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誰がバター不足&高騰を「つくって」いるのか?緊急輸入で行政法人が巨額利益
http://biz-journal.jp/2016/10/post_16805.html
2016.10.03 文=平沼健/ジャーナリスト Business Journal
農林水産省は9月27日、バターを4000トン追加輸入すると発表した。1993年のガット・ウルグアイ・ラウンドの合意により決められている最低輸入量が今年は7000トン、5月に緊急輸入を決定した分が6000トンあり、今回の分を合わせると、今年度は1万7000トンを輸入することになる。
需要が大幅に増える冬に向け、供給が不足するとの懸念があるが、十分な量が確保される見通しだ。
ここ数年、バター不足が深刻化している。農水省は、酪農家が減少していることを原因に挙げている。確かに、酪農家が減少していることは事実だ。だが、2月の時点で「バターの供給は足りている」と説明していたにもかかわらず、なぜ2回も緊急輸入することになったのか。そこには、日本の酪農が抱える構造的問題がある。
ここ10年で、酪農家は約4割も減少している。2015年の農水省の統計によると、全国に酪農家は1万7700戸。そのうち約38%は北海道にある。そして、その北海道で生産される生乳の84%が乳製品向けに出荷されている。ちなみに、ほかの都府県で生産される生乳のうち、乳製品向けは12%だ。つまり、都市部に近いところで生産された生乳は飲用、北海道で生産された生乳は加工用という棲み分けがなされている。
生乳の価格(乳価)は、乳業メーカーと酪農生産者との合意によって決まる。合意にいたるまでの交渉は、需給状況、市場動向、経済状況、生産者・販売業者の経営状況などが総合的に勘案されるが、全国的に大きな差は出ない。
だが、飲用向けの生乳に比べて、加工向けは価格が大きく下がる。およそ飲用向けは1リットル当たり100円前後になることが多いが、加工向けは70円前後だ。加工原料生産者には補給金が支給されるが、1キログラム当たり12.69〜15.28円で、それでもやはり飲用向けに出荷したほうが売り上げは大きくなるため、酪農家が飲用向けの生産を望むのは当然といえる。
しかも、補給金を受け取るためには、「指定団体」と呼ばれる全国に10ある農協系の指定団体を通して申請しなければならない。この指定団体は、生乳の集荷、販売を独占しており、地域ごとに生産量や用途を決めている。
この制度が自由なバターの流通を妨げているとの批判が多く、政府の規制改革推進会議でも、見直しの議論が行われている。
■輸入利権を貪る農畜産業振興機構
また、民間企業が自由に輸入できない構造にも問題がある。
生乳は、まず新鮮さが求められる牛乳や生クリームの供給量が確保され、余った分が保存のきくバターや脱脂粉乳に加工される。多く余ればバター等として保存され、供給が足りないときは在庫から流通に乗せる。つまり、生乳の流通量を調整する役割を担っている。だが、生産量の不足が慢性化しつつある昨今、バターの輸入拡大は避けて通れなくなっている。
それにもかかわらず、政府は酪農家保護を名目にバターに高い関税をかけ、民間業者が容易に輸入できないようにしている。緊急輸入を行う際、実際に業務を担うのは独立行政法人の農畜産業振興機構(alic)だ。alicは、輸入バターを販売業者に卸す業務を独占している。
alicがバターを民間業者に売り渡す方式は2通りある。ひとつは「一般方式」で、alicが輸入して在庫とする。それを入札によって、業者が落札する方式だ。そしてもうひとつは「SBS方式」と呼ばれる特殊な方式だ。これは、輸入業者がいったん輸入したものをalicに売り渡し、同時に業者が買い戻すのだ。これも入札を行うが、alicへの売り渡し額と買い戻し額が大きい業者が落札となる。
たとえば、バターを輸入した業者は1億円でいったんalicに売却し、同時に1億8000万円で買い戻す。実際には物資の移動は伴わず、書類を交わして差額の8000万円を業者がalicに納めるのだ。このような輸入時の差額をマークアップと呼ぶが、alicが発表しているところでは、14年度のマークアップは1キログラム平均648円だった。同年の売り渡し数量は1万2931トンだから、単純計算で83億円あまりの利益が生じている。マークアップは毎年バラつきがあるが、過去5年では1キログラム平均77〜649円の間で推移している。
国際的に流通しているバターの一般的な価格は、日本国内の製品に比べて3分の1ほどといわれているが、販売価格は関税と輸入差益によって国内品の2〜3倍程度まで跳ね上がっているケースが多い。昨年、緊急輸入した際、alicは輸入差益によって40億円の利益を得たと報道されている。昨年の総輸入量は2万トン、今年も1万7000トン輸入する。
国内で流通するバターの9割は北海道産だ。だが、大型台風の直撃によって大きな被害が出ただけでなく、牛が体調不良やストレスによって乳をつくれなくなっており、北海道内の生乳生産量が激減した。それが今年2度目の緊急輸入を決定させた。つまり、バター生産の北海道一極集中がもたらした弊害といえる。
事実上国内の流通を独占する指定法人制度を廃止し、輸入を独占するalicを解体すれば、バターは自由競争原理が働き、不足は根本的に解決するはずだ。酪農保護を掲げ流通量を国が制限してきたが、絶対量が不足する今となっては、自由化しなければ国民にとって不利益な制度でしかない。
(文=平沼健/ジャーナリスト)
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