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日高本線の車両
JR北海道、経営危機的状況突入…「維持困難路線」発表へ、修復費用捻出できず運休続出
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16749.html
2016.09.27 文=編集部 Business Journal
今夏の北海道は、前代未聞の台風の直撃で深刻な被害を被った。台風の連続上陸によって農作物だけでなく、鉄道、道路が各地で寸断され、夏の観光シーズンが台無しになってしまった。道民にとっては、踏んだり蹴ったりだっただろう。
そんな北海道に、この30年間で最大ともいうべき危機が迫っている。JRの鉄道路線の存亡問題である。事の発端は、7月下旬に北海道旅客鉄道(JR北海道)が発表した「持続可能な交通体系のあり方について」という文書だ。発表文の冒頭で、沿線地域の自治体に対して、こう通告した。
「当社の経営状況は極めて厳しく、また当社が経営基盤を置く北海道は、全国を上回るスピードで人口の減少が進んでいることから、それぞれの地域特性に応じた持続可能な交通体系のあり方について、地域の皆様に早急にご相談を開始させていただきたいと考えております」
さらに、こんな一文もある。
「『当社単独で維持可能な線区』と『当社単独では維持することが困難な線区』について、当社の考えを秋口までにお示しします」
単独で維持することが困難な線区は「鉄道を維持するにあたっての新たな方策の策定やバスへの転換などの選択」に関する相談を開始するというのだ。これを受け、道内では「困難な線区はどこか」「自分たちが利用している路線は廃線になるのか」と疑心暗鬼が広がった。
その矢先に台風が相次いで直撃し、根室線で橋梁や路盤が流失・流出したほか、石北線、函館線などでも大きな被害が出た。9月14日現在も、札幌と釧路を結ぶ「スーパーおおぞら」、札幌と帯広を結ぶ「スーパーとかち」が全面運休となっている。JR北海道は、冬が来る前に復旧を急ぎたい考えで、自治体への「ご相談」は当初予定よりもずれ込むこととなった。
路線見直しの具体的な論議に入ろうとしている時期に、まさかの台風直撃によって鉄道施設が大きな被害を受けてしまったのだから目も当てられない。
■「単独維持が困難な路線」はどこか
たしかに、JR北海道の経営状況は厳しい。発表資料によると、1988年の海峡線開業直後の営業キロは20線区、3192.8キロメートルで運輸収入は705億円だった。現在は、営業キロは14線区、2586.7キロメートルで運輸収入は685億円。
経営全般で見ると、2009年度は営業費用(支出)が1097億円だったのに対し、営業収益は847億円しかなかった。会社発足時に導入された経営安定基金の運用益242億円を中心とする営業外損益252億円を加えて、なんとか2億円の経常利益を計上した。
ところが今後、施設の老朽化などのため修繕費が大幅に増えることもあり、「180億円規模の経常損失を計上することになる」としている。
「87年の分割民営化から30年、JR北海道はこれまで大幅に路線を縮小、社員数も1万3000人から約7100人にまで減らし、不動産の売却なども行ってきました。分割民営化前の国鉄時代には営業キロが4000キロあったのが今は2586キロですから、35%も整理したことになります。それでも、輸送客数が少ないことに加え、冬場の除雪対策を含めた路線維持、修繕コストが大幅にかかることから、経営は常に厳しい状況にあります」(道内の交通事情に詳しいジャーナリスト)
今回の台風で複数の橋梁が流失したが、道内にある橋梁は3000超。そのうち半数が経年50年以上、約1割は100年超だ。176カ所あるトンネルは、約3分の1が経年50年以上、21カ所が100年超である。経年に加え、冬場の凍結による傷みが修繕・維持コストの増加につながっている。
日高本線は15年1月に海岸線沿いの厚賀−大狩部間の土砂が高波によって削り取られたため不通となり、いまだに鵡川−様似間116キロメートルは運休のままだ。57億円かかるとされる完全復旧費用を捻出できないため、必要最小限の修繕を行ったうえで運転再開を目指すとしているが、費用の捻出をめぐる国土交通省との折衝も難航しており、先行き不透明だ。
「日高本線は鉄道輸送密度(平均通過人員=1日1キロメートル当たりの平均輸送量)が500人未満です。利用客が少ない路線の復旧に巨額の費用はかけられないというのが実情です」(同)
先送りになっている「単独維持困難路線」の公表だが、道内ではさまざまな路線名が候補としてささやかれている。その目安は、日高本線のような輸送密度500人未満の路線だ。
【輸送密度500人未満の路線】(14年度決算)
・留萌線(留萌−増毛) 39人
・札沼線(医療大学−新十津川) 81人
・石勝線(新夕張−夕張) 117人
・根室線(富良野−新得) 155人
・留萌線(深川−留萌) 177人
・日高線(苫小牧−様似) 298人
・宗谷線(名寄−稚内) 405人
・根室線(釧路−根室) 436人
・根室線(滝川−富良野) 460人
・釧網線(東釧路−網走) 466人
このうち留萌線の留萌−増毛、石勝線の新夕張−夕張間については、すでに自治体との間で廃線となることが合意されている。
■廃線後、事態は劇的に改善するのか
JR北海道は単独維持が困難な路線について、バスへの転換、あるいは列車の運行をJRが受け持ち、車両や施設の保有・維持は自治体という「上下分離方式」を自治体側に提案するとみられている。しかし財政難に悩む沿線自治体が、上下分離方式を受け入れるのは困難だ。バスへの転換となれば、冬場の大雪や道路凍結など運行上のリスクが浮上する。
分割民営化から30年。地方のローカル線、なかでも冬場の厳しい気象条件を抱えるJR北海道の経営難は、当初から予想されていた。だからこそ6822億円もの経営安定基金が設置されたのだ。しかし、合理化と路線縮小だけでは問題の抜本的な解決にはならない。
「鉄道という公共インフラだけの議論をしても意味がありません。経営や経済合理性だけを考えれば、極端な話をすれば収益が出ている札幌圏に特化してしまえばいいということになってしまいます。仮に路線が残ったとしても、沿線地域の活性化策を打ち出さなければ利用状況は好転しません。
北海道には山、海、川、酪農地帯、温泉など豊かな大自然があり、世界有数の観光資源ですが、いまだに周遊的な観光が中心です。たとえば、(1)シニア世代を中心とした長期滞在型の施設をつくり、鉄道とリンクさせる。(2)ローカル線の駅から通える範囲に学費の安い大学や酪農、農業訓練施設を設置し、大自然の中で学ぶ環境を整える。(3)さらにはIT拠点をつくる――。このような北海道ならではの施策を官民一体となって考えていくべきでしょう」(同)
現在、運休になっている日高本線は、太平洋の海岸線沿いを走り、沿線にはサラブレッド牧場が続くほか、静内、新冠、襟裳岬、門別競馬場といった魅力的なスポットも多い。新千歳空港から直行する快適な列車を運行すれば、外国人観光客を呼び込むことができるのではないだろうか。
赤字ローカル線を切り捨てるだけでは、問題の解決にはつながらない。問われているのは、北海道そのものの活性化なのである。
(文=編集部)
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