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カルビー 松本晃 代表取締役会長(写真=アーウィン・ウォン)
私が女性事業本部長に「4時に帰れ」と命令した理由/カルビー 松本晃会長
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160926-00013698-forbes-bus_all
Forbes JAPAN 9月26日(月)17時30分配信
「飛行機が片翼で飛びますか? 日本人、男性、シニア、有名大学出身。マネジメント層が偏っていて企業が成長するわけがない」。
「プロ経営者」として強いコミットメントで組織改革を推進。7期連続増収増益と躍進を続けるカルビー会長・松本晃は、いかに改革を成功させたのか。
働く女性の視点で販売の活性化に成功した「フルグラ」。狙いをシリアル市場から朝食市場へと発想を転換させ、米ケロッグの牙城だった国内シリアル市場を切り崩した。4年で年商は6倍。カルビーの業績好調の強い推進力となり、540億円といわれるシリアル市場でフルグラの売り上げが220億円を超えた。
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の日本法人社長などを歴任しカルビーのCEOに就任したのは2009年。フリーアドレスなどを取り入れたオフィスや人事評価の見える化など「働き方」改革も進める松本晃の根底にあるのは、徹底した「成果主義」だ。
─女性の管理職登用に数値目標を取り入れるクオーター制に賛成の立場を取られている。
私はとにかくデジタル人間。数字がないと体が動かない。カルビーでは今、10・20(テン・トゥエンティ)と言っている。毎年売り上げを10%伸ばせ、利益を20%伸ばせ、と。就任して7年間の数字の結果は、ほぼ伴っている。
ダイバーシティも同じ。J&Jの時は、35・25・25。「社員の35%は女性、管理職の25%は女性、エグゼクティブ/ディレクター以上の25%は女性。これを退職までに達成する」。これで終わり。実際に達成した。カルビーでは「20年までに女性管理職比率30%一番乗り」を目標に掲げている。今、22%。30%になったら、次は「50%にしたら」、と言う。
─ダイバーシティの重要性を実感するきっかけは。
J&Jの社長をしていた01年のこと。直属の上司だったビル・ディアスタインから「日本はなぜダイバーシティをしないんだ?」と聞かれた。「こんなに女性管理職が少ないのは日本とパキスタンくらいだぞ」と。
当時は私もダイバーシティについてよく分かっていなかったが「言われてみればその通りだな」と。世の中の半分は女性なのに、マネジメント層は男性ばかり。優秀な人は男女を問わず優秀。これでは片翼しか使わずに飛行しているようなもの。企業が成長できるわけがない。
─重要性は分かっていても、実現できない企業が多くある。
ポイントはある。1つは、トップがはっきりコミットする。さらに数字でコミットすること。登用は上からやる。下級の管理職から細々とやるのではなく、上級管理職を早く女性にすれば、あとは早い。
─候補者がいないという声もよく聞く。
それは嘘。探していないだけ。「来年からこのポジションは女性にしろ」。これで終わり。あと、誰が良いのかは分からないが、皆で決めろ、と。そうすれば候補が挙がってくる。その中から1番、2番、3番の人と決めて、1番いい人からオファーする。
■毎日オフィスに来る必要はない
─女性が管理職になりたがらない、という声については。
それも言い訳だ。これまで僕がオファーして断った人はー人もいない。見合った昇給を提示しているから。しかし、男性と女性ではちょっとした違いがある。女性はよりプラグマティック。男性は昇進するけれど給料が下がる、という状況でも喜んでやるが、女性はレスポンシビリティとコンペンセーションのバランスが合わなければやらない。
現状では、家事・育児に関して女性がハンディを背負っているのは事実。それに対処するのは、マネジメント側の責任だと思っている。
─事業部長となった女性に「4時に帰れ」と指示したと聞いたが。
会社にベンチマーキングを作れば、変わる。現在執行役員で、中日本事業本部のトップは福山知子という女性。スナック事業でカルビーに次ぐ2番手は湖池屋だが、中日本事業本部の売り上げは湖池屋の1.3倍はある。従業員が約900人、工場が3つ、売り上げは400億円以上。3年前、そのトップに当時小学4年生と1年生の子供がいる福山がなった。
そこで、私は彼女に言った。「私はあなたに命令する。この命令が聞けないなら、会社をやめるか、職を辞退するかどちらか。何でもいいから4時に帰りなさい」。彼女は今、その命令を忠実に守っているが、何の問題も起きていない。
ダイバーシティは、並行して働き方改革を進めなければならない。働き方改革で最初に言ったのは「とにかく早く帰れ」。福山には「4時に帰れ」。しばらくしてから「2時に帰れ」。さすがに2時に帰る社員はいないが、「終わったら帰れ」。今は「会社なんか来るな」と言っている。昔ならともかく、今はツールが揃っているので仕事は毎日オフィスに来る必要はない。
─なぜ他の企業ができていない改革が成功していると思うか。
「コミットメント・アンド・アカウンタビリティ」。ビジネスの世界は政治と違う。コミットしたら必ず結果を出さなければならない。経営哲学でも何でもなく、基本的なこと。稼がないと設備投資はできない、新商品の開発はできない、社員の給料も増やせない、税金も払えないし配当も払えない。
成果を出すためのイニシアチブを一つずつやっているだけ。成果につながらないことは何もやらない。ダイバーシティもその一つだ。
まつもと・あきら◎1970年京都大学農学部卒業、72年同大学院修士課程修了後、伊藤忠商事入社。93年ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル入社、99年ジョンソン・エンド・ジョンソン社長に就任。2009年6月より現職。
カルビー◎2016年4〜6月期の連結決算は純利益が前年同期比10%増の38億円で過去最高。売上高は617億円(3%増)、営業利益は71億円(17%増)。09年に就任した松本晃会長の強いリーダーシップの下、女性執行役員数も26.7%と、ダイバーシティ先進企業のトップをひた走る。
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Forbes JAPAN 編集部
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