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中国企業が猛攻勢!富士通も事業売却へ、「日の丸PC」の限界 リーディング・カンパニーが次々転落
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49909
2016.10.11 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■NECに続き富士通も…
“日の丸PC”の灯がまた一つ消えるのだろうか。
先週水曜日(10月5日)の深夜から翌朝にかけて、富士通が国内2位を誇るPC(パソコン)事業を中国のレノボと統合するとの報道が相次いだ。これに対し、当の富士通は「本件を含めて、様々な可能性を検討しております」と半ば肯定のコメントをしたのだ。
PC事業を連結決算対象から外したいと富士通が考えたとしても不思議はない。ある調査会社によると、昨年のPCの国内出荷台数は1055万台と前年比で31.4%も落ち込み、市場の縮小が鮮明になっている。立て直しのメドが立たず、収益の足を引っ張り続けるならば、退かざるを得ないという判断である。
富士通だけではない。実は、3位の東芝も、粉飾決算の舞台になったPC部門の別会社化をすでに終え、グループから切り離す構えをみせている。
日本勢と対照的なのが、海外勢だ。5年前にNECのパソコン事業を統合した中国企業レノボは日本市場トップの座に君臨し、米国系のHPとデル・テクノロジーズもそれぞれ2桁のシェアを握っている。
果たして、日の丸PCに活路は残されているのだろうか。検証してみよう。
■限界が近づきつつある国産PC
現在、富士通は国内向けのデスクトップPCとPCサーバの製造を、福島県伊達市に本社・工場を置く100%子会社「富士通アイソテック」に委託している。一方、国内向けノートパソコンの製造は、孫会社「島根富士通」(今年2月に分社化した100%子会社「富士通クライアントコンピューティング」の100%子会社)の担当だ。
今春時点の雇用者数は、富士通クライアントコンピューティングが1454人、富士通アイソテックが724人、島根富士通が602人と結構な規模に達している。
各紙の報道を総合すると、富士通、レノボ両社は、これら富士通のPC子会社か、新たに設立する合弁会社のいずれかに、レノボが過半を出資し、PC事業を統合する方針だ。10月中の最終合意を目指して大詰めの交渉を繰り広げているという。
両社共通の狙いは、事業統合によって生産・調達規模を拡大し、部品の調達コストを下げることにある。
統合後も、雇用を維持するためにリストラを行わず、当面は福島と島根の両工場の操業を続ける意向らしい。あわせて、富士通のパソコンブランド「FMV」も存続させる。
これは、海外と比べて日本国内の消費者にレノボブランドが浸透していないことが理由だ。レノボは、NECとの経営統合でも日本向けPCにNECブランドを残しており、この先例を踏襲するとみられている。
交渉に至った背景には、スマホの台頭などに伴う日本のPC市場の縮小という、両社にとって深刻な経営問題がある。
IDCジャパンによると、2015年のPCの国内出荷台数は443万台減の1055万台と前年比で3割以上も減った。
その中でも落ち込みが激しいのが富士通だ。同社のPC出荷台数は113万9000台減の175万9000台と4割減だった。3割減という市場縮小を上回るペースでシェアを失ったのだ。
昨年暮れに交渉の事実が明らかになっていた、別のPC事業の統合交渉が不調に終わったことも、富士通のレノボとの交渉を加速する圧力になったとされる。
不調に終わった相手は、粉飾決算の舞台となったPC事業を本体から分離した東芝の子会社と、投資ファンド「日本産業パートナーズ」がソニーのPC事業を買収・独立させた「VAIO」(本社・長野県安曇野市)の2社。
それぞれ昔日の栄光が遠くなったとはいえ、東芝のPC部門はかつて世界最初のノートPC「ダイナブック」を生み出した実績を持つ。VAIOにもアップルに先駆けてお洒落なPCとして一世を風靡した歴史がある。
富士通のPC部門との事業統合が実現すれば、国内シェアが3割を超え、レノボを抜き去り国内トップの座を射止めることが可能だった。世界市場でもレノボ、HP、デルなどに次ぐ6%前後のシェアを握り、規模の闘いとなっているPC市場で日本勢が存在感を取り戻すきっかけになると期待を集めていた。
が、この3社統合が白紙に戻ったことから、富士通は早急に新たな手を打つ必要に迫られた。米社など各方面に事業統合を打診したところ、候補として急浮上したのがレノボだったという。
■レノボとはいったい何者なのか
ここでレノボに触れておくと、同社は、中国の政府機関「中国科学院・計算機研究所」の研究員らが1984年に共同で設立した、外国ブランド製品の中国国内市場での販売からスタートした会社だ。米IBM社のPC部門を2004年に買収して、PC分野のビッグビジネスの地歩を固めた。
さらに2011年7月には、NECとの合弁事業の受け皿であるNECレノボ・ジャパンを設立。日本での地位も確立した。昨年の日本国内におけるPC出荷台数は277万台、シェアにして26.3%を占め、ダントツの首位に君臨している。
レノボ以外の中国勢も攻勢に出ている。通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」がその企業で、今年7月、タブレット端末としても使えるPCを引っさげて日本市場に参入したばかりだ。
米国勢は、日本国内4位の座を巡って、HPとデルが死闘を展開している。昨年は、シェア10.9%を確保したHPが、同10.1%にとどまったデルに代わって、4位の座を射止めた。6位には、やはり米国勢のアップルが続き、7位に台湾のASUSが顔を出した。
下位では、8位にシェア2.7%のパナソニック、9位に同1.8%のVAIO、10位に同1.4%のエプソンと、日本勢が続く。パナソニックは「MADE IN KOBE」キャンペーンで0.7ポイント、VAIOもビジネスユースを意識して高性能を売りにした製品作りで1.5ポイントとそれぞれシェアを大きく伸ばしたが、まだ市場での存在感は薄い。
その一方で、5年前にレノボ主導の事業再編に応じたNECに続き、シェア2位の富士通、同3位の東芝と上位につける日本メーカーがそろってPC子会社を手放す検討を進めており、日の丸PCの血脈は風前の灯と言わざるを得ない状況にある。
ちなみに、東芝は今年に入って、苦戦が鮮明になっている。出荷台数が2016年第1四半期(1〜3月)に前年同期比で11.7%減、第2四半期(4〜6月)に同じく5.8%減と落ち込み、第2四半期のシェアはデル、HPに抜かれて5位に転落した。
この東芝の苦戦には、PC事業会社を売却すると同社のアフターサービスが滞るのではないかとの不安がある。
東芝は、すでに、かつて個人向けに販売したREGZA PCでWindows10へのアップグレードをサポートしないなどの問題を起こしているが、今後は「(こうした)サポート問題が広範に続出しかねないとの懸念から、法人も含めて東芝製品の買い控えが多い」(IT会社幹部)という。
■これまで業態転換を繰り返してきたが…
こうした中で、NEC、富士通、東芝といった日本勢が、異口同音に、PC事業に代わるビジネスといい、経営資源を集中的に投入するとしているのが、官公庁や大企業のシステムを対象にしたソリューションだ。
生産量にモノを言わせて部品の調達コストの引き下げを試みる「規模の闘い」に陥りがちなハードウェア・ビジネスから抜け出して、付加価値の高いソフトウェア・ビジネスへの脱皮を図っていると言える。
これまで富士通は、それなりに大きな業態転換を成し遂げてきた。
古川電機工業と独ジーメンスの合弁会社であり、モーターや変圧器の製造を主力とした「富士電機製造」(現富士電機)が、通信機器(交換機や伝送機が柱)部門を子会社「富士通信機製造株式会社」として独立させて、富士通が産声を上げたのは、1935年のこと。
戦前から政府への国産初の自動交換機納入などの実績を積み、戦後の1952年に発足した日本電信電話公社に重用されて、「電電ファミリー」として安定成長軌道に乗ることに成功した。
次いで、通信機器で蓄積した資金と技術で、大型の電子計算機(コンピューター)の世界に参入、IBMなどと激しい競争を展開した。
さらに、世界最初のパソコンであるアップルの「AppleU」には4年の遅れをとったものの、IBMのPC発売には3カ月先んじる形で、1981年にパソコン市場に参入。
ほんの数年前の大型汎用機並みの性能を持ち、初心者でも簡単にプログラムできる言語BASICの富士通版を搭載した本格的なPCに、大学生だった筆者は興奮を覚えた。1990年代後半まで、国内PC業界の黄金時代は続いた。
しかし、2000年に近づくと、OS(基本ソフト)をマイクロソフト、CPU(中央演算処理装置)をインテルに握られるウィンテル時代の到来や、米系各社のPC直販による価格破壊の波、本格的な通信自由化とインターネット普及に伴う交換機ビジネスの消滅など、日の丸PCと富士通には苦難の時代が訪れた。
それでも富士通は、なんとか時代に順応し、国内PC市場のリーディング・カンパニーの一角を占めてきた。
官公庁や大企業をターゲットにしたシステム開発やソリューションビジネスへの収益源の転換は、PC参入以前からの富士通のそもそもの課題である。
だが、システムと利用者の接点になるPCで競争力のあった時期でさえ、その強みを垂直統合する形で活かし切ることができなかった。これは日の丸PC各社に共通しており、システム開発やソリューションビジネスで日本IBMやNTTデータの下請けに甘んじることが少なくなかった。
実際、富士通は、昨2015年度決算で、システム開発やソリューションビジネスの「テクノロジーソリューション」部門の営業利益が1862億円と、前年度比16.3%減の不振を囲っている。
今後、PCやスマホといった端末の強みを持たずに、独自の収益源を育成できるのだろうか。この厳しい試練を乗り切る明確なシナリオが未だにみえていないのが、日の丸PCなき日の丸PC各社の現実ではないだろうか。
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