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奈良県公式ホームページより
奈良県が有名デザイナーにロゴデザイン料540万円! 地方創生で自治体が代理店的ぼったくり商法の餌食に
http://lite-ra.com/2016/09/post-2591.html
2016.09.29. 奈良県のロゴデザイン料はやっぱり高い リテラ
大問題になった鹿児島県志布志市のうなぎの養殖PR動画「UNAKO」。自治体があんな女性差別、児童ポルノまがいの作品を平気で公開するというのは信じられないが、自治体のPRをめぐっては、もうひとつ問題が起きているのをご存知だろうか。
それは、奈良県の「国民文化祭」ロゴマーク問題だ。毎年各都市の持ち回りで行われる「国民文化祭」の奈良県大会が2017年に開催されるのだが、県の大会実行委員会がそのロゴマークデザイン料として、540万円を支払っていたことがわかったのだ。
問題が全国的に広く知られたのは、この9月、奈良県内の市民団体が県を相手取った住民訴訟を起こしたことがきっかけだった。市民団体は、このデザインで県が東京の有名デザイン会社に委託費540万円を支払っていたことが、違法な公金支出であると指摘。委託費は多くても30万円が適当として、実行委会長の荒井正吾奈良県知事らに差額510万円を支払わせるよう、県に求めたのである。
ちなみに、この高額デザイン料を受け取っていた東京の有名デザイン会社というのは、ゆるキャラ「くまモン」で知られる売れっ子アートディレクター・水野学氏の「グッドデザインカンパニー」(以下、GDC)。GDCといえば、水野氏が社員を罵倒し、暴力行為まで横行する“超ブラック環境”であることや、くまモンのデザインももともとはスタッフが考案したものだったことを暴露されたこともある(「週刊文春」13年12月12日号/文藝春秋)。
まあ、それはともかくとして、たしかに540万円という金額は高額だ。実際のロゴを見ても、鹿などをモチーフにした臙脂色のイラストが円形に配置された上品なデザインではあるが、同じ奈良に本店がある中川政七商店の和雑貨デザインの焼き直しという気がしなくもなく、これでこの金額?という印象は否めない。
ところが、この奈良県のロゴマーク問題について、いまツイッターなどネット上では、なぜか訴訟を起こした市民団体が“悪者”にされているのだ。
〈バカ言ってんじゃない。デザインの値段はデザイナーが決めるもので、あなたがたが決めるものではありません〉
〈ふざけんなよ公募と契約一緒にすんな。契約の報酬はデザイナーがこれまで絵の勉強に費やしてきた時間、それによって培われた技術の対価だろ〉
〈というか、この奈良の頭のおかしな「市民団体」、こういうものの料金の見積もりを枚単価いくらで出すものだと思ってる?〉
しかし、こうした批判は明らかに見当違いだ。そもそも、この問題は「水野のデザインに540万は当たり前」とか「業界のマネタイズを否定するな」とか、そういう話ではない。本質は、まさに地方自治体が公共性の高い単発イベントのロゴデザインにこんな金額の税金をつぎ込んでいいのか、という問題だ。
実際、国民文化祭のロゴは公募が一般的で、その賞金も非常に安く抑えられている(たとえば13年山梨と14年秋田は5万円、15年鹿児島が2万円)。納税者からみれば「数万円で済むのに大枚を叩くのはなんで?」「どうして公募や競争入札をしなかったの?」という疑問が生じて当然だろう。
しかも、今回は公募や競争入札によらず特定の相手を任意に選ぶ随意契約方式で行われているが、その経緯も不透明だ。随意契約は、地方自治法でタイトな条件が付されている。地方自治法第234条2項では随意契約が可能となるのは政令で定める場合に該当するときに限ると定められ、また同法施行令167条の2ではそのケースが記載されている。
今回の場合、荒井知事が議会で「熊本県が同じデザイナーに委託したくまモンは525万円でした。くまモンの経済効果は計り知れないものでございます」と述べているように、奈良県側は同法施行令167条の2における「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」と考えているようだが、そもそも、件のロゴデザインがくまモンのような経済効果を生むというのはありえないだろう。
周知の通り、くまモンはいわゆる「ゆるキャラ」であって、着ぐるみが各種PRイベントに参加するほか、関連キャラクターグッズやパッケージイラストを売りにした各種商品が多数展開されている。他方、今回のロゴは鹿や鳥のイラストが描かれているもののデザインの一部分にすぎず、キャラクターではない。さらに言えば、国民大会用に作成したロゴに多少の商品価値があろうとも、大会後もそれが持続するかは大いに疑問だ。くまモン的な商法がほとんど望めないという市民団体側の指摘は極めて妥当である。
しかも、実行委員会側が決めたという540万円との金額が、いったいどのような経緯で出てきたのかも不明瞭だ。奈良県議の川田ひろし氏は23日、ツイッターでこのように議会質問を報告している。
〈ロゴマークの決定は、デザイナーとの打合せ記録、通信記録、審査記録が一切ない。行政文書開示請求では「書類は一切ない」との答えだ。その点を聞いたが明確な答弁はしない。何故しないのか?いつまでも同じ答弁を繰り返すので、答弁の証拠の提出を求めた!やっぱりおかしい!〉
ようするに、このロゴの一件で真に議論されるべきは「デザインに大金を支払うのは妥当か」という一般論ではなく、個別に、もっぱら奈良県側が「競争入札に適しない」として随意契約を断行し、根拠のない巨額を支払ってしまったことの適法性なのである。
しかも、言っておくがこれは奈良県だけの問題ではない。こと行政が絡むデザイン案件というのは、とくに利権構造による出来レースが発生しやすいものなのだ。随意契約はその最たる例だが、たとえ公募でもあったとしても、様々な問題行為が介入し得る。
たとえば昨年の五輪エンブレム盗用問題では、電通から大会組織委員会に出向していた槙英俊氏と高崎卓馬氏が、公募開始前に佐野研二郎氏をふくむ8名のデザイナーに応募を要請していたことや、佐野氏の原案をほかの審査委員の同意を得ずに2度の修正を主導していたことが判明。また、審査委員の顔ぶれ自体、佐野氏と関係のある人物が多数いたことが問題視され、出来レース疑惑が濃厚となった。さらには、当サイトでも過去に取り上げているが、組織委員長の森喜朗元首相が佐野氏の初期デザインに対し「日の丸が下にあるのはケシカラン」などと文句を言って、修正に口を出していたともいわれている。
さらに、安倍政権による「地方創生」の影響も無視できない。この「地方創生」は地方の観光振興、移住・定住、名産品開発及び販売を促進するとともに、雇用の安定化をはかり人口流出を阻止し持続可能な社会を構築するとの名目だが、いま地方行政はこの安倍政権の看板政策に乗り遅れまいと、焦燥感を募らせている。
ゆるキャラビジネスのブームなどまさにその典型で、一度くまモンのような成功例ができあがると、ノウハウのない地方公務員たちが我も続けと参入したがる。しかし、メディアで「経済効果○○円」などと謳われる“スターゆるキャラ”の陰には、それこそおびただしい“ダメゆるキャラ”が死屍累々と積み重なっているのだ。そこでは、取らぬ狸の皮算用でゆるキャラ人気を期待し、関連キャラ商品を多数展開して税金をドブに捨てたあげく、もともとの名産品や行政サービスがおざなりになって地域産業を潰してしまうという、目も当てられない状況が実際に起きている。
またタチが悪いのは、ここに電通などの広告代理店が絡んでくることだ。プロモーションやコンサル料と称して莫大な金を要求し、自治体もこれを言い値で払ってしまう。さらに代理店は話題をさらうために時に炎上まで織り込んだ商法を展開するが、結局は一過性の話題に終わる。そして、費やされた税金や補助金は地元には還元されず、代理店の懐、つまり中央にもっていかれる。結局、生産者や地元商店街は疲弊、地域産業の根本的な活性化にはつながらないのだ。言い換えれば、「地方創生」の名の下、地方の財源が代理店に食いつぶされているとも言えるだろう。
それでも、PR技術のノウハウをもたない地方行政は、広告代理店の“仕掛け”にすがらざるをえず、予算が回収できないどころが大赤字になってしまうケースが後を絶たない。
つまるところ奈良県の随意契約問題や志布志市の「UNAKO」動画問題も、こうした“広告代理店化”した行政案件の“歪み”の表れなのではないか。自治体の不透明な税金の使い道を市民が追及するのは当たり前の行動であって、いまネット上で大勢をしめる市民団体バッシングは明らかに不当であることは重ねて指摘しておくが、もしかすると、その根っこに潜む“地方創生の闇”は、想像以上に深いのかもしれない。
(宮島みつや)
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