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9月21日、金融政策決定会合後の会見に臨んだ日本銀行の黒田東彦総裁。この日、日銀はこれまでの金融政策の「総括的な検証」を実施した Photo:REUTERS/アフロ
終わりなき「長期戦」に突入か 日銀の総括検証に功罪両面あり
http://diamond.jp/articles/-/103447
2016年10月7日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] ダイヤモンド・オンライン
「もし信頼に欠く中央銀行が、『信頼できない政策を実施する』と信頼できるかたちで約束したら、二つのネガティブさが打ち消し合って、信頼が生み出されるのだろうか」。9月27日の米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、日本銀行の「総括的な検証」と新たな政策の枠組みを評して、そう描写した。
同紙は今回の日銀の判断にかなり辛辣だ。3年半前、インフレ率を2年で2%に引き上げると宣言しながら、現在はマイナス圏に逆戻り。そのことについて、それは「自分たちのせいではない」といったニュアンスで日銀が説明していることに、不信感を表している。
また、同紙が言う「信頼できない政策」とは、長期金利ターゲットのことだ。2010年、米連邦準備制度理事会(FRB)もベン・バーナンキ前議長の下で、長期金利にターゲットを設定する政策を議論したが、幾つかの問題点が認識され、結局見送られた。
筆者は日銀が今回の「検証」で、インフレ目標達成に向けた「闘い」を従来の「短期決戦型」から、現実を受け入れて「持久戦」にシフトしたこと自体は良かったと思っている。方針変更に対する批判を恐れて硬直的になられては、「玉砕」になってしまうからだ。
「持久戦」に移行するには戦術の見直しも必要だ。国債購入策の増額などに限界が来ていたため、相対的に持続性がある金利誘導への回帰が選択された。
しかしながら、インフレ目標達成への決意を示すために決定された出口政策開始条件のハードル引き上げと、長期金利である10年物国債の金利をゼロ%に誘導するという長期金利ターゲットの組み合わせは、先行き大きな問題を招く恐れがある。日銀は新たな「ルビコン川」を渡ってしまったかもしれない(本来その川は何本もないはずではあるが)。
日銀が設定した条件では、マネタリーベースを減らし始めるには、インフレ率が安定的に2%を上回ることが必要だという。資源価格高騰や消費税率引き上げによる一時的な現象を除けば、日本でインフレ率が2%を超えたのは、1990年代初期のバブル経済終盤までさかのぼらなければならない。
最近の人手不足は当時に近づきつつあるが、少子高齢化の影響や社会保障の維持可能性などの将来不安が今は強く、消費はバブル期より大幅に弱い。楽観を背景にした内需の強さと賃上げが呼応し合って、インフレ率が高まっていくという構図は当面描きにくい。
しかも、90年代初期は家賃(帰属家賃を含む)の上昇率が2%台後半前後、公共料金もプラス圏内で推移していた。現在は両方ともマイナス圏だ。それらのウェイトを合わせると、コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)の4割弱をも占める。この逆境を覆すには、賃金がバブル期以上に上がっていく必要がある。
これでは「持久戦」どころか、終わりが見えない「長期戦」となる恐れがある。その中で日銀は、10年物国債の金利をゼロ%に誘導する政策を決めた。それは、ゼロ金利の永久国債を日銀が大規模に引き受けることと当面は変わらないだけに、バーナンキ氏も指摘するように、「疑似ヘリコプターマネー」と見なすこともできるだろう。
バーナンキ氏は、FRBが2〜3年の金利に目標を設定することは将来あり得ても、10年以上の長期金利を誘導することは考えられないとブログに書いていた。今回の日銀の決定は、彼の見解をはるかに上回る強烈なものといえる。
(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
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