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「黒田バズーカ」は今や昔 追加緩和あってもなくても結局は円高で、日銀の政策運営 信認が失われたのか
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161010-00000512-san-bus_all
産経新聞 10月10日(月)12時17分配信
今年は、日銀の金融政策決定会合が開かれた後に為替相場が円高に振れるというパターンが続いている。為替はさまざまな要因で動くため、偶然の一致に映るが、日銀は大規模な金融緩和策を約3年半も続けているのに目標とする2%の物価上昇に手が届かず、政策の手詰まり感が決定会合後の円高につながっているとの見方がある。黒田東彦総裁のもとで導入された日銀の緩和策が「バズーカ」と呼ばれて大幅な円安をもたらしたのは、今や昔の話となってしまったのだろうか−。
■追加緩和でも円高進む
今年の決定会合は計8回開催されるが、このうち1月、3月、4月、6月、7月、9月が終了。日銀が追加金融緩和に踏み切ったのは1月と7月で、3月と4月、6月は金融政策を現状維持とした。9月は長期金利と短期金利の操作などを盛り込んだ新たな緩和の枠組みを決めた。ただ、追加緩和があってもなくても、すべて円高に振れている。
1月はマイナス金利政策の導入を決定。当初は円安で反応したが、それもわずか数日だった。マイナス金利政策は金利水準を一段と低下させるとして追加緩和の切り札とされたが、当時は中国経済の減速懸念や原油価格の急落で市場が世界的に混乱していた時期だったこともあり、円安の流れはすぐにかき消された。
7月は政府が大型の経済対策を打ち出す中で、日銀が一体感を打ち出すために追加緩和に動くとの観測が高まっていた。ただ、実際に決まったのは、株価下支えにつながる上場投資信託(ETF)の購入額の倍増だけ。市場では「物足りない」と失望感が広がり、決定が伝わった直後は一気に2円程度円高が進んだ。
現状維持の3月、4月、6月は、当日から円高で反応。新たな枠組みを決めた9月も、決定直後の東京市場で一時1ドル=102円台まで円安に振れたが、その日の欧米市場で1ドル=100円台まで円高が進んだ。
■物価2%シナリオ描けず
今年に入って開かれた6回の決定会合が置かれた状況はそれぞれ異なる。為替は日銀の金融政策だけでなく、米国の利上げの行方、その他の要因が複雑に絡み合って動く。決定会合後に円高に振れたのは偶然の一致といえばそれまでだ。
しかし、日銀の政策運営にも一因があるとみる市場関係者は少なくない。みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは「(以前のように)日銀の緩和的な姿勢を市場が評価して円安になっていく、という力がだいぶ弱まっているのではないか」と指摘する。
日銀が9月に新たな枠組みを決めるまで緩和策の中心にあったのは国債の大量買い入れだが、市場では遠からず行き詰まるとの見方が広がっていた。1月に導入を決めたマイナス金利政策も、市場では効果よりも銀行の収益圧迫や保険・年金の運用難といった副作用のほうが注目されがちだった。こうした大規模な緩和策に限界論がつきまとう一方、目標とする2%の物価上昇は達成が見えない。
三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは「今年は、日銀の政策に対する信認が揺らいでいた。2%の物価上昇に向けた政策が強く信認されれば円安材料になるが、市場関係者は2%の物価上昇シナリオをなかなか描きにくく、円安にはつながらなかった」と語る。
■市場の信認取り戻せるか
限界論を払拭すべく日銀が9月に決めた新たな枠組みは、政策の軸足を市場に供給するお金の「量」から長短の「金利」に転換するもので、長期金利が0%程度で推移するよう誘導するとした。ただ、長期金利は将来の経済動向や海外の経済情勢などの影響を受けやすく、日銀が完全にコントロールするのは難しい。
みずほ証券の鈴木氏は、新たな枠組みについて「日銀が(揺らいでいた)市場の信認をもう一度取り戻すという面もあったのではないか」と指摘。その上で、日銀の政策運営が再び円安をもたらすようになるかについては、「日銀が自ら掲げた長短金利の操作に成功するかが当面のポイントになる」との見方を示す。
円高のデメリットは論をまたない。輸出企業の収益悪化懸念を強め、日本株を押し下げる。企業業績が伸び悩めば設備投資や雇用・賃金に悪影響が生じ、国内景気を冷やすリスクが高まる。日銀にとっても、円高で輸入品価格が下がれば人々の間でこの先物価が上がるという予想が高まりにくくなり、2%の物価上昇がさらに遠のきかねない。
年内の決定会合は残り2回。「追加緩和の有無に関係なく決定会合後は円高」というパターンが断ち切られるかどうかは、新たな枠組みのもとでの日銀の政策運営にもかかっている。(森田晶宏)
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