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筆者は日銀の新たな金融政策で「1ドル100円割れの可能性は低くなった」と主張する。なぜか(写真:Veresovich / PIXTA)
「日銀の金融緩和は限界」は全くの誤解である アベノミクス擁護派は日銀総括をどう見たか
http://toyokeizai.net/articles/-/137537
2016年09月26日 村上 尚己 :アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト 東洋経済
9月20〜21日の日銀金融政策決定会合では、「総括的な検証」をもとに金融政策のフレームワーク変更が発表された。すなわち1)「イールドカーブ・コントロール」として、短期金利に加えて10年国債金利水準が操作対象に加わり、2)オーバーシュート型コミットメントとして金融緩和を継続する、ことが主たる内容となる。
これまでの3次元の金融緩和の枠組みが、より複雑になったこともあり、市場やメディアでは大きく誤解されている部分があるように思われる(実は、筆者も発表直後は一部誤解し解釈していた)。
■日銀は「長期金利の行き過ぎた低下」の抑制に動いた
例えば、一部メディアでは「これまでの量的金融緩和の限界が近づいたので、金利政策を軸に変更した」などと解説されているが、この解釈は正確ではないと筆者はみている。
まず、新たに導入したイールドカーブ・コントロールは、現行のマイナス金利政策を修正したと位置づけられる。2016年1月のマイナス金利導入で、10年満期の長期金利20年満期以上の超長期金利が大きく低下し、いわゆるイールドカーブのフラットニングが進んだ。
長期ゾーンの金利低下は銀行貸出金利の低下を促すプラスの側面があるが、一方で金融機関などの経営基盤に悪影響を及ぼすなどの弊害もある。今後弊害が大きくなることへの対処として、長期金利の行き過ぎた低下を抑制するために、10年国債金利をゼロ程度に操作することがイールドカーブ・コントロール採用の主たる目的である。
そして、イールドカーブ・コントロールと量的質的緩和の継続条件として、オーバーシュート型コミットメントが新たに採用された。
従来までのいわゆるマネタリーベース80兆円規模での拡大は政策目標ではなくなる代わりに、金融緩和を継続する条件として、日銀は「コアCPI(消費者物価指数)で2%のインフレ率が実績ベースで安定的に推移する」という、より高いハードルを掲げている。
従来は2%インフレ目標達成の判断が曖昧だったが、2%インフレを一定期間上振れさせることを明示することで、緩和解除のハードルを高めたということである。現行の金融政策の目的は2%の物価目標安定にあるが、その実現に時間がかかっていることを踏まえ、より強く2%インフレ実現を早期に実現するということである。このコミットメント採用は、金融緩和強化と評価できる。
■日銀は「より高い目標」を設定した
一方、市場ではマネタリーベースが操作目標ではなくなったため、「量の限界」が訪れつつあり金利政策へのシフトを余儀なくされた、という表層的な理解が多い。
声明文において「あと1年強でマネタリーベースの対名目GDP比率は100%(500兆円)を超える見込みである」と言及されたこともあり、一部ではこれが日銀のバランスシート規模つまり「量の限界」との解釈がなされた。そうした憶測から、今回の政策変更について、近い将来量の限界が訪れ、テーパリング(資産購入の削減=緩和縮小)が始まるとの見方が散見される。
確かに、声明文の文言が、誤解を招きかねない点があったかもしれない。だが、上記の500兆円のマネタリーベースは、現行の1年あたり80兆円規模の資産購入が続く上での機械的な試算に過ぎない。
10年国債金利をゼロに誘導するイールドカーブ・コントロールを実践するには、これまでのどおり日本銀行が国債購入を続ける必要があることには変わりない。実際に、年間80兆円規模での国債購入が続くことは明記されている。より重要な点は、「2%インフレ率をオーバーシュートする」という高いハードルを自ら新たに課して、強力な金融緩和を続けるということである。
金融緩和がしっかり機能していた2014年初頭までのように、2%に向かって多少インフレ率が高まっても、10年国債金利をゼロ近傍に安定させ続けるために、日銀はこれまで以上に国債購入を拡大させる可能性が十分ある。これを正確に理解すれば、今回の日銀の政策フレームワーク変更が、量的金融緩和の手じまいが前倒しになることを意味しないことは明らかである。
筆者は全く同意していないが、債券市場などでは「2%のインフレ実現は不可能」との見方が根強い。ただ、もしそれが正しいならば日銀による現行ペースの大規模国債購入は永遠に続くということだから、量の限界はまだ遠いということになる。つまり、「量の限界」が近いのでテーパリングが近いとの認識は、「早期に2%インフレが実現する」という想定が前提になるはずだ。
一方筆者は、将来の2%インフレの実現を予想しているが、2%インフレにはまだ距離があるため、量的金融緩和縮小は当分予想されないとみている。
■「ドル円100円割れ」の可能性は一段と小さくなった
為替市場では、21日の金融政策決定会合後にドル円は102円台半ばまで円安に動いた後、海外時間にかけて100円前後まで円高に動いた。再び円高に動いた要因は、日銀の政策フレームワーク変更が、量的金融緩和拡大の変更という解釈が広まったことが一因とみられる。
日銀の政策変更が分かりにくかったという意味で、アナウンスメント効果は働かなかった。また、日銀の政策への失望で100円割れの円高になるという一部の為替アナリストの事前予想も影響していたかもしれない(筆者は根拠がない見方と認識しているが)。
実際には、今回の政策変更が金融緩和強化であり、2%インフレの早期実現を通じて、過去1年低下していたインフレ期待の転換につながると筆者は考える。FRB(米連邦準備理事会)による12月利上げの可能性が一段と高まっていることもあり、ドル円の100円割れの可能性は一段と小さくなったとみている。「行き過ぎた円高は早晩終焉する」、とのこれまでの筆者の予想は変わらない。
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