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みずほ銀行の店舗
みずほ銀とソフトバンク、プライド捨て「サラ金」参入が失笑の的…若者搾取との批判も
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16729.html
2016.09.24 文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト Business Journal
「一人ひとりの夢と目標をサポート」――。
9月14日に開かれた、ある記者会見でスライドに打ち出された一文である。一見、崇高な理念に映るが、なんのことはない。みずほ銀行とソフトバンクが来年始めるスマートフォンを使った個人向け融資の新事業である。8月に日本経済新聞が大枠を報じており、両社が保有するデータを分析、人工知能(AI)を使うことで、銀行のこれまでの与信審査では貸出が難しかった層にまで融資できるという触れ込みだった。
会見当日明らかになったのは、ソフトバンクが出資する米ベンチャー企業の技術を活用し、申込者の現時点ではなく、将来のキャッシュフローを創出する力をAIにより測定するという点。つまり将来の可能性をAIがはじき出すことで、貸出の範囲が広がるという理屈だ。
技術的な可能性や現実的にビジネスモデルが成立するかより、会見場で参加者の注意を引いたのが冒頭のスライド。留学資金や結婚資金などが足りない未来ある若者を支援するというビジョンらしいが、あまりの白々しさに会見場から失笑が漏れた。
「会見に出席したソフトバンクグループの孫正義社長は『従来の消費者ローンとは違う、異次元のまさにフィンテック』とドヤ顔でした。その発言が、自分たちの新事業が消費者金融そのものであることをさらけ出している。会見場でもベテラン記者が『これで借りて留学するやつはいないよな』とボヤいていました」(金融担当記者)
ビッグデータ、AIという話題の言葉がちりばめられているが、要はスマホを使った次世代型の「サラ金」。スマホを使って申し込むことができ、最長でも30分程度で入金されるというモデルが「夢を追う若者」ではなく、「金欠で自転車操業の若者」を利用者として想定していることをうかがわせる。
スマートフォンを使ってオンライン専業で貸し出すことで、店舗や人件費を競合の消費者金融と比べて圧縮。金利を優遇することで、借りやすい仕組みを打ち出すのだろうが、「弱者搾取ビジネスに変わりはない」との見方もある。
■ジリ貧続く通常融資
「サラ金事業」は今やメガバンクの貴重な収益源になっている。テレビCMでもメガバンクグループの名前が頻繁に流れるなか、みずほ銀行とソフトバンクの新事業が業界内から冷ややかな視線を浴びるのには、別の理由がある。メガバンク中堅行員はこう語る。
「みずほは日本興業銀行の流れをくむ。グループ持株会社のみずほフィナンシャルグループ社長の佐藤康博氏自身も興銀出身のため、『うちは日本の産業を支える金融機関。消費者金融には絶対に手を出さない』と繰り返し強調してきた。銀行業界全体が通常の融資の利ざやがジリ貧状態とはいえ、これまでの経緯から『どの顔して参入するんだよ』というのが業界関係者の本音。『夢をサポート』という大層な理由をつけないと、恥ずかしくて参入できないでしょう」
海外では「オンライン融資の雄」とされた米レンディングクラブが不祥事で失速。当局はオンライン融資業への規制強化を模索する。フィンテックを「産業革命級の衝撃」と語り、フィンテック熱は3メガのなかでも鼻息が荒いみずほ。サラ金は貸出より回収が肝とされるが、みずほにそのノウハウはあるのか。プライドをかなぐり捨てての「禁じ手のサラ金参入」が頓挫したときの代償は大きい。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)
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