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「電通ウェブサイト」トップページより
電通が新人女性社員の「過労自殺」で隠蔽工作の事実が! 過去にもパワハラによる社員の自殺で責任逃れ
http://lite-ra.com/2016/10/post-2614.html
2016.10.10. 電通の女性社員「過労自殺」を隠蔽! リテラ
大手広告代理店・電通が女性新入社員を“過労自殺”に追い込んでいたことが発覚した。
この女性社員は高橋まつりさん、24歳(当時)。東大文学部を卒業後、昨年4月に電通に入社したばかりだったが、12月25日に同社の社員寮から飛び降り自殺をしていおり、この自殺が長時間の過重労働が原因だったとして、今年9月30日、労災認定された。過労自殺の労災認定はハードルが高いと言われるが、今回の高橋さんのケースの背景には信じがたい過重労働とパワハラ被害があった。
高橋さんは入社後、デジタル・アカウント部に所属し、インターネット広告を担当していたが、本採用となった昨年10月以降、部署の人数が14人から6人に減り、仕事量が激増。月に80時間といわれる過労死ラインを超え、100時間以上の時間外労働を行うこともあった。また睡眠も1日2時間ほどしかとれなかった状態が続いたという。
高橋さんのツイッターには「休日返上で作った資料をボロくそに言われた もう体も心もズタズタだ」「もう4時だ 体が震えるよ… しぬ もう無理そう。つかれた」「眠りたい以外の感情を失った」と連日の苛烈な労働をうかがわせるつぶやきが残されている。
また上司からは「君の残業時間は会社にとって無駄」「髪がボサボサ、目が充血したまま出勤するな」「女子力がない」などとパワハラ、セクハラとも思える言葉を投げつけられたこともあったという。
そして、浮き彫りになったのは電通の隠蔽体質だ。そもそも今回の一件が明らかになったのは高橋さんの自殺から約10カ月が、そして労災認定から1週間が経った10月7日、遺族と代理人弁護士が会見を開いたからだった。この間、電通では高橋さんの自殺自体に箝口令が敷かれていたといわれるが、労災認定が明らかになっても、電通はマスコミの取材に対し「労災認定については内容を把握していない」「コメントを差し控える」とそっけなく答えたのみだった。
それどころか、電通は裏で、高橋さんの自殺が会社の責任ではなく個人的な問題であるという情報を流布していた疑いがある。高橋さんが自殺した後、電通関係者が彼女の知人に対して「失恋が原因らしい」という情報をしきりに流していた形跡があるのだという。
こうした動きについて、学生時代からの高橋さんを知る元「週刊朝日」編集長の山口一臣氏はこう首をひねる。
「まつりさんが亡くなった直後、何があったんだろうと昔の仲間と連絡を取りあっていたとき、僕も、電通の人からどうやら失恋が原因らしいという話を聞かされました。彼女の性格からしてそんなことがあるだろうかとも思ったけれど、飛び降りたのがクリスマスの朝だったので、ああ若いからそういうこともあるのかなぁ、と。でも、お葬式で、直前の様子を知っている人たちに詳しく聞くと、恋愛したり失恋したりする時間もなく働かされていたということで、失恋説はウソだとわかったんです。まつりさんとは、彼女が東大合格のテレビインタビューで『将来は週刊朝日の記者になりたい』と言っているのを見て、探し出したのがきっかけでした。以来、『週刊朝日UST劇場』のアシスタントなどのアルバイトをやってもらった。確かに昨年9月に高橋さんが失恋したようなことをツイッターでつぶやいていますが、そんなに深刻な感じはなかった。明るくて、聡明で、頑張り屋さんで。母子家庭だったので高校は授業料が免除される特待生になり、現役で東大に合格。学生時代には国費で中国に留学したり。広告業界の論文コンクールで1年生ながら最終選考に残るほど優秀な人でした。電通に就職が決まって『週刊朝日じゃなくてゴメンなさい』って言われたけど、みんなで本当に喜んだのに。だいたい9月に失恋してそれが原因で12月に自殺するなんておかしいでしょう」
こうした話は、他の知人からも聞こえてきた。なんとも卑劣なやり口だが、実は、電通が社員の過労自殺を隠蔽したのは、今回が初めてではない。今から25年前、若手男性社員の過労自殺に対してもまったく同様の隠蔽工作をしていた。
それは、入社2 年目で自殺をとげた大嶋一郎さん(当時24歳)のケースだ。大嶋さんが自宅で自殺したのは1991年8月27日。その後、大島さんの両親は損害賠償裁判を起こすのだが、裁判で明らかになったのは、大嶋さんのあまりに過酷な長時間労働、そして電通の卑劣な責任逃れだった。
両親が起こした訴訟の代理人弁護士である藤本正氏による著書『ドキュメント「自殺」過労死裁判』(ダイヤモンド社)に、その実態が詳しく記録されている。
明治学院大学を卒業した大嶋さんは1990年に電通に入社し、6月にはラジオ推進部に配属された。東京郊外で家族と暮らす大嶋さんだったが、以降深夜に帰宅することが多くなり、次第に帰宅しない日も出てくるようになる。
〈同年(90年)――月末ころから様子がちがってくる。それ以前はいかに帰宅が遅くなっても、翌日の早朝四時から五時には帰宅していたのに、帰宅しない日がでてきた。平成三年(91年)になると、一郎君の帰宅時間は、次第に遅くなっていく。(中略)一郎君の帰宅時間は、夜というよりも朝という状況が続く。午前六時三〇分とか午前七時ころに、ズボン、背広もワイシャツもよれよれの状態で、やつれはてたような疲れた顔で帰宅する日々となる。〉
さらに大嶋さんは飲み会で上司から革靴に酒を注ぎ込まれて飲めと強要され、飲みっぷりが悪いとその革靴で殴られる、などの扱いを受けていた。連日の深夜、早朝帰宅に、徹夜、そして上司からのパワハラ。そんな状況が続き、大嶋さんは変調をきたしていく。
深夜、会社の真っ暗なフロアで目を開いたままぼんやり横になっていたり、それまで明るく積極的だったのが暗くうつうつとして、目の焦点が定まっていないこともあった。帰宅時には汗ばみ疲れ果て、目が飛び出しそうな感じでもあったという。そして自殺――。
だが当初、大嶋さんの両親は訴訟を起こす気はなかったという。しかし息子の死の原因が何か調べるうちに浮かび上がってきたのが、長時間労働の隠蔽と、大嶋さんの自殺に対する不誠実な電通の対応だった。
父親が入手した資料によると、大嶋さんの残業時間は月に147時間にも達し、年間の勤務時間は3528時間だった。これは当時の政府が目標とする年間1800時間の2倍の数字であり、過労死する危険性のある年間3000時間を優に超えるものだ。だが電通側はそれを認めようとはせず、残業時間は少ないと主張した。
大嶋さんの父親が、当時の電通社長に再発防止の訴えを記した手紙を送っても、何の反応もなかった。
〈いかに会社と遺族とでは、その自殺の原因についての見解が異なるとはいえ、少なくとも社員だった者の遺族からの手紙に、お悔やみの返事を出すというのが、日本社会における常識であろう。〉
弁護士を介しての会社への正式な申入書に対しても、電通からは「一切責任がない」とそっけない回答があっただけだった。こうした電通の姿勢に憤った両親は、止むに止まれず訴訟を決意する。
しかし訴訟となっても、電通の対応は同様で、長時間労働だけでなく、その責任を一切認めなかった。
〈会社は社員の長時間のサービス残業を知っていたし、一郎君の上司も、一郎君の長時間労働や、健康状態の悪化を知っていた。それなのに放置していた。
会社はまた、「一郎君の仕事量も多くなかった」とか、「管理巡察実施報告書のように、一郎君が、深夜あるいは早朝まで会社内にいたとすれば、それは、仕事以外の理由である。「うつ病」であるわけがない、「自殺」も、仕事とは関係ない、個人的事情、家庭的事情であるはずだ」という、失恋説、冷たい家庭説などを、具体的根拠も示さずに、一審以来主張し、高裁段階ではさらにエスカレートさせている。〉
電通側は、大嶋さんの死亡直後には副社長名で「失恋説」を記した文書を回してもいたという。
だが、そんな主張は認められるはずもなく1996年の一審判決では、電通の過失が100パーセント認められ、両親に対し1億2600万円という史上最高額の賠償支払を命じられた。電通はその後控訴し最高裁で審理が行われ、2000年、最終的に1億6300万円で和解が成立している。
この判決は日本で初めて過労自殺について会社の責任が全面的に認められたものであり、その後の過労自殺訴訟、労災認定に大きな影響を与えたものだ。
しかし、それから15年、電通は今回、再び同じような社員の過労自殺を引き起こしたのだ。
これは、けっしてたまたまではない。電通では最高裁判決が出た2000年以降、社員の出退勤時間の管理を徹底するようになったとされるが、それは名目上のものにすぎなかった。
実際、高橋さんの代理人弁護士が会見で「労働基準監督署に届け出た時間外労働の上限を超えないよう、勤務状況報告書を作成するよう社員に通達していた」とその実態を指摘している。
また、この間、表沙汰にはなっていないが、数多くのセクハラやパワハラ、深夜に渡る不条理な飲み会、長時間労働などの問題行為を続けていた。精神疾患で長期療養を余儀なくされる社員もあとを絶たなかった。
しかし、電通はこうした事実を隠し、電通批判をタブー視するマスコミもそうした問題を一切追及してこなかった。そういう意味では、高橋さんの過労自殺は起こるべくして起きたともいえるのである。
それでも、電通は何の反省もなく、相変わらずの隠蔽体質を維持したままだ。今後、大嶋さんや高橋さんのような犠牲者を出さないためにも、不都合なことをすべて隠蔽する電通の“ブラック体質”のさらなる検証が必要だろう。
(伊勢崎馨)
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