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中国美人豪腕経営者、米国が制裁対象指定で逮捕…北朝鮮密輸で得た巨万の資産凍結
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16778.html
2016.09.30 文=相馬勝/ジャーナリスト Business Journal
中国当局は北朝鮮に核開発関連物資など戦略物資を密輸していたとして、中国東北部・遼寧省の企業グループの女性オーナーを逮捕、取り調べていることがわかった。また、米政府はこの企業グループと同社オーナーらを制裁対象に指定した。米政府が北朝鮮の核・ミサイルなどと関連して中国企業を制裁対象としたのは初めて。
北京の外交筋が明らかにしたところによると、彼女は北朝鮮の市場開拓のため、金正恩・朝鮮労働党委員長の叔父で、すでに処刑されている張成沢・元党政治局常務委員とねんごろな関係にあったとされる。
この女性オーナーは、北朝鮮国境の遼寧省丹東市に本社を置く「遼寧鴻祥実業集団」の馬暁紅会長。馬氏は43歳で、美人でやり手の実業家として知られる。
2000年1月、同市内のデパートの売り子だった馬氏は27歳で起業し、繊維製品の製造・販売会社を創設。得意の朝鮮語を生かして北朝鮮市場を開拓し、アパレル製品の輸出を手掛けて成果を収め、建築資材、化学製品なども輸出するほか、北朝鮮の豊富な地下資源に目をつけレアメタルの輸入など事業内容を拡大。中国内でも一躍、対北朝鮮貿易の第一人者となった。
■北朝鮮ナンバー2処刑が影響か
中国政府国務院直属の中国外文局が運営するニュースサイト「中国網」は06年10月、馬氏のことを次のように描写している。
「今年34歳(当時)の女富豪、馬暁紅は丹東で最も成功した中朝貿易業者だ。この一日だけで彼女は2000トンもの重油を北朝鮮に輸出した」
現在ではホテルや飲食店の経営や観光にまで進出し、傘下企業は10社を下らない。同集団はホームページ上で「北朝鮮と世界を結ぶ黄金の橋」とアピールしているほどだ。
その後、北朝鮮が金正恩体制に移行後、核実験や長距離ミサイル発射実験などを頻繁に行うなど対中関係が悪化。国連安保理による対北制裁も強化された。このため、対北朝鮮制裁で輸出禁止となっている核開発に必要な戦略物資や武器などをリンゴ箱に詰めて、内容物を「リンゴ」と偽って輸出。禁輸で困っている北朝鮮の足元を見て1箱を1000万元(約1億5000万円)で売るなど巨利を得ていたという。
このように、馬氏が北朝鮮に食い込むことができたことについて、北京の中朝関係筋は次のように解説する。
「馬氏が北朝鮮ビジネスを拡大していた時期は、北朝鮮のナンバー2だった張成沢氏が対中貿易を仕切っており、馬氏は張氏に近づき、かなり食い込んでいたとの情報も流れている。おそらく馬氏の美貌を使って、張氏を篭絡したとみるのが妥当ではないか」
ところが、肝心の張氏が処刑されたのに加えて、国連による対北制裁発動後も同集団の船舶が頻繁に北朝鮮の港湾を出入りしていることが偵察衛星の監視カメラによって捕捉され、米司法省当局者が北京を訪れ、調査を要請したことが馬氏の逮捕につながった。
■米国内の資産凍結
米財務省は9月26日(米東部時間)、声明を発表し、「国連安全保障理事会の制裁対象である北朝鮮の朝鮮光鮮銀行に代わって大量破壊兵器の拡散に関わる金融サービスを提供していた」などとして、北朝鮮との事業を手掛ける中国の「遼寧鴻祥実業集団」の中核となる貿易会社「丹東鴻祥実業発展」とオーナーの馬氏ら中国人4人を制裁対象に指定したことを明らかにした。
この措置によって、馬氏や同社などの米国内の資産は凍結処分になる。財務省はあわせて、同社と子会社が所有する25の銀行口座を差し押さえるよう中国当局に要請している。中国当局はすでに同グループが保有する5000トン級の商船7隻を差し押さえており、馬氏はこれで全財産を失うことになる。
さらに、馬氏がこれまで多くの違法な対北朝鮮ビジネスを成功させることができたのは、馬氏は遼寧省の警察などの政法部門のトップら省政府の要人や税関幹部ら数十人に賄賂を贈り、税関での審査に手心を加えてもらっていたためだが、彼らもすでに逮捕され、取り調べを受けていることがわかっている。
中国ビジネス界の立志伝中の女傑にしては、最後はあまりにも哀れというほかはない。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)
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