘は、人工知能以前でも以降でも変わらない。偏差値やテストの点数で人間が分類されていた時代は終わり、これからはその人のかけがいのない個性、それに基づいた体験が大事にされ、そこで個人が評価されるようになる。個の時代に大切なのは、それぞれの体験を比べ合い、分かち合うこと。ある意味、人が人らしく生きられるようになる。そのような時代になっていくと思う」(茂木氏)
(※本記事は、9月23日開催の第23回東京国際ブックフェアでの講演をもとに執筆したものです)
フリーライター 中村 仁美
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